■ボディサイズや価格帯を考えるとガチのライバルはテスラモデル3か
2022年7月に中国の自動車メーカー「BYD」は、日本市場に導入するATTO 3、ドルフィン、シールという3台の電気自動車(BEV)を発表しました。
2023年1月には第1弾モデルとして、コンパクトe-SUVの ATTO 3(アットスリー)を440万円で発売。続いて同年9月には第2弾のコンパクトEVのドルフィンを363万~407万円で販売開始しました。
都市部に多い立体駐車場に対応させるため、日本仕様のドルフィンは全高を1,550mmに設定。また、一充電航続距離約400kmの標準車のドルフィンは、先進の運転支援機能をフル装備しながら、補助金を利用すると298万円という戦略的な価格設定で話題となっています。
すでに日本導入が発表されている第3弾モデルのシール(SEAL)は、2023年10月28日から一般公開されるジャパンモビリティーショー2023で正式発表され、2024年年初に販売開始になるといわれています。
今回、この日本導入直前のシールに、中国の珠海(ズゥーハイ)にあるサーキットで試乗することができましたので、インプレッションを紹介します。
●最先端技術満載のSEAL
シールは、BYDの特徴であるリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを使用したブレードバッテリーを直接車体に設置し、ボディ構造としての役割をもたせることにより、安全性、安定性を向上させるCTB(Cell to Body)技術をはじめとした最先端の技術が結集されたモデルです。
ボディサイズは全長4,800mm×全幅1,875mm×全高1,460mm。ホイールベースは2,920mmで、テスラ・モデル3に近いサイズとなっています。
搭載しているパワートレインは4種類で、今回試乗したのは最高出力230kW・最大トルク360Nmを発生するフロントモーターに加えて、リアに最高出力160kW・最大トルク310Nmを発生するモーターを搭載。
システム合計の最高出力は390kW・最大トルク670Nmという最上級仕様で、車両本体価格は現地で27万9800元、日本円に換算すると約574万円と価格面でもテスラモデル3とクロスオーバーします。
このハイパワーを活かして、0-100km/h加速が3.8秒という高いパフォーマンスを発揮。リアには高いポテンシャルをアピールするように「3.8S」というエンブレムが貼られています。
前後にモーターを搭載しているので、駆動方式は4WDを採用。システム用の電池容量は82.5kWhで、満充電時の走行可能距離は欧州のWLTPモードで555kmとなっています。
試乗したシールは右ハンドル仕様ですが、日本仕様ではないため充電ジャックがコンボ仕様となっていました。車内にはカラオケマイクが装備されており、センターにあるディスプレイを操作するとカラオケが楽しめるようになっています。
サーキット走行は横にインストラクターが同乗していたため、自由に走行できませんでした。ピットロードのような路面の荒れた場所ではサスペンションの硬さを感じましたが、コース内ではコーナリング時のロールも抑えられていて、非常にスポーティな味付けになっています。
試乗したシールの駆動方式は4WDですが、これまで試乗したBEVの4WD車のような鋭いコーナリングは体験できませんでした。つまり、前後、左右の駆動力制御をしっかりと行ってくれていたため、4WD車特有のアンダーステアが出ましたし、動きにわずかながら緩慢さがありました。
人間の感覚にあった加速フィールや高い静粛性、ハンドリングのフィーリングなどは十分満足できましたが、ブレーキのタッチが緩いことと4WDの制御は、まだ改良の余地があると思いました。
個人的には電動車の良さは4WDでこそ発揮されると思っているので、ソフトウェアのアップデートなどにより4WDの制御の質を向上してもらいたいし、よりシャープな動きへと変更してもらいたいものです。
(文・写真:萩原 文博)