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■市場に投入するためには、排ガス規制値への適合は必須条件
●シャシーダイナモ上でのWMTCモード試験によって排ガス値を評価
ガソリンを燃焼させて動力を得るガソリンエンジンでは、有害なCO、HC、NOxが排気管から排出されます。有害3成分は、環境や人体に悪影響を与えるため、排ガス規制によってそれぞれ排出重量が規制されています。
最新の排ガス規制のためのWMTCモード試験方法と規制値について、解説していきます。
●排出ガス成分の有害性
自動車およびバイク用燃料のガソリンは、原油から蒸留されたさまざまな炭化水素の混合物です。ガソリンの混合気をエンジンで完全燃焼すると、理想的にはCO2とH2Oになりますが、実際には完全燃焼するわけでなく不完全な燃焼によって、CO(一酸化炭素)やHC(炭化水素)が発生します。また吸入空気中の窒素が酸素と結合して、燃焼温度が高くなればNOx(窒素酸化物)が増大します。
これら3成分は、次のような有害性があります。
・CO
血液の酸素運搬能力が下がり、めまいや頭痛を起こし、最悪の場合は死に至ります。
・HC
未燃の燃料で、光化学スモッグの原因となる光化学オキシダントを生成。人体に有害で目を痛め、最悪の場合呼吸障害を引き起こします。
・NOx
NO2は、人体に有害でオゾン層を破壊。温室効果だけでなく、光化学スモッグや酸性雨の原因となります。
●モード排ガス試験とは
クルマの燃費・排出ガス性能を評価するために、シャシーダイナモメーターのローラー上で実走行を模擬した運転パターン(モード運転)で走行し、測定されるのがモード排ガスです。
HC、CO、NOxそれぞれに規制値が設定され、市場に投入されるすべてのクルマは規制値に適合しなければいけません。
規制値は、モード運転中に排出される総質量(g/km)で規定されています。現時点では排出ガス濃度をリアルタイムで測定できても、排出ガス質量は測定できません。そのため、分析計で測定した各成分の濃度とともに、排気管から排出される排出ガスの総質量を測定して各成分の排出量を算出します。
●WMTCモード試験による排ガス規制
現在適用されている排ガス規制は、2012年10月から施行されているWMTC(World-wide-harmonized Motorcycle Test Cycle)モード試験法に基づいています。この走行モードは、国連欧州委員会の傘下にあるWP29(自動車基準調和フォーラム)で制定された国際的に統一された試験法です。世界中の実走行を反映するように、欧州や日本、米国、中国などの走行実態を考慮して作成されています。
WMTCモードでは、走行モードがエンジン排気量と最高速度によって車両クラスが分類され、車両クラスごとに試験サイクルのパートの組み合わせが設定されています。
・クラス1(主に原付1種、2種):排気量50cc超150cc未満および最高速度50km/h未満、または排気量150cc未満および最高速度50km/h以上100km/h未満
・クラス2-1(主に軽2輪):排気量150cc未満、最高速度100km/h以上115km/h未満、または排気量150cc以上、最高速度115km/h未満
・クラス2-2(主に軽2輪):最高速度115km/h以上130km/h未満
・クラス3-1(主に小型2輪):最高速度130km/h以上140km/h未満
・クラス3-2(主に小型2輪):最高速度140km/h以上
燃費と排ガスは、WMTCモード運転の測定値をカタログに表記していますが、燃費については法規ではなく、国内2輪メーカーの自主的な取り組みとして行っています。
一方の排ガスは、道路運送車両法の保安基準で定められた法規です。WLTCのような世界標準の試験法の施行によって、多くの国や地域の燃費・排出ガスの測定が一度の試験で済むという大きなメリットがあります。
(Mr.ソラン)