ヤマハのトップチーム「YARTヤマハ」が世界耐久選手権で2023年の王者に。名車「YZF-R1」の25周年記念カラーで大奮闘!

■鈴鹿8耐の雪辱を果たし2度目の王者に

ヤマハ発動機(以下、ヤマハ)のトップチームとして、2023年の鈴鹿8耐(鈴鹿8時間耐久ロードレース)に参戦し、大きな注目を集めた「Yamalube YART Yamaha EWC Official Team(以下、YARTヤマハ)」。

EWCの2023年シーズンで見事に年間チャンピオンを獲得したYARTヤマハのライダーたち
EWCの2023年シーズンで見事に年間チャンピオンを獲得したYARTヤマハのライダーたち

今回の鈴鹿8耐では、予選2番手からスタートし、序盤はトップ争いを繰り広げていたのですが、マシンのテクニカルトラブルにより最初の2時間で最後尾まで後退。

灼熱の鈴鹿サーキットで、ライダーがバイクを押してピットに戻り、その後は粘り強い走りで総合22位、クラス18位でゴール。欧州の耐久スペシャリストとしての意地を見せてくれたことは記憶に新しいところです。

そんなYARTヤマハが、世界最高峰の耐久レース「EWC(世界耐久選手権)」の2023年シーズンで、見事に年間チャンピオンを獲得。2023年9月14日〜17日、フランスで行われた最終戦「ボルドール24時間耐久レース」で4位に入り、2年ぶりの王者に輝きました。

しかも、このレースでYARTヤマハは、ヤマハが欧州で発表した「YZF-R1」の25周年記念モデルと同じカラーのマシンで参戦。名車の記念すべき年に花を添える結果となりました。

●順調な滑り出しが鈴鹿8耐で一転

EWCは、世界中からトップライダーやチームが集結し、8時間や24時間など、長丁場で行われる世界最高峰の耐久レースです。

ル・マンやボルドールといった歴史がある24時間耐久レースのほか、鈴鹿8耐もスケジュールに組み込まれており、2023年大会もEWCの第3戦として併催。YARTヤマハをはじめ、数多くのEWCチームが参戦し、本場の耐久スペシャリストらしい走りを披露してくれました。

鈴鹿8耐でのYARTヤマハ(#7)。序盤はホンダ・ワークスなどと激しい首位争いを展開
鈴鹿8耐でのYARTヤマハ(#7)。序盤はホンダ・ワークスなどと激しい首位争いを展開

そんなEWCの2023年シーズンは、全4戦で開催。フル参戦するYARTヤマハは、第1戦ル・マン(フランス)大会で2位を獲得。第2戦スパ(ベルギー)大会では、最初にチャンピオンを獲得した2009シーズン以来、チーム初となる24時間耐久レースの優勝を果たし、ポイントランキング1位になるという順調な滑り出しをみせます。

鈴鹿8耐では惜しくも総合22位
鈴鹿8耐では惜しくも総合22位

ところが、続く第3戦、2023年8月6日に開催された鈴鹿8耐では、前述の通り、予選2番手で優勝候補として注目されたものの、マシンのテクニカルトラブルにより、最初の2時間で最後尾まで後退。その後、なんとか挽回したものの、総合22位、クラス18位でゴールし、トップの「F.C.C. TSR Honda France」と14ポイント差の2位に。タイトル争いは最終戦の結果次第という状態となりました。

●全力で攻めた最終戦で逆転

2年ぶりの年間チャンピオンを獲得するためには、「全力で攻めなければならない」。

チームの誰もがそう理解していたという最終戦で、ライダーはK・ハニカ選手、N・カネパ選手、M・フリッツ選手の3名。加えて、リザーブ・ライダーとしてR・ムルハウザー選手も参加しました。

M・フリッツ選手の走り
M・フリッツ選手の走り

決勝は、予選4番手からスタート。当日は、数時間前から激しい嵐がコースを襲い、路面は濡れた状態から乾き始める難しいコンディションだったそうで、そんな中、YARTヤマハは、なんとスリックタイヤを選択。

タイトル争いを展開する他のチームが、濡れた路面でも比較的走りやすいインターミディエートのタイヤを選択したのに対し、ギャンブルに出ます。

そして、序盤は、そのギャンブルが功を奏し、コースが徐々にドライとなったことで、序盤を1番手でリードします。ところが、途中で、セーフティカーが出動。耐久レースでは、大きなクラッシュなどでコース上が危険な場合、マーシャルがそのリカバリーをする間にセーフティカーが入ってライダーたちを先導するのですが、それによりYARTヤマハが築いた序盤のリードはほぼゼロに。そして、その後は、YARTヤマハを含む上位3チームの熱戦へと変化します。

ライダー交代もスピーディ
ライダー交代もスピーディ

夜間走行中などに、マシンのトラブルなどがありながらも、なんとか修復し、順調に周回を重ねるYARTヤマハ。24時間という長丁場で冷静にレース運びを行い、705周を走り切って見事に4位でゴールを果たします。

しかも、それまでランキングトップだったF.C.C. TSR Honda Franceはテクニカルトラブルでリタイアしたことで、YARTヤマハがポイントを逆転。合計181ポイントを獲得し、ランキング2位に20ポイント差をつけて、チーム2度目となるEWC年間チャンピオンに輝きました。

●名車の記念すべき年に花を飾る

ちなみに、今回、YARTヤマハが投入したマシンは、前述の通り、カラーリングも注目を集めました。

ベースモデルは、ヤマハの1000ccスーパースポーツ「YZF-R1」であることは鈴鹿8耐と同じですが、欧州でヤマハが発表した限定モデル「R1 GYTR PRO 25th Anniversary Limited Edition」と同じカラーを採用していたのです。

YZF-R125周年記念カラーのマシンとYARTヤマハのライダーたち
YZF-R125周年記念カラーのマシンとYARTヤマハのライダーたち

これは、ヤマハのフラグシップ、YZF-R1が誕生して25周年を記念した特別仕様車で、25台のみが販売されるという超レアなモデルです。

ちなみに、この限定モデルの名称にある最初の「R1」は、YZF-R1を略したのではなく、欧州のモデル名がR1だから。つまり正式モデル名がそのまま付いているので、念のため。

そんなスペシャルなカラーで参戦し、見事に年間王者を手にしたのが、YARTヤマハ。長年、ストリートではもちろん、世界中で開催された数多くのレースでも高い実績を誇ってきたYZF-R1の記念すべき年に、まさに極上の花を飾ったといえますね。

(文:平塚 直樹

この記事の著者

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平塚 直樹

自動車系の出版社3社を渡り歩き、流れ流れて今に至る「漂流」系フリーライター。実は、クリッカー運営母体の三栄にも在籍経験があり、10年前のクリッカー「創刊」時は、ちょっとエロい(?)カスタムカー雑誌の編集長をやっておりました。
現在は、WEBメディアをメインに紙媒体を少々、車選びやお役立ち情報、自動運転などの最新テクノロジーなどを中心に執筆しています。元々好きなバイクや最近気になるドローンなどにも進出中!
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