人が乗って階段も移動できる、スズキの次世代四脚モビリティ「MOQBA」などを世界初公開【ジャパンモビリティショー2023】

■次世代モビリティ分野に長けたスズキの挑戦

●車輪と4つの脚を備えた次世代四脚モビリティ「MOQBA」

スズキの多彩な出展メニューのうち、四輪、二輪と同じか、来場者によっては大きな注目を集めそうなのが、次世代モビリティ分野です。スズキは、お年寄りなどに向けて「セニアカー」を販売してきました。街中にすっかり溶け込んだ定番のモビリティといえます。誰もが自由に移動できるという点で、長年の実績を積み重ねてきました。

車輪と4つの脚を備えた次世代四脚モビリティの「MOQBA」
車輪と4つの脚を備えた次世代四脚モビリティの「MOQBA」

ワールドプレミアされる次世代四脚モビリティの「MOQBA」は、車を使わない人(運転できない人など)と社会の困りごとを解決するべく開発されているコンセプトモデル。

人が乗って階段も移動できるという
人が乗って階段も移動できるという

同コンセプトモデルは、スズキの横浜研究所で企画・開発されているそうです。筆者も、時々、広報車両を拝借しに出かけることもあります。かつては、プレス向けの事前撮影会や説明会などでも何度も訪れたことがあります。

同研究所の周囲は、アップダウンや階段、段差なども多く、こうした地域から次世代四脚モビリティ「MOQBA」が発想されたのがよく理解できる気がします。

車輪と4つの脚を備えた次世代四脚モビリティの「MOQBA」
車輪と4つの脚を備えた次世代四脚モビリティの「MOQBA」

「MOQBA」は、公共交通機関が発達した地域であっても、移動時に段差などが移動の障壁となる人に向けた、車輪と4つの脚を活用した次世代モビリティとして提案されます。平坦な道路などでは車輪によりスムーズに、段差では脚でシームレスに移動できるそう。

ベースシャーシは共通で、車体部を変えることで多彩なバリエーションに対応する
ベースシャーシは共通で、車体部を変えることで多彩なバリエーションに対応する

ベースとなるシャシーとアタッチメントを組み合わせることで、ボディバリエーションを「椅子モード」「立ち乗りモード」「担架モード」 に変えることができます。移動の自由だけではなく、緊急時や災害時などに車両が立ち入りにくい場所でも、人とモノを運ぶモビリティとしても地域社会に貢献できるとしています。

「へ」の字型をしたフレームをベースに、人が乗る部分を水平にし、段差のためのクリアランスと両立。同コンセプトモデルは、試作1号だそうで、車輪と脚が別々の動きをすることで、階段などを移動できるそうです。

●生活と遊びをクロスさせる電動パーソナルモビリティ「SUZU RIDE」「SUZU-CARGO」

電動パーソナルモビリティ「SUZU RIDE」のリヤビュー
電動パーソナルモビリティ「SUZU RIDE」のリヤビュー

電動パーソナルモビリティの「SUZU RIDE」もワールドプレミアになります。新たな車両区分(特定小型原動機付自転車)に分類されるコンセプトカーです。電動キックボードのような手軽さを備えつつ、転倒しにくく、四輪で安定した走行が可能な1人乗りの電動モビリティ。

電動パーソナルモビリティ「SUZU RIDE」の外観
電動パーソナルモビリティ「SUZU RIDE」の外観

特定小型原動機付自転車は、20km/h以下、定格出力0.6kW以下、長さ1.9m以下、幅0.6m以下と定められていて、街中で最近見かける電動キックボードの中にも特定小型原動機付自転車に位置づけられるモデルがあります。なお、特定小型原動機付自転車は、自転車と同じく、ヘルメットの着用は努力義務となっています。

電動パーソナルモビリティ「SUZU RIDE」のイメージ
電動パーソナルモビリティ「SUZU RIDE」のイメージ

「SUZU RIDE」は、16歳の高校生から「セニアカー」に抵抗がある高齢者までをターゲットにし、日常の買い物をはじめとした毎日の足として使用が想定されています。後方に荷台を備え、フロアにも荷物を固定できます。

■「SUZU RIDE」主要諸元(参考値)
●サイズ:全長1300×全幅600×全高1000mm(ミラー含まず)
●荷台ボックス:幅565×奥行き450×高さ300mm
●荷台容量:約110L

電動パーソナルモビリティ「SUZU-CARGO」のリヤビュー
電動パーソナルモビリティ「SUZU-CARGO」のリヤビュー

もう1タイプの「SUZU-CARGO」は、マルチユースに対応するため大きな荷台を備え、遊びや仕事をもっと楽しくする移動をもたらすモデルとして提案されます。

電動パーソナルモビリティ「SUZU-CARGO」のイメージ
電動パーソナルモビリティ「SUZU-CARGO」のイメージ

毎日の買い物などだけでなく、キャンプ場で駐車場からサイトまでの荷物の運搬に使ったり、仕事の現場に荷物を満載したり、農業ニーズにも応えるなど、多彩な使い方ができそう。ロングホイールベース化でバッテリー容量を拡大させ、より遠くまで出かけることも想定されています。

■「SUZU CARGO」主要諸元(参考値)
●サイズ:全長1900×全幅600×全高1000mm(ミラー含まず)
●荷台:幅565×奥行き1050×高さ300mm
●荷台:約175L

●「セニアカー」とは違う新たな電動モビリティ「SUZUKI GO!」

「G」をデザインモチーフにした新たな電動モビリティ「SUZUKI GO!」
「G」をデザインモチーフにした新たな電動モビリティ「SUZUKI GO!」

こちらも世界初公開となる「SUZUKI GO!」は、アクティブで若々しい気持ちを持つミドルシニア層に向けた新しいモビリティ。「G」をモチーフとしたデザインが目を惹きます。四隅に配置された大径タイヤと台形シルエットにより安定感を抱かせるとともに、フレームを乗員の身体を囲う「ラップアラウンド・フレーム」形状としています。運転中の乗員の心理的な安心感にもつながるデザインが採用されています。

新たな電動モビリティ「SUZUKI GO!」のリヤまわり
新たな電動モビリティ「SUZUKI GO!」のリヤまわり

ジョイスティックによる簡単な操作、障害物との接近時に自動減速する安全機能(前後に超音波センサーを合計8つ配置)、シート下の大容量収納スペースなどを備えています。

スズキの「セニアカー」を含めたいわゆるシニアカーや電動車いすは、6km/h以下と定められていて、「SUZUKI GO!」も同様。歩道走行も可能になります。

新たな電動モビリティ「SUZUKI GO!」のカラーバリエーション
新たな電動モビリティ「SUZUKI GO!」のカラーバリエーション

■「SUZUKI GO!」主要諸元(参考値)
●サイズ:全長1200×全幅700×全高945mm

そのほか、「セニアカー」の一部改良モデルも参考出品されます。車両前方の障害物を検知する超音波センサーが装着され、誤って坂道でクラッチハンドルを操作しても、空走せずに速度を抑制できるクラッチを用意。さらに、照射範囲と明るさを向上するLED ヘッドライトが採用されています。

(塚田 勝弘)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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