トヨタのライバルになるか? 最新のスバル「WRX」が全日本ラリーに帰ってきた!【週刊クルマのミライ】

■最上位クラス「JN-1」にSUBARU WRX S4が参戦とは?

ラリー仕様に改造されたWRX S4が初の実戦デビュー。新井敏弘/保井隆宏組が4位に入った。
ラリー仕様に改造されたWRX S4が初の実戦デビュー。新井敏弘/保井隆宏組が4位に入った。

2023年9月8日〜10日、今シーズンの全日本ラリー選手権第7戦となる『RALLY HOKKAIDO(ラリー北海道)』が開催されました。

残念ながら筆者は現地で取材をすることは叶わなかったのですが、SUBARUの現行ラインナップにおけるスポーツフラッグシップモデルであるWRX S4が参戦したというのですから、多くのスバリストにとって大注目のイベントになったことは確実です。

ラリー北海道で、最高峰クラスである「JN-1」に参戦したWRX S4は、ラリーマシンとして作られています。具体的には、JAF公認の車両規定である「JP4」に則った仕様となっています。

JP4車両というのは、国際ラリーの共通規格といえる「Rally2」レギュレーションに準じて製作された公認取得前の車両といえます。

全日本ラリーのJN-1クラスというのは、Rally2をはじめとした国際規定のラリー専用マシンが中心となるクラス。WRX S4が、このクラスに参戦するのは当然です。

●エンジンはFA24、市販車由来の素性のいいボディ

今シーズンから導入された車両区分「JP4」規定に合あわせた仕様。エンジンはFA24型を積んでいる。
今シーズンから導入された車両区分「JP4」規定に合あわせた仕様。エンジンはFA24型を積んでいる。

ちなみに、GRヤリスやWRX STI(旧型)など、ターボ4WDの市販車を改造したラリーマシンで競うのはJN-2クラス。その下にはJN-3~JN-6クラスがあり、全6クラスで全日本ラリーは競われています。

デビュー戦となるラリー北海道での、WRX S4の戦績はJN-1クラス4位というもの。同クラスへの参戦は9台、完走したのは5台というサバイバルラリーをしっかり生き残ったのは、超ベテランである新井敏弘/保井隆宏組、流石といったところでしょうか。

『世界のアライ』という呼び名でお馴染みの新井敏弘選手は、デビュー戦のWRX S4について「FA24エンジンはトルクがあって、6速に入ってからの伸びをすごく感じました。SGP(スバルグローバルプラットフォーム)でボディがしっかりしていますし、とても安定感を感じました」とデビュー戦を振り返っています。

●ラリー北海道を制したのはWRC最多参戦選手

優勝は、スポット参戦したTGR-WRT代表のヤリ‐マティ・ラトバラ/ユホ・ハンニネン組。マシンはGR YARIS JP4-RALLY2。
優勝は、スポット参戦したTGR-WRT代表のヤリ‐マティ・ラトバラ/ユホ・ハンニネン組。マシンはGR YARIS JP4-RALLY2。

ラリー北海道で優勝したのは、トヨタの「GR YARIS JP4-RALLY2」でした。そのコクピットに収まっていたのは、ヤリ-マティ・ラトバラ/ユホ・ハンニネン組です。

熱心なラリーファンならずとも、その名前を聞き覚えのある人も多いハズです。TGR-WRT(Toyota Gazoo Racing World Rally Team)のヤリ-マティ・ラトバラ代表が、現役選手に戻ってスポット参戦、見事に優勝を遂げたというわけです。

ラトバラさんは、WRC(世界ラリー選手権)の最多出場記録を持っていることでも知られる名選手です。現役を離れているとはいえ、世界レベルの走りを北海道のファンは堪能することができたのでしょう。

なによりトヨタとスバルのRally2規定を意識して作られた車両が、同じステージで戦うシーンを初めて見ることができたというのは、うらやましい限りです。

冒頭で触れたRally2マシンというのは競技車両としての市販を前提にしています。そして、国内外のラリーにおいて共通規格として広まっています。

もしかすると、将来的にはトヨタとスバルのRally2マシンが世界で競い合うことになるかもしれません。大いに期待したいと思います。

自動車コラムニスト・山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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