好評のBYD『ドルフィン』に試乗。現時点では仕上げ前? 価格未定。市販車が出てから再評価したい

■日本仕様として煮詰め不足な部分をレポート

●価格がわからない車両の商品評価は難しいです

BYDドルフィンのフロント
BYDドルフィンのフロント

すでに多くの試乗レポートがメディアに出ており、おしなべて高く評価をされているBYDのニューフェイスである『ドルフィン』ながら、結論から書くと現段階で試乗した車両の状態だと煮詰め不足に思う。BYDも「まだ日本仕様になっていません」という。そもそも価格すらアナウンスされていないため、商品としての評価は難しい。ということでドルフィンの概要と、どんな部分が煮詰め不足なのか”日本基準”でレポートしてみたい。

BYDドルフィンのリヤ
BYDドルフィンのリヤ

まずドルフィンというモデルだけれど、車格はBセグとCセグの真ん中くらいをイメージしていただければいい。日本車でいえば『Bプラットフォーム』を使うリーフのようなもの。すでに販売されている『ATTO3』はCセグとDセグの真ん中。ちなみにボディサイズは全長4290mm×全幅1770mm×全高1550mmとなる。全高は本来1570mmだったというが、アンテナ形状を変えて日本のタワーパーキングにも入れるようしたそうな。

BYDドルフィンのインパネ
BYDドルフィンのインパネ

その他、ウインカーレバーを日本仕様だけ右側にセットするなど(けっこうなコスト高になる)日本市場のため専用開発した部分も多い。搭載されている電池は三元系リチウムの4~5倍の寿命を持ち、しかも燃えないリン酸鉄リチウムを採用。容量は2タイプ。『スタンダード』が44.9kWhで、95馬力という少し物足りないパワーのモーターと組み合わされる。今回試乗した『ロングレンジ』は204馬力の58.56kWh。

BYDドルフィンのボンネットフード内
BYDドルフィンのボンネットフード内

もちろん95馬力でも走らないことはないと思う。初代リーフが109馬力でしたから。このあたりは未公表の価格次第だと思う。300万円を切ってくれば実用車として辛抱出来る範囲内。割高ならそもそも売れないだろう。だからこそクルマの評価って大雑把でいいから車両価格が解っていないと評価しにくい。204馬力仕様はATTO3と同じモーターのため、必要にして十分な加速性能を持つ。普通に乗っていれば使い切れないです。

●クルマの基本性能は上々で直進安定性良いし乗り心地も快適

BYDドルフィン・ロングレンジの走り
BYDドルフィン・ロングレンジの走り

ということで試乗と行きましょう。最初の「う~ん」がDレンジをセレクトし、ブレーキを離した時の反応。待てばクリープするのだけれど、ブレーキ離してから前進開始までのタイムラグが大きい。普通のタイミングでアクセル踏むとクリープが始まっておらず、割と急な加速になってしまう。この点、量販車までに改良出来るのか不明。少なくとも現状だとスムースさに掛ける。私ならガマン出来ない。同業者の皆さん平気らしいですが。

BYDドルフィン・ロングレンジの走り
BYDドルフィン・ロングレンジの走り

街中を走っていて気になったのがレーンキープや、車線変更時の制御。まずレーンキープだけれど、ハンドル握っていても「ハンドル握れ」のコーションがしょっちゅう出る。強くハンドルを動かさないとセンシング出来ないのだと思う。あまりに煩雑ということから機能をカットしたら、何のためについているのか解らない。はたまた後続車との距離が普通に取れている状況でレーンチェンジしようとすると、突如「ガツン!」とハンドルを戻されることも多い。

BYDドルフィン・ロングレンジの走り
BYDドルフィン・ロングレンジの走り

センサーの精度とステアリング制御の滑らかさに課題があると思う。ブレーキ制御はカックン系。踏むタイミングによって踏力と減速度の出方が違ってくる。つまりADAS(運転アシスト)の煮詰め不足ということです。これも試乗前に「試さないでください。日本仕様ではありません」という説明だったので、市販車で改良されているということも大いにあり得る。現状はチェックリストあれば電子制御系全てに「要改良!」のハンコを捺す。

BYDドルフィン・ロングレンジの走り
BYDドルフィン・ロングレンジの走り

ただクルマの基本性能は上々。直進安定性良いし乗り心地も快適。このクラスにしてはリアシート広い。満充電走行距離も夏場エアコン使って実用で300kmを超えているため(スタンダードでも250kmは走れそう)、ロングドライブだって出来る。電池寿命は100万km(!)と使いきれない。そうそう。12Vの制御バッテリーもリン酸鉄リチウムで搭載位置は床下のため交換しないで済む設定と思われる。

BYDドルフィンの幼児置き去り検知システムはハザードとホーンで警告
BYDドルフィンの幼児置き去り検知システムはハザードとホーンで警告

はたまた室内には呼吸による胸の動きも探知出来る2つのミリ波レーダーが備えられており、乳幼児を車内に置いたままロックすると6秒後にハザードと大音量のホーンが鳴る。この機能、ボルボは次世代モデルに採用を公表しているものの、市販タイミングでBYDに先を越された。そんな魅力も数多くあります。果たして日本仕様の市販車で煮詰め不足の電子制御関連がどうなるか? 市販車に乗って再評価したい。

現状では推奨出来ないです。

(文:国沢 光宏/写真:雪岡 直樹)

●BYDドルフィン主要諸元

・BYD DOLPHIN(ドルフィン)/・BYD DOLPHIN Long Range(ドルフィン ロングレンジ)
全長×全幅×全高(mm) 4290×1770×1550
ホイールベース(mm) 2700
⾞両重量(kg) 1520/1680
定員(名) 5
最小回転半径(m) 5.2
交流電力量消費率WLTC(Wh/km) 129/138(BYD調べ)
一充電走行距離(km) 400/476
定格出⼒(kW) 35/65
最⾼出⼒(ネット値) kW(Ps)/rpm 70(95)/3714-14000/150(204)/5000-9000
最⼤トルク(ネット値) N・m(kgm)/rpm 180(18.4)/0-3714/310(31.6)/0-4433
パワーバッテリー リン酸鉄リチウムイオンバッテリー(ブレードバッテリー)
総電⼒量(kWh) 44.9/58.56
フロントサスペンション マクファーソンストラット
リアサスペンション トーションビーム/マルチリンク
タイヤサイズ 205/55R16 91V