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■青木拓磨プロデュースのミニバイク耐久レース、それが「Let’sレン耐!」
●プランビーエナジー杯 Let’sレン耐 秋ヶ瀬24時間レース(2021年7月17日~18日)
年間38戦という驚異の開催数を誇るレン耐。正式名称は「Let’sレン耐!」。「レン」はレンタルのレン、「耐」は耐久レースの耐。
プロデューサーは世界的なロードレースライダーで、1998年、不慮の事故から下半身不随となってしまいましたが、車いすレーサーとしてモータースポーツ界に復帰した青木拓磨さんです。
レン耐は、参戦車両となるバイクはもちろん、ツナギやブーツ、グローブのレンタルもあり、レースという敷居の高い世界へ極めて気軽に参加できるという、ミニバイクの超入門耐久レースです。
なんといっても、週末に仲間さえ集まれば、レース初心者やレース未経験者でも、装備一式すべてを持っていなくてもレースを一緒になって楽しめるというのは、このレン耐の魅力です。もちろん現在はコロナ禍ということで、無観客での開催や手指消毒やマスクの装着が義務付けられますが、屋外で、ヘルパーを含め仲間内でワイワイ楽しむことができるのは、コロナ疲れの今こそ必要なのかもしれません。
●24時間全参加車両の総ラップ数は、なんと1万7451周!
そんなレン耐が、今年2021年、ついにとんでもない企画を立ち上げました。それが「プランビーエナジー杯 Let’sレン耐 Akigase24hours」です。タイトルからもわかると思いますが、レン耐史上過去最長となる24時間レースが開催されました。
これまでこのレン耐では、12時間耐久というレースはありましたが、今回ついに禁断の…!という感じです。
なぜ24時間耐久なのか? というと、今年8月にレン耐を主催する青木拓磨選手がル・マン24時間レースに出場することを記念しての開催なのです。最初で最後の24時間耐久…ということなっていますが、もちろん、参加者の希望があれば定期開催の可能性もないわけではなさそうです…!
レン耐は国内各所のミニサーキットで開催されていますが、今回の24時間レン耐の開催場所は、埼玉県さいたま市にある「サーキット秋ヶ瀬」です。全長600mほどのミニサーキットですが、ちゃんとナイター設備があります。
今回使用する車両はホンダ・グロム125です。このグロムでのラップタイムは36~40秒ほどですので、これで24時間グルグルと回り続ける、と考えると、まさに溶けてしまうのではないかという状況です。
●約100名の参加者、転倒1回5000円の罰金も!
今回の参戦チームは10チームの10台となりました。しかし、多くのチームが10名ほどのライダーを登録していますので、10台の参戦と言えど、総出場ライダー数は100名近い規模になります。24時間レースは2021年7月17日(土)の午前10時3分にスタートしました。チェッカーが出されるのは翌18日の午前10時3分。
この間、レースは12時間ずつのコース逆走と順走で走ることとなります。
梅雨明け直後の週末ということもあり、両日ともに好天に恵まれ、日が昇ると気温は一気に上昇していきます。秋ヶ瀬周辺も34度まで気温が上昇し、各ライダーはこの暑さとの闘いとなりました。
転倒も頻発しますが、アベレージスピードの低いミニサーキットだけに、レースが止まるような大きな事故もなく、淡々とレースは進行していきます。
上位陣は100周を1時間強で周回していきます。ピットストップは最低停止時間が決められており、使用可能燃料量も決められています(前半14L、後半13L。前半と後半でマシンを入れ替えるのでガソリンの繰り越しはできません)。
さらには、レン耐では「ダブルぺリア方式ハンデ」という周回数ハンデがレース途中で与えられています。そのため、順位が大きく変動し、ただ速いライダーをそろえただけでは勝てないレースです。
今回は、通常のぺリアではなく「ジャンプアップゲーム~ひらひらフライングゲット選手権」というゲームでハンデが与えられることとなりました。そのタイトルを見れば何となくわかりますが、ばらまかれた紙片を空中でキャッチ(割りばしで)できれば、周回数や燃料のボーナスがもらえるというシステムです。
12時間を経過した時点でのリザルトを基に、上位中位下位グループに分け、それぞれのグループでゲームを開催し、これをうまくキャッチしたチームはグループ分けの中でもより多くのボーナスを受け取れたようです。
●サーキット秋ヶ瀬はナイター設備もバッチリ!
夕方7時前にナイター設備に灯がともり、それでもレースは一度も止まることなく夜の10時を迎えました。ここで赤旗が出され、秋ヶ瀬のコースからマシン音が途絶え、前半パートが終了しました。
ここまでの全車両による総周回数は9038周にもなります。トップを行くのは983周を走行した#38「プランビー」です。
前半を走行した各車両はそのまま車両保管となります。各チームは後半用車両に乗り換えて、今度は順走でコースを周回することとなります。ゼッケン順にコースインし、まずはフォーメーションラップを行い、隊列が整ったところでレースは再開となりました。
気温も下がったこともあってか、ナイトセッションは、大きなクラッシュもなく淡々と進行。しかし午前4時前にはすでに空が明るくなってきて、あっという間にコース上に陽が射し込み、またあの暑さが戻ってきました。
残り時間が少なくなってくると、ガス欠を考慮しペースダウンするチーム、そしてラストスパートをかけていくチーム、とそれぞれの作戦となってきます。中にはゴールまで2時間も残してペナルティ付きの追加給油を行うチームも出て来ます。
追加給油のペナルティは残りのレース時間の分数分減算されるというものです。他にも燃料が足りないというチームも出て来ましたが、ペナルティを極力抑えるために途中で走行を一時中断し、ライダーを休ませるチームもありました。
レース終盤になって上位に挙がってきたのは、やはりジャンプアップゲームで給油ボーナスを受けたチームでした。
実際にチェッカーを真っ先に受けたのは、レン耐常連チームのひとつである#4「ゆびとまれCチーム(1899周)」でした。ただ、このチームは救済措置の給油を受けているため、実質的にトップとなったのは、2Lの給油ボーナスを受けた#7「三木鉄工withタケウチENG(1851周)」でした。レン耐初の24時間レースは、全10チーム総周回数は1万7451周を数えて終了となりました。
●なぜ過酷な24時間レースに参戦するの?
#1「ABPE RacingTeam」
「スケジュールをみて、中に『24』という表記を目にして、学生時代の仲間に『これもう出るしかねぇだろ、人生で24時間耐久レースに出るなんてこれしかない!』ということで参戦することになりました。ただ、就職してもともとの仲間が散り散りになってて、とりあえず10人いたら参戦できるかな、ってことでそれぞれの職場とか近くの人を集めて参戦しました。ただレース経験者が3人しかいませんでしたけど(笑)」
#3「このゆびとまれB」
「この24時間レース、一睡もできなかったです。スタッフの方々もツライって言ってましたが、私も12時間は良いけど24時間はもういいかなって思ってます(笑)。私たちは3チームで、それぞれ戦略を展開しました。どれが正しかったかはわからないですけど、それぞれが24時間かけてこのレースをしっかり楽しめたんじゃないかな? と思っています」
#4「このゆびとまれC」
「我々はそれぞれレン耐に参戦している面々だったんですが、この24時間については、単独ではチームを組みにくいって思ってて、どうする?って情報交換したら『じゃ集まりましょう』ってことで参戦を募ったら30名以上集まったので3チームで参戦となりました。レースは2時間とか3時間の中でもドラマが生まれているはずなんですけどね、いろんなことが起こっても修復ができたり、時間が長いというメリットもあって、その経過があまりにも当たり前に過ぎて行ってしまって、24時間はあっという間でした」
#7「三木鉄工withタケウチENG」
「普段は山口のナチュラサーキットでレン耐に参戦してるチームですが、24時間レースだったら遠征しようか!って話になってやってきました。レン耐って勝てないんですよね。いやらしいルールがあって(笑)。それでも勝とうっていろいろ考えて作戦を練る、これが面白いんです。この楽しいレースがいつもよりも何倍も長い時間になって、もっと多くの仲間で出たら、もっと楽しいんじゃないか? ってことで参戦しました」
(青山 義明)