スズキ X-90は2シーターなのに3ボックス、しかもSUV?【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判「個性車編」第10回】

■リアルチョロQ!? 超個性派、スズキのX-90ってどんなクルマ?

●Kサイズ・2シーター・SUVでお目立ち度一番!

80~90年代の日本車のうち、チョット変わった個性派のデザインを振り返る本シリーズ。

第10回は、2シーター+3ボックスの斬新ボディをSUVに仕立てた、唯一無二のコンパクトカー、スズキ X-90に太鼓判です。

x90・メイン
カプチーノをSUVに仕立てたような佇まいが特徴

ホンダビート、オートザムAZ-1と並び、軽スポーツとして好評を得たスズキのカプチーノ。その勢いに乗り、2シーターのクロスオーバーSUVという、より強い個性をまとい、1995年に登場したのがX-90です。

●曲面ボディは本格SUVがベース

初代エスクードの3ドアをベースにしたボディは、2シーターでありながら独立したトランクを持つという、超個性派の3ボックススタイル。ちなみに、ラダーフレーム構造のシャシーは本格的な4WD性能を保証しました。

カプチーノをSUVに仕立てたかのように、全体のフォルムは曲面構成。それによって左右を絞ったフロントは、小振りな楕円ライトとミニマムなグリルで、あたかも軽のようなイメージですが、ポジショニングランプを内蔵した大型バンパーがそれを補います。

x90・フロント
ミニマムな表現のフロントフェイス

まるでオープンカーのような縁取りのAピラーは、特徴的なTバールーフによるもの。さらに、2シーターの小さなキャビンは、後部をギュッと絞ることでスポーティさを演出します。

サイド面は、前後のブリスターフェンダーがSUVらしさを醸し出しています。小さく見えても、ここは全幅1695mmの余裕が効いていると言えるでしょう。ただし、わずか3710mmの全長がチョロQ的なアンバランス感も生んでいます。

リアビューでは、横長のランプと大型バンパーの組み合わせが極めて乗用車的で、これもまた不思議な存在感の理由に。独立したトランクはさらに斬新ですが、リアスポイラーが軽快さを出していて、妙な「お荷物感」を払拭しています。

●既成概念にとらわれない発想を

x90・リア
絞られたキャビンとブリスターフェンダーの組み合わせ

インテリアは、T字形のごく真っ当なインパネが意外なほど「普通」な感じですが、マリンカラーのシートとドア内張りが車内を明るくしています。そのシートは何とバケットタイプで、このクルマのスポーティな性格を思い出させます。

X-90は1993年の東京モーターショーに同名で出品され、反響の大きさから市販化が決まったといいます。

その斬新さから、国内では1400台弱の販売に止まりましたが、輸出された北米などでは改造車ベースとしてヒットしたようです。

なぜ2シーター? なぜ3ボックス?など、決して謎は少なくないのですが、こうした自由な発想が、アルトやワゴンRといった既成概念にとらわれない傑作を生み出すスズキの持ち味と言えるでしょう。

■主要諸元 X-90(5MT)
形式 E-LB11S
全長3710mm×全幅1695mm×全高1550mm
ホイールベース 2200mm
車両重量 1080kg
エンジン 1590cc 直列4気筒SOHC16バルブ
出力 100ps/6000rpm 14.0kg-m/4500rpm

(すぎもと たかよし)

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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