■新型レヴォーグでハンズオフ走行ができるのは50km/h以下の渋滞時のみ。
しかし、実際にハンズオフしたくなるのは80~100km/hの速度域
現在、全国のSUBARU販売店にて先行予約を受付けている新型レヴォーグ。プラットフォーム、パワートレインとも刷新される新型レヴォーグは、ハンドリングなど古典的な走りの面でも明らかにレベルアップしていますが、それだけではありません。スバルのコアテクノロジーであるADAS(先進運転支援システム)である「アイサイト」も大きく進化しています。
ステレオカメラも一新され、ミリ波レーダーも併用されるシステムとなっているうえに、さらにADAS性能を高めた「アイサイトX」をメーカーオプションとして用意しているのです。
今回、その「アイサイトX」の走りをプロトタイプに試乗して味わうことができました。高速道路を模したテストコースでの体験でしたから、条件的には恵まれた環境といえますが、カーブ前速度抑制、料金所前速度抑制といった機能は3D高精度地図を採用したことで実現したものですし、スイッチを押すだけで車線変更をして追い越しを実施するアクティブレーンチェンジアシスト(約70km/h~120km/hで作動)も実現しています。
さらにドライバーの状態をカメラで検知することでわき見運転を注意する機能もありますし、なんらか病気などで意識を失ったと考えられる際にはハザードを点滅させながら車両を安全に停止させる「ドライバー異常時対応システム」も新採用しています。
これの機能は、いずれもスバルとして初搭載。そして、その中の真打ちといえるのが「渋滞時ハンズオフアシスト」。名称の通り、およそ50km/h以下で先行車に追従している状態において条件を満たすとステアリングから手を離すことができる、すなわちハンズオフ(手放し)運転が可能になるというADAS機能です。
もともとスバルの「アイサイト」は国産ADASでは老舗中の老舗で、経験豊富なだけに制御もこなれていて安心感は抜群。これまでも車線中央維持機能が働いているときにはステアリングに触れているくらいで、ほぼ車両に任すことができるレベルでしたが、「アイサイトX」ではそうした信頼感がいっそう増しているのが感じられます。
ですから、50km/h未満の渋滞を想定したシチュエーションにおいて手放しをすることに何の違和感もありません。むしろ自然な流れでハンズオフできますし、ハンズオフを示すメーターが青色になるのが楽しみになってきます。
しかし、こうして「アイサイトX」が実現した渋滞時ハンズオフを味わってしまうと、渋滞時に限定というのが残念に思えてきます。諸々の事情があるのは理解できますが、できることなら80~100km/hで追従クルーズしているときにもハンズオフできるようにしてほしいと願ってしまうのです。なぜなら、その速度域こそ高速道路ではもっとも多用するであろう速度域であり、運転支援による負担軽減という意味では最大の効果を発揮すると思えるからです。
なお、新型レヴォーグではドライバーがステアリングを握っているかどうかは、ステアリンググリップ表側(ドライバー側)に仕込まれたタッチセンサーで検知するようになっています。センサーの感度も十分で、さほど力をいれずに触れているだけで「握っている」と判断してくれるので、テストコースということでステアリングに触れる手の力をギリギリまで弱くして(車両側からステアリングを握るように注意されるくらい)みましたが、車両側の機能だけでしっかりとコーナーをトレースしていくことが確認できました。
その印象だけでいえば、渋滞時に限らず、100km/h程度まではハンズオフに可能にしてもおかしくないと思えるほど。それほどの完成度だからこそ、もっと広い速度域でのハンズオフが可能と確信できます。
新型レヴォーグのデビュー前で気の早い話ですが、スバルの最新ADAS「アイサイトX」がハンズオフ領域を拡大することに大いに期待したいですし、そうした進化版が登場する日が楽しみです。
(自動車コラムニスト・山本晋也)