■2030年死亡事故ゼロに向かっての着実な歩みの一歩
スバルは2030年にはスバル車に乗車中の死亡事故およびスバル車との衝突による歩行者・自転車等の死亡事故をゼロにすると宣言しています。
この安全宣言の大きな柱となるのがアイサイトの進化で、新型レヴォーグではアイサイトが大幅に進化。新たに「アイサイトX」の名前となりました。
システム構成はセンサーが新型のステレオカメラに前方レーダー×2機、後方レーダー×2機、リヤソナー1機。コントロールユニットには3D高精度地図ユニットが組み込まれました。
まだナンバーを取得していないプロトタイプということで、試乗は日本自動車研究所のテストコースで行われました。使用されたのはテストコースのなかでももっとも一般路に近い外周路です。
すべての機能を使うためには3D高精度地図データが必要で、市販モデルでは高速道路や有料道路、自動車専用道路などの3D高精度地図データが搭載される予定です。今回は試乗体験のために特別に日本自動車研究所外周路の3D高精度地図データが製作され、クルマに搭載されました。
従来のアイサイトに搭載されていた車間維持しながらの追従走行や、車線維持走行はもちろん、それらをさらに進化させた機能が満載されています。
車線維持をする際の介入感も自然でドライバーをイラつかせません。制御系もかなり詳細なセッティングをしたということですが、それと合わせてシャシー性能の向上によってクルマの動きに引き締まり感が出ていることを感じます。ステアリングにタッチセンサーを内蔵しているため、しっかり握っていなくても触れている程度でこれらの機能は正常に働きます。
ウインカーを操作することで自動で車線変更する「アクティブレーンチェンジ」が追加されました。ウインカーレバーを深く操作すると周囲の安全を確保しレーンチェンジします。ウインカー操作後の動きはスムーズで、早すぎず遅すぎず人間のフィーリングに合った感覚でレーンチェンジします。
また、車線変更をすることで危険となる場合はアラームにより警告されると同時に、クルマ側がステアリングを操作し元の車線に戻されます。有料道路の料金所に近づくと、速度を低下させ約20km/hで通過します。3D高精度地図データをもとにカーブ前減速も行われます。
さて、注目のハンズオフ走行です。アイサイトXのハンズオフシステムは約50km/h以下、つまり高速道路の渋滞時に機能します。順調な高速道路で100km/hで使いたいという人もいるでしょうが、私は100km/hで走っているときはステアリングを持っていたほうが安心します。
最高速度側で運用するには法規とのからみもあり、実際の交通の流れに乗れない、流れを妨げることもありますから、渋滞時に使えたほうが実用的なイメージがあります。ハンズフリー時に手放しをしてその手を何に使うか? には疑問が残る部分ですが、渋滞時に手がフリーとなっていてクルマのなかで伸びができるだけでもかなり疲れは解消できるのではないでしょうか。
ハンズオフモードはドライバーが前方を見ていることを前提に機能(車内にカメラがありドライバーの顔の向きを監視している)していて、ドライバーがよそ見などをしているとハンズオフモードが解除されます。
さらに「ドライバー異常時対応システム」という機能もあり、ドライバーが完全に前を見ていない状態(気を失うなど)に陥ると、クルマが減速→ハザードランプを点滅、ホーンを鳴らす→停車というようになります。停車時はフットブレーキが作動し、その後電動パーキングブレーキが作動、さらにアクセル操作が無効になります。
アイサイトで安全性の高さをアピールすることに成功したスバルは、新型レヴォーグでさらに安全性を向上。さらにユーザーの裾野を広げることに成功することでしょう。なお、アイサイトXはベースグレードを含め、すべてのグレードに標準装備されるとのことです。
(文/諸星陽一)