ヤマハ新型「XSR125」は、自在に操れる走りが「遊び心」をくすぐるバイク。ネオレトロな原付二種スポーツに乗ってみた

■若者だけじゃない、オジサンライダーも楽しい懐の深さが魅力

ヤマハ発動機(以下、ヤマハ)の新型ネイキッドスポーツ「XSR125 ABS(以下、XSR125)」が、いよいよ2023年12月8日に発売されます。

XSR125のフロントビュー
XSR125のフロントビュー

レトロな外観と高いパフォーマンスを調和させた「XSR」シリーズの125cc版として登場するこのモデルは、近年増加している若いライダーが主なターゲット。シリーズ共通のネオレトロなスタイルを受け継ぎながらも、二輪免許を取ったばかりの初心者ライダーでも扱いやすい装備や走りが特徴だといいます。

そんな新型のXSR125を、ヤマハ主催の試乗会で乗ってみたんですが、なかなかどうして、バイク歴40年以上の筆者でも、かなり楽しんで乗れるバイクでした。

特に、気負わずに、思い通りの走りができるハンドリングは秀逸。今回は、ミニバイクやカート向けのサーキットで試乗しましたが、きっと街乗りはもちろん、郊外のワインディングなどでも、バイク好きの遊び心を満足させてくれるほど楽しいだろうなってことを実感しました。

では、実際、新型XSR125にオジサンライダーの筆者が、どんな乗り味や楽しさを感じたのか、ちょっと紹介してみますね。

●まるで上級機種のような質感

まず、外観の印象ですが、原付二種とは思えないほどのハイグレードな装備に驚きました。特に、橫にラインが入ったタックロールタイプのシートは、カスタム感が満点。また、丸目一灯ヘッドライトのステーやサイドカバーには、アルミ製バーツも使われており、軽量化のために肉抜き加工まで施されています。

タックロールシートはカスタム感も満点
タックロールシートはカスタム感も満点

この辺りは、XSRシリーズの上位機種、900ccの「XSR900」や700ccの「XSR700」に負けない質感だといえるでしょう。

ほかにも、丸味を帯びた形状の燃料タンクや、シンプルな丸型LCDメーターなどがクラシカルな雰囲気を醸し出し、まるでビンテージ風カスタムが施されたバイクのようなかっこよさを感じさせます。

●思ったより足着き性は良好

ぱっと見た感じではシート高がやや高そうな印象のXSR125。でも、実際にまたがってみると、身長165cm・体重59kgの筆者でも、片足ならペッタリと地面に着きますし、両足を出してもカカトがやや浮く程度。足着き性は意外に良好です。

シート高は810mm。身長165cm、体重59kgの筆者でも、足着き性は良好
シート高は810mm。身長165cm、体重59kgの筆者でも、足着き性は良好

ちなみに、XSR125のシート高は810mm。原付二種モデルとしては、やはりちょっと高い方かもしれません。でも、乗ってしまえばリヤサスペンションが適度に沈み込んでくれるので、さほど気になりません。筆者くらいの体格なら、交差点などで停止する際などに、うまく足を着けず、立ちゴケするようなこともほぼないでしょう。

また、車両重量が137kgと軽いので、取り回しなども楽。もし、低速走行時などにバランスを崩しそうになっても、足をついて立て直すことも難なくできますね。

ワイドなバーハンドルを装備
ワイドなバーハンドルを装備

ライディングポジションは、ワイドなバーハンドルなどにより、上体があまり前傾せず、楽な姿勢で乗ることができます。また、前後に長いシートは、着座位置に自由度が、身長が高い人でも、窮屈にならない好みのポジションを取れるといえるでしょう。


●全域でスムーズなエンジン特性の秘密は?

エンジンを始動させ、早速スタート。アクセルを軽くひねりながらクラッチレバーをミートすると、スルスルと軽快に走り出してくれます。

124cc・水冷SOHC4バルブ単気筒エンジン
124cc・水冷SOHC4バルブ単気筒エンジン

XSR125が搭載するエンジンは、124cc・水冷SOHC 4バルブ単気筒。最高出力は11kW(15PS)/10,000rpm、最大トルクは12N・m(1.2kgf・m)/8000rpmを発揮します。

小排気量の単気筒エンジンを搭載するバイクの場合、一般的にはあまり高回転まで回さず、加速する際は早めにシフトアップしたほうが心地よく走れることが多いといえます。

でも、XSR125のエンジンは、意外に高回転までよく回りますね。発進時の低回転域から、レッドゾーン手前の1万回転付近まで一気にスロットルをひねっても、トルクの谷を感じさせず、心地よくスムーズに吹け上がってくれます。

また、今回試乗したコースには、2速または1速までギアを落とし旋回するタイトな左ヘアピンコーナーがあり、そこから短い直線を走る区間がありました。そうした、ストップ&ゴーの場所でも、コーナー立ち上がりでアクセルを全開にしながらシフトアップする際、125ccバイクながら、あまりストレスを感じさせない加速感を味わえたのは驚き。

もちろん、より排気量が大きい250cc以上のバイクほどではありませんが、原付二種だと思って走れば、意外に楽しい加速感を味わえました。

VVAを搭載した124cc・単気筒エンジンは、全域で爽快な加速感を味わえる
VVAを搭載した124cc・単気筒エンジンは、全域で爽快な加速感を味わえる

こうした特性は、このバイクのエンジンに「VVA」という可変バルブ機構が採用されていることが大きいといえます。これは、エンジン内で燃焼する混合気を採り入れる吸気側バルブを動かすカムに低速向けと中高速向けを装備し、7000〜7400rpmの回転数で切り替えるといったシステムです。

これにより、低回転域と中高回転域のそれぞれで最適なトルク特性が発生。ゆっくり走りたいときや、ちょっとハイペースで走りたいときなど、ライダーの気分や状況などに応じて、様々な走り方を楽しめるのです。

しかも、6速ミッションを採用しているから、シフトチェンジを駆使した本格的なスポーツライディングが楽しめることも魅力。特に、XSR125のような小排気量のスポーツモデルでは、こまめなシフトチェンジをする方がハイペースな走りも楽しめます。この点でみても、このバイクは初心者ライダーがスキルアップするのにも最適といえるでしょう。

YZF-R125
YZF-R125

ちなみに、ヤマハの原付二種スポーツには、XSR125に先駆けて発売したスーパースポーツの「YZF-R125」や、ネイキッドスポーツの「MT-125」もあります。

これらは、基本的には同じエンジンや車体を採用していますが、XSR125ではエンジンの味付けなどを変更。より自由度が高い特性とするために、専用のECUを搭載するほか、YZF-R125やMT-125が採用するトラクションコントロールも「あえて」非採用にしています。

これにより、よりスポーティな走りを生み出すYZF-R125やMT-125に対し、XSR125では、よりライダーが意のままに操れる乗り味にしているのだとか。そして、その味付けこそが、このバイクに、気軽で自在に乗れる楽しさを提供しているといえるでしょう。

●コーナーを曲がる際の自由度も高い

コーナーを曲がる際の自由度が高いことも、このバイクの魅力です。インナーチューブ径37mmの倒立式フロントフォークは、進入時などで、沈み込みの初期がややソフト。その分、車体を右左に切り替えしたりするのも楽なのですが、心配なのはハードなブレーキをかけた時などに、サスペンションが底付きして転んでしまうこと。

コーナーを曲がる際の自由度が高いことも魅力
コーナーを曲がる際の自由度が高いことも魅力

でも、その点も問題なし。フロントフォークがより沈み込んでいけば、奧でしっかり粘るように踏んばるため、とっても安定しているのです。しかも、かなりハイペースで走っても、狙った走行ラインをきちんとトレースできるので、コーナリングがとっても楽しかったですね。

また、たとえば、コーナー途中に荒れた路面があり、そこを避けるために、車体を倒し込みながら走行ラインを変えるのも楽でした。昔から、ヤマハ車には「ハンドリングのヤマハ」という称号がよく使われますが、このバイクにもそうした伝統がしっかりと受け継がれていることを実感しました。

フロントに267mmの大径ディスクと2ポッドキャリパーを備えるブレーキも、効きは十分。また、コントロール性も良好で、レバーの握り方に応じ思った通りの制動力が発生するため、コーナー進入時の減速などがとても安心。「止まれない」なんて冷や汗をかくようなシーンは皆無でした。逆に、思ったより効き過ぎるようなこともないため、前輪がロックして転倒する、いわゆる「握りゴケ」などの心配も無用でした。

アシスト&スリッパークラッチにより、一気にシフトダウンするときも車体がとても安定
アシスト&スリッパークラッチにより、一気にシフトダウンするときも車体がとても安定

さらに、アシスト&スリッパークラッチを装備することも、特に、ブレーキング時の安定感をより高めてくれます。これは、減速でシフトダウンをする時などに、過度なエンジンブレーキをかかりにくくするための装備です。

たとえば、直線で4速で走っていって、タイトなコーナーの手前で一気に1速までギアを落とすようなシーン。そんな時、シフトダウン後にパッとクラッチレバーを離しても、後輪が横滑りしたり、浮き上がるようなことがなく、車体がとても安定するのです。幅広いスキルのライダーが、シフトダウン時に安心して走れるってことですね。

しかも、この機構には、クラッチレバーの操作性を軽くしてくれる効果もあります。長距離ツーリングなどでも、疲労度が少なく、よりライディングに集中できることもメリットですね。

ちなみに、XSR125のスタイルに大きく貢献しているブロックパターンのタイヤ。特に、リヤは140/70-17というワイドなサイズを採用しており、リヤビューにワイルドなテイストを醸し出しています。

リヤのブロックパターンタイヤには、140/70-17のワイドサイズを採用
リヤのブロックパターンタイヤには、140/70-17のワイドサイズを採用

一般的に、ブロックパターンのタイヤは、オフロードの走行も考慮していることで、舗装路ではゴツゴツ感などを感じ、乗り心地が悪くなるタイプもあります。ところが、XSR125のタイヤは、ロードノイズなども少なく、乗り心地も快適。しかも、オンロードでのグリップ感もしっかりあります。

今回は試せませんでしたが、逆に、オフロードではどんな乗り味になるのかも気になります。フロントサスがよく動きますし、なにしろブロックパターンのタイヤを履いていますから、きっと、ある程度フラットなダート道であれば、そこそこ走ってくれそうな気がします。もし、筆者の予想(妄想)が正しければ、アウトドアのキャンプなどにも十分使えますから、ちょっとワクワクしますね。

●乗るのはもちろん、カスタマイズも楽しそう

XSR125は、前述の通り、主に二輪免許を取ったばかりの若者向けに開発されたモデルです。でも、今回の試乗で、長年バイクに乗る筆者のようなオジサンライダーでも、十分に楽しめることを実感しました。

日常の足から休日のワインディングまで楽しめるバイク
日常の足から休日のワインディングまで楽しめるバイク

このバイクなら、近所への買い物などといった日常の足から、休日に郊外へ出かけ気軽にワインディングを走るなど、いろいろな使い方ができそうです。スタイル的にも、都会はもちろん、アウトドアにも十分マッチすると思いますし、ちゃんとバイクに乗れる服装であれば、ファッションも選ばない幅の広さもあります。

また、カスタマイズするのも面白そうですね。筆者なら、このバイクを、よりオフロード色を強めたスクランブラー仕様にしたいですね。よりワイドでアップタイプのバーハンドルにしたり、ヘッドライトに網目のカバーなどを付ける等々。もしアフターパーツが出れば、アップタイプのマフラーに変更して、ちょっとしたオフロードを走るのも気持ちよさそうです。

バイクは、乗ることはもちろん、イジることも楽しみのひとつ。XSR125には、そんなオジサンライダーをはじめとする、幅広いバイク好きの「遊び心」をくすぐってくれる魅力に溢れていることが、最も大きな特徴なのかもしれません。

カスタマイズも楽しそうなXSR125
カスタマイズも楽しそうなXSR125

もちろん、バイクの操作にあまり慣れていない若いライダーが、最初に乗るバイクとしても最適です。軽い車体や扱いやすいエンジン特性などで、幅広いスキルのライダーが安心・安全に乗れますからね。

なお、XSR125の価格(税込)は、50万6000円。

最近は、250ccのスポーツモデルでも、60万円以上、へたすれば100万円近い機種もざらですから、購入費が安く済むことも魅力です。その分、ヘルメットやウェア、グローブなど、ほかの装備にお金を使えますし、車検がない原付二種ですから維持費が比較的安いことも注目点ですね。

お金の面でみても、20代の大学生や新社会人などのエントリーバイクとしてはもちろん、ベテランライダーのセカンドバイクや次の1台としても最適。しかも、幅広い乗り方や楽しみ方ができる。そんなXSR125は、多くのライダーにとって、バイクライフがより豊かになる選択肢のひとつであることは間違いないですね。

(文:平塚 直樹/写真:奥隅 圭之)

この記事の著者

平塚 直樹 近影

平塚 直樹

自動車系の出版社3社を渡り歩き、流れ流れて今に至る「漂流」系フリーライター。実は、クリッカー運営母体の三栄にも在籍経験があり、10年前のクリッカー「創刊」時は、ちょっとエロい(?)カスタムカー雑誌の編集長をやっておりました。
現在は、WEBメディアをメインに紙媒体を少々、車選びやお役立ち情報、自動運転などの最新テクノロジーなどを中心に執筆しています。元々好きなバイクや最近気になるドローンなどにも進出中!
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