■街中でも高速域でもスムーズに走れる改良後モデル
MAZDA 3が2020年11月に受けた商品改良は、以前お伝えしたように、既存車のオーナーにもパワーアップなどの無償アップデートという恩恵ももたらしています。これから購入を検討している人には、乗り心地の改善(無償アップデートには含まれない)や後述するパワーアップなどが提供されることになります。
主力である1.8Lディーゼルエンジンの「SKYACTIV-D 1.8」は、最高出力が116PSから130PSに高められたと共に、幅広い回転域で力強いトルクを発揮する制御が盛り込まれています。最高出力の発生回転数はこれまでと同じ4000rpmで、27.5kgmという最大トルクの発生回転数も1600-2600rpmと同値。
新旧乗り比べると、新型はトルクバンドが広がったのが実感できます。パーシャル域からの出だしはスムーズで、中間加速の盛り上がりも伝わってきます。過給が立ち上がるまでの「間」も小さくなった印象で、街中はもちろん、高速道路の合流時や巡航時など多様なシーンで走らせやすくなっています。
急な上り坂で新旧モデルを乗り比べると、新型は制限速度までの加速がスムーズで、一段と力感が高まっているのが実感できます。こうした動力性能の向上ぶりは、10PS/16Nm増強された「e-SKYACTIV X」よりも濃厚に感じられました。同時にATの制御が見直され、ドライバーが欲しい加速感が瞬時に引き出されるギヤ選択が粛々と行われているのも印象的。いい意味で変速している感覚を抱かせなくなっています。
とくに、3速40km/h〜加速レスポンスが高まったことで、先述したように、街中での走りやETC(料金所)ゲートからの再加速というシーンで力強さが感じられます。乗り心地の改善については、改良前よりもゴツゴツとした感触が収まり、全体的にフラットライドなフィーリングになったのは朗報。
とはいっても最近のマツダ車でベストといえるCX-30のようなストローク感やMX-30(EVモデル)のような重厚感まではなく、一部グレードに設定されている16インチタイヤ(205/60R16)の乗り味も気になるところです。
今回の商品改良で「e-SKYACTIV X」「SKYACTIV-D 1.8」のパワーアップは十分に実感できたことで、どちらがオススメかは正直迷います。
後者のトルクフルな走りやイニシャルコスト、ランニングコストの良さも勘案すると、まずはディーゼルエンジン車を検討するのが多くの方にとって無難といえそうです。また、ディーゼルエンジンというと音や振動面が気になる方もいると思われますが、ディーゼルエンジンに注力してきたマツダだけにこのクラスでは、遮音性、静粛性の高さはピカイチです。
(文/塚田勝弘 写真/前田惠介)