ブレーキパッドの素材とは?金属粉や繊維材を樹脂で固めた樹脂系と焼結メタル系の2種【バイク用語辞典:材料編

■高性能バイクには、耐熱温度が高くブレーキ性能に優れたメタル系を使用

●ディスクローターとの摩擦によってパッド表面は徐々に摩耗

ブレーキパッドは、回転するディスクローターを両側から挟み込んで制動力を発揮するブレーキ部品です。ディスクローターとの間には、大きな摩擦力が発生して高温になるので、パッドの素材には耐摩耗性と耐熱性が求められます。

消耗部品であるブレーキパッドの素材について、解説していきます。

●ブレーキパッドの役割

ディスクブレーキの作動原理
ディスクブレーキの作動原理
ブレーキパッド
ブレーキパッド

ブレーキパッドは、制動時に確実に減速/停止する安全の役割だけでなく、乗り心地も左右する重要なブレーキ部品です。ブレーキパッドは、ブレーキ時に回転するディスクローターを両側から挟み込んで摩擦力で制動力を発揮します。すなわち、摩擦力を利用して回転エネルギーを熱エネルギーに変換する装置です。

そのため、パッドの素材には耐熱性と耐摩耗性が求められます。一方で、パッドの耐摩耗性と相反しますが、相手側のディスローターを摩耗させる攻撃性を抑えることも重要です。

ブレーキパッドは、ベースプレートに摩擦材を貼り付けた構造で、摩擦材には金属粉や繊維材を樹脂で固めたレジン(樹脂)系と金属粉を焼結したメタル系の2種があります。一般的には比較的安価なレジン系パッドが使われますが、高性能車にはメタル(金属)系パッドが使われます。

代表的なパッドであるレジン系のセミメタルパッドとオーガニックパッド、メタル系のシンタードパッドの3種の特徴について、以下に説明します。

●セミメタルパッド

安価で安定した性能を持つ、現在主流のパッドです。

金属粉を樹脂(結合剤)で固めた素材で構成され、ブレーキの効きが素直で制動力の良さとディスクローターへの攻撃性を抑えられる点が強みです。雨天時に性能が低下するという弱点がありますが、総合的にみてバランスの取れたパッドとして多用されます。

●オーガニックパッド

繊維系の素材を樹脂で固めたパッドで、ディスクローターへの攻撃性が少ないのが特徴のパッドです。

滑らかなタッチでコントロール性が高いことは美点ですが、絶対的な制動力では他のパッドに劣ります。ただし、他のパッドにはないオーガニックパッド独特のブレーキフィーリングを好むライダーも多いようです。

●シンタード(焼結)パッド

3種の中では最も高いブレーキ性能を持つパッドです。

金属系の摩擦材を高温で焼き固めて焼結加工したものです。摩擦係数が高く、強力な制動力を発揮し、また雨天でも性能が低下しにくいのが特徴です。ディスクローターへの攻撃性が高い傾向にありますが、強いブレーキ性能が発揮できるのでスポーツモデルに多用されます。ただし、普通の街乗りなどで使うバイクには、コストが高くオーバークオリティかもしれません。


ブレーキパッドは走行距離が延びれば延びるほど摩耗する部品なので、交換の頻度が高い部品です。また、ブレーキが期待通りに効かないと事故に直結するので「重要保安部品」に指定されています。ブレーキの効きが悪いと思ったら、まずパッドの摩耗をチェックしてください。多くの場合は解決するはずです。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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