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■クルマのハイブリッドは燃費重視、バイクは性能重視
●モーターアシストで強力な発進加速や追い越し加速を実現
クルマでは見慣れたハイブリッド車ですが、バイクでは2018年に、ホンダが初めて投入しました。エンジン出力をモーターがアシストすることでレスポンスを高め、強力な加速力を発揮します。
バイクで登場したハイブリッド車の構成とメリットについて、解説していきます。
●ハイブリッドとは
クルマでは、1997年に量産初のハイブリッド車プリウスが発売されて以降、さまざまなハイブリッド車が発売され、日本では低燃費車として確固たる地位を確立しています。
クルマで採用されているハイブリッドは、エンジンとモーターを搭載し、両者の出力を適正に使い分けて燃費向上を図るシステムです。
一方、2018年に発売された世界初のハイブリッドバイク「HONDA PCXハイブリッド」では、エンジン出力をモーターでアシストしてレスポンスを向上させ、発進加速や追い越し加速を強化するのが狙いです。
●ハイブリッドの構成
ハイブリッドバイクでは、従来のアイドリングストップで採用していたACG(交流発電機)スターターの電源電圧を48Vに昇圧して、48Vのリチウムイオンバッテリを追加で搭載。PDU(パワードライブユニット)が、スロットル開度やエンジン回転数、バッテリの状態などの情報から、ACGスターターを制御してアシスト特性や減速回生などを最適化します。また、バッテリーには、バッテリーの残量などを制御するBMU(バッテリーマネージメントユニット)が内蔵されています。
ACGスターターは、もともとアイドルストップ用としてスターターとACGを一体化させ、アイドルストップ後のエンジン再始動を静かに素早く行えるようにした交流発電機/モーターです。ハイブリッド用に48Vに昇圧して、モーターとしての駆動力を高め、発電機として減速回生も増強しました。
減速回生ブレーキでは、ブレーキをかけたときにACGを発電機として作動させます。発電機の回転抵抗を制動力とし、同時に発電機によって発生する電気エネルギーとして回収してリチウムイオンバッテリーを充電します。
●ハイブリッドの効果
ハイブリッドバイクでは、エンジン出力をモーターでアシストして、レスポンスの向上と加速性能の向上を実現します。ホンダの「PCXハイブリッド」では、エンジン出力にモーター出力1.9PS/トルク0.44kgmがアシストされるので、ベースのガソリン車に対して最高出力は16%、最大トルクは37%向上します。
その効果は、発進加速や追い抜き加速で発揮され、その結果0-100m加速では、ガソリン車に対して10%程度所要時間が短縮されます。
モーターアシストの作動時間は、スロットル開度、エンジン回転数、リチウムイオンバッテリーの充電状態などで異なります。当然ながら、リチウムイオンバッテリーに十分な充電量がなければ、アシストはできません。アシストの頻度を上げるため、アシスト時間は開始から最大トルクを約3秒間継続し、その後1秒間で徐々に減らすように限定しています。
クルマで普及したハイブリッド技術が、バイクでも登場しました。ただし、クルマのように燃費向上という環境対応技術の切り札でなく、モーターによって加速力を強めるのが目的です。今後バイクでもハイブリッドが普及するかどうかは、アシストの恩恵をどれだけ受けるかどうかですが、効果が限定的なのでコストパフォーマンス次第と言えるかもしれません。
(Mr.ソラン)