トヨタ新型「アルファード」「ヴェルファイア」に積まれる3つのパワートレーンを乗り比べ。走りを楽しむなら?【新型アル/ヴェル徹底解剖】

■徹底したボディ剛性の強化で、乗り心地や静粛性、ハンドリングを向上

新型アルファード/ヴェルファイアの走りは、先代よりも乗り心地、静粛性、そしてハンドリングも格段に高まり、トヨタが目指した高級セダンに匹敵する質感を得ています。

ヴェルファイア「エグゼクティブラウンジ」の2.5Lハイブリッド(FF)の走り
ヴェルファイア「エグゼクティブラウンジ」の2.5Lハイブリッド(FF)の走り

高級セダン並の乗り心地を目指し、ミニバン向けに最適化された「TNGA」プラットフォームの採用を筆頭に、高級オープンカーの構造を調べた結果、床下のV字ブレースの採用に到達。

さらに、サイドのロッカーストレート構造の採用、B、C、Dの各ピラーを環状骨格にするなどして、ねじり剛性は先代に比し50%もの向上が図られています。

構造用接着剤を塗り分けている
構造用接着剤を塗り分けている

そのほか、構造用接着剤の使用量を約5倍に増やしただけでなく、シートに高減衰タイプを使い、後方の高剛性が必要な部分に高剛性タイプを採用するなどの使い分けも、乗り心地の良さに直結しているはずです。

アルファードの「エグゼクティブラウンジ」、ヴェルファイアに標準装備される周波数感応型ショックアブソーバーも効いていて、低速域では微振動を抑え、高速域ではコーナーでもふらつかないのも印象的。

剛性の強化が図られた新型アルファード/ヴェルファイア
剛性の強化が図られた新型アルファード/ヴェルファイア

なお、アルファードの「エグゼクティブラウンジ」が標準化する17インチタイヤはソフトな当たりで、18インチを履く「Z」も適度なソリッド感を伴いながらも良好そのもの。

標準サイズが19インチになるヴェルファイアでも、乗り心地は想像していたよりも良好でした。

ヴェルファイア専用となるフロントパフォーマンスブレースの追加により剛性を高め、19インチタイヤを履きこなす開発も行われています。17インチタイヤと比べると、若干路面からの当たりは強くなるものの、振動が少ないフラットライド感は損なわれていません。

アルファードの「エグゼクティブラウンジ」、ヴェルファイアに標準装備される周波数感応型ショックアブソーバー
アルファードの「エグゼクティブラウンジ」、ヴェルファイアに標準装備される周波数感応型ショックアブソーバー

なお、アルファードの17インチ、18インチ、ヴェルファイアの19インチの標準装着タイヤ(サイズ)を基準にタイヤ開発が行われていますが、それ以外のサイズ(オプション設定)でも乗り心地や静粛性の確認はもちろん入念にされているとのこと。

静粛性の高さも新型の美点です。大きなキャビンと大開口を備えるミニバンは、静粛性の面でも不利ですが、50km/hくらいの速度域でのドラミングやこもり音もほとんど伝わってきません。

ヴェルファイア「エグゼクティブラウンジ」の2.5Lハイブリッド(FF)の走り
ヴェルファイア「エグゼクティブラウンジ」の2.5Lハイブリッド(FF)の走り

とくに静かなのは、やはりハイブリッド仕様で、エンジンが再始動すると音は若干伝わってきますが、運転席でも振動は感じられません。一方のガソリンエンジン車であっても音、振動の遮断は高いレベルで実現していて、しかも吸音材に頼ったような感覚でないのも好感が持てます。

一部の超高級車は、ドアを閉めると吸音材などにより耳が詰まるような感覚を覚えることもありますが、そうした不快感は、今回の試乗では抱くことはありませんでした。


●主力は2.5Lハイブリッド

アルファード「エグゼクティブラウンジ」の2.5Lハイブリッド(E-Four)の走る
アルファード「エグゼクティブラウンジ」の2.5Lハイブリッド(E-Four)の走る

パワートレーンの主力を担うのは、アルファード、ヴェルファイア共通の2.5Lハイブリッドになります。2.5Lの直列4気筒「A25A-FXS」型は、最新世代である「TNGA」向けダイナミックフォースエンジン。自慢の低燃費をはじめ、低速域からレスポンスに優れ、高速域の伸びも十分に備わっています。

2.5Lハイブリッドのエンジン
2.5Lハイブリッドのエンジン

同じハイブリッドシステムを積むレクサスNXと比べると、エンジンの最高出力は同値、最大トルクは7Nm下回りますが、134kW/270Nmのフロントモーターがいい仕事をしていて、重さを感じさせず、トルク、パワーともに十分です。

このスムーズで力強い加速、17km/L台という省燃費性能の高さも含めると、新型アルファード、ヴェルファイアらしい魅力を最も享受できるのは、2.5Lハイブリッド車でしょう。

2.5L NAガソリンエンジ
2.5L NAガソリンエンジ

アルファードにのみ設定される2.5L NAのガソリンエンジンは、先代からのキャリオーバー。ハイブリッド車よりも170kg軽いこともあり、タウンユースであればモアパワーを抱かせるシーンはありませんでした。

なお、この「2AR-FE」型エンジンは、ミニバンとの相性がいいことから継続採用されたようで、イニシャルコストも含めると狙い目です。

スペックは先代と同様で、最高出力182PS/6000rpm・最大トルク235Nm/4100rpm。WLTCモード燃費10.6km/L(FF)も同じです。新型は車両重量はFFでも2tを超え、4WDだと2.1t台に突入します。

2.5L NAガソリンを積むアルファード「Z(4WD)」の走り
2.5L NAガソリンを積むアルファード「Z(4WD)」の走り

低速域からかなり粘りがあり、街中であれば想像以上に軽快に走るのは先述したとおりです。一方で、ハイブリッド車の「Z」と比べると100kg軽い恩恵は、あまり感じさせませんでした。さらに、低速からモーターアシストが力強いハイブリッド仕様と比較してしまうと、アクセルを踏む量が大きくなり、速く踏むこともあり、エンジンの音や振動は大きめになります。

アルファードの「Z」は、周波数感応型ショックアブソーバーは未設定になりますが、鍛え上げられたボディなどにより、乗り心地や静粛性は良好といえるレベルで、これで十分と納得できる方も多いはず。

ヴェルファイア「Z プレミア(FF)」の走り
ヴェルファイア「Z プレミア(FF)」の走り

今回のヴェルファイアは、エクステリアやバッジの違いだけでなく、走りにも手が入れられています。ヴェルファイア専用の2.4Lガソリンターボが用意されただけでなく、フロントパフォーマンスブレースにより剛性を高め、19インチタイヤを履きこなしています。

電動パワーステアリングやサスペンションの専用チューニングにより、ターボ車は走り出しから軽快感があり、確かな接地感を抱かせながら、車がひとまわり小さくなったような俊敏性まで演出されているように感じられます。

ヴェルファイア「Zプレミア」専用となる「T24A-FTS」型の2.4L直列4気筒ターボは、レクサスNXやRXにすでに搭載されています。駆動方式は、2WDと4WDを設定し、組み合わされるトランスミッションは電子制御8速ATの「Direct Shift-8AT」。

ヴェルファイアの「Z プレミア」が積む2.4Lガソリンターボ
ヴェルファイアの「Z プレミア」が積む2.4Lガソリンターボ

レクサスNXと同様に、最高出力279PS/6000rpm・最大トルク430Nm/1700-3600rpmと分厚いトルクが魅力です。車両重量が2.2tに迫るヴェルファイアでもターボの過給前から確かなトルク感があり、普通に走らせる分にはターボラグもあまり抱かせません。

ヴェルファイアの「Zプレミア」は、ドライバーズミニバンという仕上がりぶり
ヴェルファイアの「Zプレミア」は、ドライバーズミニバンという仕上がりぶり

重量級ボディと純ガソリンエンジンでWLTCモード燃費10.3km/Lを達成しているのも美点といえるでしょう。ヴェルファイアの「Zプレミア」は、ドライバーズミニバンというキャラが立っていて、自らステアリングを握るのなら最もオススメできる仕様になります。

(文 :塚田勝弘/写真:平野 学)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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