運転士不足で運休する前に松山名物の「坊ちゃん列車」に乗ってみよう!

■路面電車と「坊ちゃん列車」は免許が違う

愛媛県松山市を中心に営業している伊予鉄道が11月1日に郡中線・松山市内線のダイヤ改正を実施。運転士不足を理由に減便します。同時に市内を運行している「坊ちゃん列車」を11月3日から当面の間運休することが発表されました。

11月3日から運休することが発表された「坊ちゃん列車」
11月3日から運休することが発表された「坊ちゃん列車」

「坊ちゃん列車」は2001年から松山市内線の観光列車として運行してきました。伊予鉄道の黎明期に運行し、夏目漱石の小説「坊つちゃん」にも登場した初代「坊ちゃん列車」をモチーフとしています。なお初代「坊ちゃん列車」は鉄道線を運行していた列車。当時の機関車はレプリカの客車とともに伊予鉄道高浜線梅津寺駅前の梅津寺公園で保存されています。

梅津寺公園で保存されている初代「坊ちゃん列車」。客車はレプリカ
梅津寺公園で保存されている初代「坊ちゃん列車」。客車はレプリカ

現行の「坊ちゃん列車」は鉄道線ではなく路面電車が走る市内線を運行。機関車もSLではなく、SLの形をしたディーゼル機関車を使用したSL風列車です。

「坊ちゃん列車」は2編成在籍しています。2001年10月12日から運行している第1編成は1号機関車(D1形)とハ1形客車ハ-1+ハ-2の3両編成です。

2001年10月12日から運行している第1編成
2001年10月12日から運行している第1編成

機関車、客車ともに伊予鉄道開業時の明治21年に登場し、「坊つちゃん」で「マッチ箱のような汽車」と表現された初代坊ちゃん列車を再現したものです。

2002年8月8日からはD11形14号機関車とハ31形客車からなる第2編成の運行も開始。こちらは明治41年製のSL14号機関車と明治44年製のハ31形がモデルとなっています。

2002年8月8日に導入した第2編成。客車は中型車体のハ31形1両です
2002年8月8日に導入した第2編成。客車は中型車体のハ31形1両です

機関車はSLではなくディーゼル機関車ですが、外観はもとよりSLを特徴付けているドラフト音を車外スピーカーで鳴らすほか、水蒸気で煙を再現するなど、SL列車の雰囲気を再現しています。

「坊ちゃん列車」が運休する理由について伊予鉄道は運転士不足に対応するためとしています。つまり「坊ちゃん列車」を運転することができる運転士が不足しているのではないかと思われます。松山市内線の路面電車の運転士は乙種電気車運転免許を取得していますが、この免許では「坊ちゃん列車」をけん引するディーゼル機関車を運転することができず、乙種内燃車運転免許の取得が必要です。

「坊ちゃん列車」と路面電車では必要な免許が異なります
「坊ちゃん列車」と路面電車では必要な免許が異なります

路面電車と違って「坊ちゃん列車」は運行日や運転本数が限定されるので、乙種内燃車運転免許を取得している運転士は少ないと考えられます。また、運転士不足により路面電車が減便される状況下では「坊ちゃん列車」の運転士の確保も一層難しくなっているものと思われます。


●見どころが多い「坊ちゃん列車」

運休前に「坊ちゃん列車」に乗れるチャンスは10月21・22・28・29日。「坊ちゃん列車」は路面電車と同じ線路を走るSL風列車という魅力以外にも見どころがあるので紹介したいと思います。

「坊ちゃん列車」は1日8便運行。伊予鉄のターミナルである松山市駅と道後温泉を結ぶ6便のほか、JR松山駅前を通る2便が設定されています。

道後温泉9時19分→松山市駅9時39分
松山市駅10時4分→道後温泉10時24分
道後温泉10時48分→JR松山駅前11時13分→古町11時17分
古町11時47分→JR松山駅前→11時56分→道後温泉12時21分
道後温泉13時19分→松山市駅13時39分
松山市駅14時4分→道後温泉14時24分
道後温泉14時59分→松山市駅15時19分
松山市駅15時44分→道後温泉16時4分

乗車可能な電停は始発電停およびJR松山駅前、大街道。また、南堀端・上一万では降車のみ可能です。

料金は大人1300円、小児650円。ただし「みきゃんアプリ」決済だと100円引きとなります。また、「坊ちゃん列車」の乗車券でいよてつ髙島屋の大観覧車「くるりん」を利用することができます。

終点となる道後温泉、松山市駅、古町では機関車の付け替えと方向転換を行っています。しかし、伊予鉄道には転車台がないので、機関車の下部に装備したジャッキで車体を浮かせて、人力で方向転換しています。客車の入換作業もなんと人力。これは他ではなかなか見られないシーンです。

松山市駅での機関車の方向転換シーン
松山市駅での機関車の方向転換シーン
客車も人力で推して入換作業をします
客車も人力で推して入換作業をします
道後温泉駅前の留置線に展示されている「坊ちゃん列車」
道後温泉駅前の留置線に展示されている「坊ちゃん列車」

道後温泉駅には専用の留置線があり、列車が折り返す合間や夜間に「坊ちゃん列車」を展示。記念撮影スポットとなっています。

「坊ちゃん列車ミュージアム」に展示されている1号機関車のレプリカ(伊予鉄道のホームページより)
「坊ちゃん列車ミュージアム」に展示されている1号機関車のレプリカ(伊予鉄道のホームページより)

松山市駅の近くにある伊予鉄グループ本社ビルの1階には「坊ちゃん列車ミュージアム」があり、ここには1号機関車の実物大レプリカが展示されているほか、貴重な資料が展示されています。開館時間は7時〜21時。入場料金は無料です。

子規堂に保存されている「坊ちゃん列車」の客車
子規堂に保存されている「坊ちゃん列車」の客車

また、松山市駅の近くにある子規堂(正岡子規の記念堂)にも「坊ちゃん列車」の客車が保存されています。

松山と言えば道後温泉と松山城など観光資源も豊富。観光ついでに運休前の「坊ちゃん列車」に乗っておくのも良いかと思います。

(ぬまっち)

この記事の著者

ぬまっち(松沼 猛) 近影

ぬまっち(松沼 猛)

1968年生まれ1993~2013年まで三栄書房に在籍し、自動車誌、二輪誌、モータースポーツ誌、鉄道誌に関わる。2013年に独立。現在は編集プロダクション、ATCの代表取締役。子ども向け鉄道誌鉄おも!の編集長を務める傍ら、自動車誌、バイク誌、鉄道誌、WEB媒体に寄稿している。
過去に編集長を務めた雑誌はレーシングオン、WRCプラス、No.1カーガイド、鉄道のテクノロジー、レイル・マガジン。4駆ターボをこよなく愛し、ランエボII、ランエボVを乗り継いで、現在はBL5レガシィB4 GTスペックB(走行18万km!)で各地に出没しています。
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