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■輸入車に寒冷地仕様はあるのか?
一部の日本車には、外気温マイナス10度以下の地域での使用を想定した寒冷地仕様車が用意されています。ですが、輸入車の寒冷地仕様は不思議と聞き馴染みがありません。
ひょっとして、輸入車には寒冷地仕様がないのか、または寒冷地で乗ってはいけない車なのでしょうか。真偽を確かめるべく、輸入車の寒冷地仕様について調べてみました。
●寒冷地仕様車ってどうなってる?
寒冷地仕様車とは、寒冷地での使用を想定した装備や調整が追加された車です。
極端に気温が低い地域では、寒さでバッテリー性能が低下してエンジンが始動困難になることがあります。また、冷却水が凍ってしまうとエンジン内を循環できず、冷却できなくなることも。
この対策として、寒冷地仕様車は標準に比べて大型のバッテリーが装備されるとともに、冷却水の添加剤を濃くして凍結を防止する調整が施されます。
そのほか、車種によってはセルモーターやワイパーモーターが強化されたり、吹雪でも後続車に自車の位置を知らせられるリアフォグランプなどの安全装備が追加されます。
さらには、エンジンが冷えている状態でも車内の寒さを和らげてくれるステアリングヒーターやシートヒーターに加え、後席を効率的に暖められるリアヒーターダクトなどの快適装備が追加される車もあります。
●輸入車は寒冷地仕様相当が標準装備
調べたところ、輸入車には寒冷地仕様の設定はないようです。とはいえ、輸入車は寒冷地で使用できないわけではありません。
輸入車に寒冷地仕様が用意されていない理由は、寒冷地仕様相当の装備が標準で備わっているからです。
北欧スウェーデンのボルボは当然、雪国での使用を前提としていますし、メルセデス・ベンツやBMWなどがあるドイツや、プジョーやシトロエンで有名なフランスは、日本よりも高緯度にあるので寒冷地対策はしっかりとされています。
比較的温暖なイメージがあるイタリアやアメリカの車であっても、大陸の温暖地域から寒冷地域まで地続きで走行する場合もあるので、幅広い温度帯で使用できなくてはなりません。
実際に、輸入車のほとんどはリアフォグランプが標準装備。バッテリーも日本車より大きめのものが装着され、ヒーター付きドアミラーやシートヒーターなどが標準装備の車も日本車より多い傾向にあります。
●カローラスポーツとゴルフの寒冷地装備の違い
日本車と輸入車の代表として、トヨタ・カローラスポーツとフォルクスワーゲン・ゴルフを例に、具体的な寒冷地装備の違いを比較してみましょう。
●トヨタ・カローラスポーツの寒冷地装備
・冷却水濃度調整
冷却水の添加剤濃度が30%に調整された標準仕様では、マイナス15度程度で冷却水が凍るのに対し、50%にまで濃く調整された寒冷地仕様ではマイナス35度程度まで凍結しません。
・電熱式補助ヒーターの追加
電熱式ヒーターを追加することで、エンジンが冷えている状態でも温風が出ます。
・リアヒーターダクト
後席にも温風が届きやすいようにリアシートの足元にまでヒーターダクトが追加されます。
・スターター強化
エンジンの始動性を引き上げるために、セルモーターが通常の1.0kWから1.6kWに強化されます。
・ステアリングヒーターの追加
ハンドルの握る部分に電熱ヒーターを追加し、エンジン始動直後から手を温めてくれます。
・フロントウインドウデアイサーの追加
フロントガラスに電熱線を仕込んで融雪を促すとともに、雪でワイパーが動かなくなるのを防止します。
・ウォッシャータンクの大容量化
ウォッシャータンクの容量を2.5Lから4.8Lに増加させてウォッシャー液切れを防ぎます。
以上に加え、カローラスポーツではドアミラーに付いた霜を解かして後方視界を確保できる、ヒーター付きドアミラーが標準装備です。他のカローラシリーズでは、車種やグレードに応じてワイパーモーターの強化や、リアフォグランプ追加などの変更が加えられます。
●フォルクスワーゲン・ゴルフの寒冷地装備
一方、フォルクスワーゲン・ゴルフの寒冷地装備は、リアフォグランプはもちろん、ヒーター付きドアミラーに加えて、ウォッシャー液を温めてフロントウインドウの氷を溶かすヒーテッドウォッシャーノズルが全車標準装備。グレードによってはシートヒーターやステアリングヒーターが標準装備です。
とはいえ、ゴルフに標準で備わる寒冷地装備は、カローラスポーツの寒冷地仕様車と比べて簡素な印象を受けます。
ですが、ゴルフはもちろん、ほとんどの輸入車は上記の装備が標準で備わっているうえ、ウォッシャータンク容量は日本車の寒冷地仕様と同じくらいの4L前後を確保。また前述したように、輸入車に標準搭載されるバッテリーは国産車の寒冷地仕様よりもさらに大型で冷間始動性にも優れます。
以上の比較から、輸入車は標準のままで寒冷地仕様相当の装備になっていることがハッキリとわかりますね。念のため、使用地域の最低温度に合わせて冷却水とウォッシャー液の濃度をチェックしておけば、輸入車でも真冬の北海道を安心して走行できます。