旧御料車「日産・プリンスロイヤル」が赤坂離宮で展示。御料車は天皇・皇后陛下が愛用される最高級リムジン【今日は何の日?2月24日】

■天皇陛下在位30周年の記念に日産・プリンスロイヤルを展示

1967年に御料車としてデビューした「日産・プリンスロイヤル」
1967年に御料車としてデビューした「日産・プリンスロイヤル」

2019(平成31)年2月24日、天皇陛下在位30周年の慶祝行事の一環として、赤坂離宮で旧御料車「日産・プリンスロイヤル」の展示が行われました。

プリンスロイヤルは、1967年から2008年まで約40年の間、昭和天皇と上皇陛下に愛用された御料車です。


●日本車として初めて御料車となった日産・プリンスロイヤル

御料車の御料とは、高貴な人という意味があり、御料車は“天皇皇后両陛下がご愛用になる車両”を指します。

明治時代までは馬車が用いられていましたが、1912(大正元)年の大正天皇のご即位の際に初めてダイムラー社の「ランドレー」が使われ、その後はロールス・ロイス「シルバーゴースト」など高級輸入車が使われました。

1957年に誕生した初代「スカイライン」。重厚なアメリカンスタイルの高性能セダン
1957年に誕生した初代「スカイライン」。重厚なアメリカンスタイルの高性能セダン

1960年代になって、日本の自動車技術が進んで純国産車が続々と登場したことから、御料車も国産車で作ることに。その役目を担ったのが、すでに「スカイライン」や「グロリア」などを生産し、高い技術力と生産能力を誇っていたプリンス自動車だったのです。

プリンス自動車には、クルマ好きの当時の皇太子(現在の上皇陛下)に「プリンス・セダン」や「スカイライン」、「グロリア」などを献上して、すでに公用車としての納入実績がありました。このことが、プリンス自動車が御料車製造に選ばれた大きな要因でした。そもそもプリンス自動車という社名は、1952年に皇太子の立太子礼を記念して付けられたもので皇室と縁が深いメーカーだったのです。

プリンス自動車は、1965年に御料車を「プリンスロイヤル」の車名で発表。ところが、翌1966年4月にプリンス自動車は日産自動車に吸収合併されたため、その年の10月に正式発表されたときには、車名は「日産・プリンスロイヤル」となっていました。

●日産・プリンスロイヤルには御料車ならではのこだわりが満載

国内最高峰の御料車は、重厚な縦目4灯ヘッドライトを装備し、全長6155mm/全幅2100mm/全高1770mm、ホイールベース3880mmの巨大ボディで車重は3200kgに達しました。ちなみにベースとなった大型乗用車グロリアのサイズは、全長4380mm/全幅1675mm/全高1535mm、ホイールベース2535mm、車重1360kgなので、いかに大きいかがよく分かります。

縦目4灯ヘッドライトに、3分割された6ライト式のリムジン「日産・プリンスロイヤル」
縦目4灯ヘッドライトに、3分割された6ライト式のリムジン「日産・プリンスロイヤル」

車内には、運転席と後部客席の間にガラス製のパーテンションを備え、侍従用の補助2席もある8人乗り。その装備はほぼ手作りで、可能な限りの最高級の品質を追い求め、全席は革張り、貴賓席には最高級の毛織物が使用されました。

パワートレインは、専用開発の最高出力260PSを発揮する6.4L V8 OHVエンジンと、GM製3速ATの組み合わせ。駆動方式はエンジン縦置きのFRで、サスペンションは前がダブルウィッシュボーン、後が半楕円リーフで吊った固定軸、ステアリングはパワーアシスト付きのリサーキュレーティング式でした。

●日産・プリンスロイヤルが引退、後はトヨタ「センチュリーロイヤル」が引き継ぐ

1997年発売の2代目「センチュリー」。「センチュリーロイヤル」のベース車
1997年発売の2代目「センチュリー」。「センチュリーロイヤル」のベース車

日産・プリンスロイヤルは、1967年に納入されて以来、約40年間昭和および平成の天皇・皇后陛下の公務で使われましたが、長期の使用による老朽化や部品交換が難しくなったことから、最新化が検討されました。しかし、当時の日産はルノーと提携して経営再建中という社内事情もあり、後継車の受注を辞退しました。

そこで、後継車として選ばれたのがトヨタの「センチュリー」でした。先代に負けない豪華さと先進技術満載のリムジンに仕立てられた御料車「センチュリーロイヤル」が、2006年から後を引き継いで現在も活躍中です。


日産・プリンスロイヤルは、御料車として5台、国賓級の送迎車として2台の計7台が作られました。もちろん、市販化はされませんでしたが、どんな乗り心地なのか試してみたいですね。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかも知れません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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