■標準のエアサスもオプションのコイルサスもどちらも優秀
コンパクトな5ドアハッチバックからプレミアムセダン、ワゴン、スポーツバックと呼ばれるスタイリッシュな5ドアクーペハッチバック、そしてSUVやスポーツカーまで、さまざまなボディタイプを用意するアウディですが、驚くべきはそのさまざまなボディにとんでもないパワフルなパワーユニットを用意していることです。
今回試乗したのは、アウディのなかでも特にパワフルなRSシリーズの2台。ワゴンボディを持つRS6アバントと5ドアクーペハッチバックのRS7スポーツバッグの2台です。
両モデルともにMLB-evoと呼ばれるスポーツモデル用にハイチューンされたプラットフォームが採用されます。
MLB-evoはフォルクスワーゲングループ内のスポーツモデルで幅広く使われていて、ベントレー・ベンテイガやランボルギーニ・ウルス、ポルシェ・カイエンなどもMLB-evoを用いたモデルです。
両モデルとも搭載されるパワーユニットは4リットルV8のツインターボで同一。スペックは600ps/800Nmと、とてつもないものです。そしてこの4リットルV8は単純なエンジン駆動のシステムではなく、48Vのマイルドハイブリッドシステムが組み合わされているのです。
両車ともに2925mmのホイールベースと1960mmの全幅は同一ですが、全長/全高はRS6アバントが4995mm/1485mmなのに対し、RS7スポーツバッグは5010mm/1415mmとRS7スポーツバッグが若干長く、低いスタイリングとなります。
このわずかな車高の差とボディ形状の違いは、それなりに使い勝手に影響します。試乗会の開催されたホテルと海沿いの国道をつなぐ道路が狭かったこともあり、RS7スポーツバッグのほうがドライビングに気をつかいます。とはいえ、国道に出てしまえば両車の扱いには大きな差はなく、使い勝手の差は狭い道に限定されます。
600馬力のパワーユニットはとてつもない加速を生み出します。カタログデータによれば0→100km/hの加速はわずか3.6秒。停止状態からアクセルを踏み込んだときの加速も、クワトロシステムにより適正に4輪に駆動力が配分されるので、安定感の高さはバツグンです。
8速のティップトロニックも小気味よくシフトアップしていき、加速フィーリングも気持ちのいいものとなります。
大パワーを誇るパワートレインですが、燃費向上についても考慮されています。
条件が揃うと8気筒中の4気筒が停止する気筒休止システムも備えています。おそらく今回の試乗でも停止したタイミングはあるはずですが、ドライバーがそれを感じることはありませんでした。
また、55〜160km/hの間ではエンジンを完全に停止させ惰性で走るコースティングモードに入ることもありますし、アイドリングストップは22km/h以下で作動します。
そうしてエンジンが停止した際からのエンジン再始動はセルモーターではなく、ベルト駆動式オルタネータースターターが担うため、再始動時のノイズも上手に抑えられています。
マイルドハイブリッドシステムは60Nmのトルクで5秒間のアシストを行いますが、2トンオーバーの車重に対する60Nmのトルクは実感するのが難しく、アシストを感じることはありませんでした。マイルドハイブリッドシステムの役割は、減速時のエネルギー回収とそのエネルギーを使ってのエンジン再始動がメインと考えたほうがいいようです。
RS7スポーツバッグはオプションのRSスポーツサスペンションプラスが装着されていました。
このシステムはコイルサスをベースに対角線上のショックアブソーバーを連結することによって、ロール時のショックアブソーバーの伸びと縮みを抑制し路面追従性をアップするダイナミックライドコントロール(DRC)が組み合わされます。RS7スポーツバッグのハンドリングはシャープでスポーティ、ワインディングでクルマを走らせること、そのものを楽しめるものです。
対してRS6アバントは標準となるエアサス仕様です。エアサスだからといって、決してヤワヤワのサスペンションというわけではなく、2トンオーバーの車体をしっかりと、そしてゆったりと支えてくれ、長距離を一気に走りきってしまいたいという欲求にかられます。
ワゴンボディを持つRS6アバントは定員乗車時で565リットルのラゲッジルーム、RS7スポーツバッグは535リットルと30リットルの差があります。
RS7スポーツバッグはスタイリッシュなスタイルを大切にしたモデルですので、この差は当たり前。どちらもリヤハッチを持つモデルでリヤシートを分割可倒できるタイプなのでユーティリティ性は優れていますが、アウトドアレジャーを楽しむためにたくさんのアイテムを搭載したいなどであれば、RS6アバントを選ぶべきでしょう。
(文・写真/諸星 陽一)