■電費で優れるのは軽い「ライト」「プロ」は最先端の充実装備が美点
フォルクスワーゲンは、バッテリーEV(BEV)のID.4を日本に導入しています。カタログモデル(標準グレード)は、「ID.4 Lite(ライト)」「ID.4 Pro(プロ)」で、それぞれに導入記念仕様である「Launch Edition(ローンチ・エディション)」を設定しています。
「ローンチ・エディション」は、2022年11月の日本での発売後間もなく完売し、同年12月にカタログモデル(標準グレード)が発表。ただし発売は、2023年第2四半期以降とアナウンスされていました。
コロナ禍による部品不足もあり、日本への到着が待たれていた中、2023年12月になり、ほぼ1年遅れでカタログモデルの「ライト」に初めて試乗することができました。
ライトは、バッテリー容量(正味)52kWhで一充電あたりの航続距離は435km。プロは77kWh・618kmとなっています。カタログモデル(標準グレード)の価格は、ライトが514万2000円、プロが648万8000円。差額は134万6000円と、結構な金額となっています。
航続距離以外のスペックは、ライトが最高出力125kW(170PS)・最大トルク310Nm、プロの最高出力は150kW(204PS)・最大トルクは同じ310Nm。WLTCモード電費は「ライト」が132Wh/km、プロが139Wh/kmと、ライトの方が良くなっています。
なお、駆動用バッテリーの容量差などもあり、車両重量はライトが1950kg、プロが2140kgと190kgもライトの方が軽くなっています。大人3人分近い重量差は、電費や走りにも影響を及ぼしています。
もちろん、135万円近い価格差は装備にも反映されています。ライトは、同一車線内全車速運転支援システムの「Travel Assist」が未設定。こちらは、210km/hまで前走車との距離と車線を維持するだけでなく、渋滞時の低速域でも作動し、先行車が完全に停止するまで稼働します。なお、起動時の速度は30km/h以上。ロングドライブの機会が多いのなら間違いなく重宝するドライバーサポート機能です。
ハンズオフドライブ(手放し運転)には対応していないものの、静電容量型ステアリングホイールの採用により、軽くステアリングを握っているか、絶えず軽く触れていれば、アダプティブクルーズコントロール(ACC)とレーンキープが持続します。
ただし、ライトにもACCと車線維持機能が標準化されているため、高速道路の巡航も楽にできます。衝突被害軽減ブレーキはもちろん全車標準。
そのほか、「ダイナミックコーナリングライト」「ダイナミックライトアシスト」、緊急時停車支援システムの「Emergency Assist」、LEDマトリックスヘッドライトの「IQ.LIGHT」、ヒーター、メモリー、リバース連動機能(助手席)付の「電動格納式リモコンドアミラー」、3ゾーンフルオートエアコン(ライトは前席左右独立式の2ゾーン)、純正インフォテイメントシステム「Ready 2 Discover MAX」がプロには標準(ライトはReady 2 Discoverが標準)で、ライトには未設定。なお、Ready 2 Discover MAX、Ready 2 Discoverともにディスプレイオーディオになります。
また、足まわりはライトが235/60R18タイヤ、プロが235/50R20モビリティタイヤ。モビリティタイヤは、厳密にはランフラットタイヤとは異なるものの、シーリング技術により直径5mmまでの穴を防ぎ、タイヤ内の圧力損傷を防ぐ承認タイヤです。
装備をチェックすると、確かにプロの充実ぶりが目を惹きます。しかし、ライトでも必要十分な安全、快適装備を用意していて、街中を中心とした使い方であればライトでも物足りなさを覚えることはないでしょう。
ライトの走りは、プロと比べると、冒頭で紹介したように190kgの重量差は明らかで、軽快感があります。しかも最大トルクも同値ですから、タウンスピードであれば最高出力25kW(34PS)の差を抱かせません。
高速道路にステージを移すと、パンチ力ではプロに及ばないものの、実用上不足はなく、東名高速道路の120km/h区間も容易に流れをリードできました。
街乗りを中心に、それほど長距離ではない通勤程度であれば不足のない航続距離を確保するID.4のライト。プロの最先端かつ充実の装備にはやや譲るものの、これで十分と思わせるスペックや走りを享受できます。
●価格
ID.4 Lite:514万2000円
ID.4 Pro:648万8000円
(文・写真:塚田勝弘)