スーパーチャージャーをモーター駆動って何だ?【ボルボXC60 B6 Rデザイン試乗】

■トッピング全部載せ!みたいなエンジンながらバランスは超いい

全世界のボルボの中でもっとも売れているモデルがXC60です。

日本ではさらにコンパクトなXC40のほうが人気ですが、今や世界のメインマーケットとなった中国、そしてアメリカも広大な土地に広々とした道を持つ国ですから、少し大きめなボディを持つXC60が人気があるのもうなずけます。

ボルボXC60-B6-Rデザイン フロントエクステリア
ボルボXC60-B6-Rデザインのフロントスタイル

今回試乗したXC60 B6 Rデザインは、全長が4690mm、全幅が1915mm、全高が1660mmというボディサイズを持ちます。全長は国産の5ナンバーミニバン程度ですが、全幅1915mmはメルセデス・ベンツ Sクラスのレベルなので、都内の住宅地で乗るとそれなりに大きさを感じてしまいます。

ただし目線が高く、センサー類の助けもあることも幸いして、ある程度の慎重さを持てば持て余すことはありません。筆者の居住地は道幅も狭く、一方通行も多い地域ですが、車両を拝借中の数日間を無事に送ることができました。

ボルボXC60-B6-Rデザインリヤスタイル
ボルボXC60-B6-Rデザインのリヤスタイル
ボルボXC60-B6-Rデザイン真横スタイル
Dピラーは比較的寝かされた配置で、スポーティなスタイルを実現

XC60 B6 Rデザインの最大の特徴と言えるのがそのパワーユニットです。ボルボは2030年までに完全電動化を宣言していますが、XC60 B6 Rデザインのパワーユニットはその過渡期にあるものといっていいでしょう。

基本のエンジンは2リットル4気筒で、ここにターボチャージャーが取り付けられます。ターボはある程度エンジン回転を上げないと過給ができないため、低回転域ではモーターで駆動するスーパーチャージャーも組み合わされています。さらに48Vのマイルドハイブリッドシステムも組み合わされます。

エンジンはアイドリングストップだけでなく、気筒休止まで装備。載せられるトッピングはすべて載せたという雰囲気です。

ボルボXC60-B6-Rデザインエンジンルーム
48Vシステムなので、感電の危険性がない、ゆえにオレンジ色の配線は見当たらない
ボルボXC60-B6-Rデザイン インパネ
インパネのデザインはコンサバ。液晶モニターは縦長配置される

ラーメンやカレーにトッピングを載せすぎると、もはや何がなんだかわからなくなったりすることもありますが、XC60 B6 Rデザインのパワーユニットは2リットル4気筒エンジンの素性のよさを上手に活かしています。

発進時はISGMと呼ばれるモータージェネレーターが40Nm分のトルクが上乗せされます。その先は電動モーターがスーパーチャージャーを駆動し、過給を行います。従来は電動モーターではなく、ベルト駆動のスーパーチャージャーを使っていましたが、ベルト駆動の場合はエンジンの力をスーパーチャージャーに振り分けながらの過給です。これを電池に蓄えた電気で行うことで、より効率をアップしているというわけです。

しかもその電池が12Vではなく、マイルドハイブリッドシステムに使っている48Vを利用できるのですから空気をたっぷりとエンジンに供給できるというわけです。電動スーパーチャージャーが担当するのは3000回転までで、その先はターボによる過給に切り替わります。

ボルボXC60-B6-Rデザインフロントシート
ボルボXC60-B6-Rデザインのフロントシート
ボルボXC60-B6-Rデザインリヤスタイル
ボルボXC60-B6-Rデザインのリヤスタイル

このパワーユニットに組み合わされるのは8速のAT。高速道路の料金所からじわっとアクセルを踏みつつも一気に加速すると、一連のシステムが非常によくできたものであることがわかります。ISGMにアシストされる停止状態からの加速はしっかりと力強く、電動スーパーチャージャー、ターボと繋がっていくのですが、その切り替えにはドライバーが気付くことはありません。完ぺきなるシームレスさをもって、巡航速度に達します。

エンジンのスペックは300馬力(220kW)/420Nmと強力ですが、この強力なエンジンを上手にスムーズに働かせているところが魅力的なのです。

ボルボXC60-B6-Rデザイン ラゲッジルーム定員
定員乗車状態のラゲッジルーム
ボルボXC60-B6-Rデザイン ラゲッジルーム 片側フォールディング
リヤのシートバックは6対4分割可倒。アームレストスルーも可能

また、XC60 B6 Rデザインの魅力はパワートレインだけではありません。走り方向にベクトルを向けているRデザインは、255/40R20サイズのピレリPゼロを履き、シャープでレスポンスのいいハンドリングを示します。それでありながら、乗り心地もしっかりと確保しています。

車両重量は約2トンで、その車重を上手に生かしたゆったりと落ちついた乗り心地が基本にあり、重量をものともしないハンドリングを与えている……そんな味付けを感じるのがXC60 B6 Rデザインです。

ボルボXC60-B6-Rデザイン 正面スタイリング
真正面からのビューは重心が低く感じられる。ヘッドライトレンズにはアイコンであるトールハンマーのモチーフが採用される
ボルボXC60-B6-Rデザイン 真後ろスタイリング
真後ろから見ると重心が下にあり、上にいくに従って少しずつ絞り込まれていることがわかる

(文・写真:諸星 陽一)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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