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■RVで絶好調だった三菱、GTOに続いて弟分のFTOも復活
1994(平成6)年10月24日、三菱自動車のコンパクトスポーツ「FTO」が19年ぶりに復活しました。
当時の三菱は、パジェロやRVR、デリカなどのヒットでRVブームをけん引して絶好調。そのような中、1990年のスポーツクーペ「GTO」の復活に続いたのが、弟分のFTOでした。
●コルトギャランGTOの弟分として若い層をターゲットにしたギャランクーペFTO
初めてFTOの名を冠したのは、1971年にデビューした「ギャランクーペFTO」で、前年の「コルトギャランGTO」の弟分という位置づけでした。主要なコンポーネントは、コルトギャランから引き継いだものが多く、比較的高価なGTOに対して、安価でより若い層をターゲットにしたクーペでした。
スタイリングは、ワイド&ローのダイナミックなファストバックとノッチバックをミックスさせたコンパクトな2ドアクーペ。1.4L直4 OHVのシングルキャブ&ツインキャブ仕様のエンジンを搭載して、俊敏な走りが好評でした。
比較的手頃な価格のFTOでしたが、GTOの弟分というイメージが強く、販売は期待通りには伸びず、1975年に後継車「ランサーセレステ」の登場とともに、生産を終了しました。
●MIVECエンジンとスポーツATを組み合わせた新生FTO
ギャランクーペFTOから19年の時を経た1994年のこの日、「FTO」の名が復活しました。1990年に復活した4WDスポーツの「GTO」に続いて、弟分のFTOも復活を果たしたのです。
新型FTOは、曲線基調でワイド&ローの典型的なクーペスタイルで、プロジェクターランプを組み込んだヘッドライトや楕円グリル、流れるようなサイドエアダム、リアスポイラーなどを採用。内装も、ボリューム感あふれるインパネやグリップにディンプル加工を施した3本スポークのステアリング、ハイバックススポーツシートなど、随所にスポーティさが演出されました。
パワートレインは、1.8L直4 SOHCエンジンおよび2.0L V6 SOHCエンジンとそのMIVEC(可変動弁機構)エンジンに、国産車初のマニュアルモード付AT(INVECS-II 4速スポーツAT)が組み合わされました。
FTOは、車両価格164万~251.5万円で比較的安価なスポーツモデルとして堅調な販売を続けました。しかし、1990年代後半に入るとRV市場が縮小して三菱の業績は大きく悪化。FTOは車種削減対象になってしまい、2000年に生産を終了しました。ちなみに、当時の大卒の初任給は、19.1万円(現在は約23万円)程度でした。
●兄貴分GTOとの違い
FTOの4年前、1990年にデビューした兄貴分GTOとFTOのスペックと性能を簡単に比較してみました。GTOのボディサイズ、出力、価格が大きく上回っているのが分かります。
・車両サイズ(車高/車幅/車高)
GTO(3ナンバー):4555/1840/1285mm
FTO(5ナンバー):4320/1735/1300mm
・エンジン仕様
GTO:3.0L V6 DOHC&V6ツインターボ
FTO:1.8L直4 DOHC&2.0L V6 MIVEC
・ハイスペック仕様の最高出力/最大トルク
GTO:280PS/42.5kgm(3L V6 ツインターボ)
FTO:200PS/20.4kgm(2L V6 MIVEC)
・駆動方式
GTO:4WD
FTO:FF
・車両価格
GTO:299.1万~432.3万円
FTO:164.0万~251.5万円
FTOはGTO復活から4年後、よりコンパクトでしかも手に入れやすい価格で登場しました。復活の新鮮味から言えばGTOほどの存在感は薄れていたかもしれません。それでも兄弟車ならではの、それぞれの個性は引き立っていました。しかし当時三菱は経営不振の流れの中にあり、残念ながら車種削減対象に追われてしまったのです。今では手に入らないお手頃なスポーツ車でしたね。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。
(Mr.ソラン)