リアに適したダンパーとは?安定した減衰力を生むド・カルボン式が主流【バイク用語辞典:サスペンション編】

■モノチューブ型、ツインチューブ型、ド・カルボン型が代表的

●主流は、取り付け自由度が高く、減衰力の応答性に優れたド・カルボン式

リアサスペンションは、スイングアームとフレームの間に取り付けられ、伸縮することで路面からリアタイヤ、リアフレームに伝わる衝撃を吸収します。ダンパーとしては、ガス室とオイル室を分離したド・カルボン式が主流です。

リアで採用される代表的な3つのサスペンションダンパーについて、解説します。

●リアサスペンションのダンパー

リアサスペンションで用いられるダンパーには、モノチューブ(単筒倒立)型とツインチューブ(複筒正立)型、ド・カルボン(フリーピストン)型などがあります。

3つのリアサスダンパー
3つのリアサスダンパー

モノチューブとツインチューブは、オイル室とガス室が分離されておらず、オイルとガスが混じり合って減衰力が不安定になることがあります。取り付け方向や角度に制限があり、一部のビジネスバイクやスクーターなどに採用されています。

一方のフリーピストン型は、オイル室とガス室が完全に分離されており、ド・カルボン型と呼ばれて小型車以上のバイクで主流のダンパーです。

●なぜダンパーにガスが封入されているのか

ダンパーにガスが封入されているのは、ロッドのストロークを確保するためです。

オイルだけでは、ダンパーピストンが圧縮方向に移動するとシリンダー内の容積が小さくなり過ぎ、それ以上圧縮することができなくなりストロークできません。ダンパー内部にオイルとともに窒素ガスや空気を充填することでダンパーが圧縮されたときに気体が圧縮されてストロークが確保されるのです。

また、ダンパーピストンの往復運動によって発生する負圧によるキャビテーション(気泡の発生)現象を抑える効果もあります。

●モノチューブ(単筒倒立)型

ダンパーピストンによって圧縮されたオイルの容積変化は、筒の上部のガス室の容積変化で受け止めます。オイル室とガス室が分離していないため、オイルとガスが混じり合って減衰力が不安定なることがあります。上下逆さまに取り付けると、ピストン部分がオイルに完全に浸らないため正常に機能しません。

●ツインチューブ(複筒正立)型

モノチューブ型とは逆に正立で成立するようにシリンダーを2重にして、ピストンが作動する領域にオイルを充填し、内側と外側のシリンダーの隙間容積部の上部にガス室を設けています。ダンパーピストンによってオイルが圧縮され容積が小さくなると、オイルはバルブを通して内側シリンダーの外周部の隙間容積部へ流れ込んで、その上部のガス室が圧縮されてストローク変化を受け止めます。

●ド・カルボン型

オイル室とガス室が、フリーピストンで完全に分離されたフリーピストン型です。

オイルとガスが完全に分離していることから密度の高いオイルが移動し、さらにガス室に高圧の窒素ガスを封入しているため減衰力の応答性に優れています。また、ダンパーピストンには圧縮側と伸び側両方のバルブを持ち、オリフィス通路を開閉するリーフバルブが装着されています。

小型車以上のバイクでは主流の方式で、取り付け位置の自由度を上げるためにガス室とオイル室の一部を別体式にして、全長を短縮するタイプもあります。


オイル室とガス室が分離されていないタイプは、低コストですがオイルとガスが混じり合いやすく減衰力が緩くカッチリ感に乏しいフィーリングになりやすい傾向があります。

一方のド・カルボン型は応答性の高い、しっかりした減衰特性を発生させるので、現在主流となっています。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
続きを見る
閉じる