■機能も操作感も優れるCX-60の空調/オーディオ性能
今回のユーティリティ編は空調/オーディオに焦点をあてていきます。
前回はシートで記事1本、今回は空調/オーディオ解説で1本・・・おおよそ試乗記事とは思えないことを続けていますが、それもこれも注目ポイントが多いのがCX-60なのです。
というわけでスタート。
●空調/オーディオ
・フルオートエアコン
空調は左右独立温度調整機能付きのフルオート式が、後席用の吹出口も含めて全機種標準装備。
働きは他社のそれと同じなら、「デフロスター」が、「上半身」「上半身+足元」などのモードの中に組み込まれているのも同じでした。
いいかげん気づいてほしいのですが、デフロスターはくもり止めで安全のため、ほかは快適のためなのですから、デフロスターだけは独立させ、他のモードと併用できるようにすべきでしょう。そういうクルマ、海外にはあるよ。
また、デフロスター使用時は設定室温と同じ温度の風が出ますが、ガラスを境に内外で温度差が生じ、冬の暖房時はフロントガラスの内側が、夏の冷房時は外側が、結露してガラス下端がくもります。デフロスター(くもり止め)なのにくもらせちゃあいけない。左右を独立で温度調整できるならもうひと系統加えられるはずで、デフロスターだけは外気温に近似した温度の風を出せるようにしてほしいところです。
スイッチがずらりで、写真で見て使いにくそうと警戒した空調スイッチですが、操作性は良好でした。ひとつひとつのスイッチが小さく、並び方はずらりとしていますが、よく見れば使用頻度の低いものは両脇に並べ、主要スイッチは中央に集約、AUTOや温度調整は上から押す大きめのピアノタッチ式を別建てするなど、よく考えて造られています。
パワーウインドウや電動ミラースイッチと違って、こちらは走行中でも使いやすいものでした。
何よりも、他社に増えている、平面を手ごたえならぬ、指ごたえのないチョンチョンタッチの静電容量式にしなかったのはえらい!
・ステアリングヒーター
ステアリングヒーターは、XDはなし、25S S Packageにオプション、その他すべてに標準装備。
スイッチは空調操作部にあります。温まるのはハンドル輪っか全周ではなく、写真の着色部のみ。一定時間が経過すると自動でOFFになります。
設定しだいで、空調の「AUTO」でステアリングヒーターも連動させるオートモードもあります。
・運転席&助手席シートヒーター/リヤシートヒーター/運転席&助手席シートベンチレーション
シートヒーターは、フロントはXDはなし、25S S Packageにオプション、その他すべてに標準装備。リヤは純XDと、25S、XD、PHEV各シリーズのS Packageを除くすべての機種に標準、ベンチレーションは「Exclusive」がつくすべてのクルマに標準装備(とにかくややこしい!)。
ヒーターもベンチレーションも3段階で、他社同様、押すといきなり「3」から始まり、以降「2」「1」「OFF」を繰り返します。スイッチは、運転席・助手席用は空調操作部に、リヤシートヒーター用はコンソール後端にあります。
自動車のヒーターは、放出された余計なエンジン熱を熱源にしているに過ぎません。
ガソリンエンジンに比べ、熱効率(=与えられたエネルギーを、どれだけロスを抑えて有効に使えるかの率)に優れるというメリットとのトレードオフで、ディーゼルエンジンはなお暖房の効きが悪い(だからディーゼルは同排気量のガソリンエンジンに比べて燃費がいい)というのが通り相場なのです。ですが、最近はガソリンエンジンのほうも熱効率が向上したため、最新型なのにヒーターの効きは低下したというクルマもちらほら・・・。
そんなこともあり、もともとは、北国需要の多い4WDや寒冷地仕様に優先的に与えられていた、暖気完了を待たずとも暖が取れる通電型ヒーターが標準仕様のクルマにも増えてきました。
<換気性能>
毎度おなじみ、換気性能計測結果のお時間です。
といっても、あくまでも筆者の独断と偏見と感覚によるもので、空調設定を「ファンOFF」「上半身送風」「外気導入」にし、80km/h時、100km/h時の外気導入量を、センター吹出口に手を当てて判断するものです。
結果は以下のとおりで、今回はガラスサンルーフの開閉も加えました。
【80km/h時】
ファン風量全7段階のうち、以下それぞれの状態で次の風量に相当。
・全窓閉じ:0.8
・全窓閉じ&サンルーフチルトアップ:1
・運転席窓 30mm開:1.5
・助手席窓 30mm開:1.5
・両席窓 30mm開:1.8
【100km/h時】
ファン風量全7段階のうち、以下それぞれの状態で次の風量に相当。
・全窓閉じ:1
・全窓閉じ&サンルーフチルトアップ:1.9
・運転席窓 30mm開:1.6
・助手席窓 30mm開:1.6
・両席窓 30mm開:2.1
しょう油差しやコーヒー缶を傾ければドボドボ流れるのは反対側から入った空気が液面を押すため、ボールペンを紙上ですべらせればインクが出てくるのは、やはり空気穴があるからです。自動車の換気も同様で、空気が入ってくるから室内気は出ていく=すなわち換気が行われるわけで、この性能が不足すると乗員の呼気でガラスはくもり、眠気をも誘います。
CX-60は窓を閉め切っての内外気の入れ替わりは他社のクルマ並みにはなっています。
・BOSEサウンドシステム(AUDIOPILOT2+Centerpoint2)+12スピーカー
マツダはBOSEオーディオの車載が早かったと記憶していますが、CX-60は12ものスピーカーを持つBOSEオーディオを過半数の機種に標準化。じゃあそれ以外のクルマには安いAMラジオかと思えばそうでもなく、マツダ・ハーモニック・アコースティックス+8スピーカーを搭載。廉価寄り機種でもオーディオは立派です。
BOSEシステムを使いこなすほどオーディオの知識があるわけじゃないし、もろもろの都合から12スピーカーが活きる音楽をかけたわけでもなく、せいぜいAMラジオを聴いていたくらいの筆者。素人目・・・いや、素人耳でもわかるのは、スピーカーの据え付けやデッドニングの徹底&振動の抑制をよほど入念に行っている(であろう)ことでした。
AMの音声すらFMに聴こえるほど音はクリア。本試乗は土日の深夜に行うことが多いのですが、そのときに聴いた「NHKラジオ深夜便」後藤繁榮アンカーのしっとりした声が、なおしっとりしたものになっていました。なるほど、ここまで音がよくなるのなら、マニアは高級オーディオに凝るわけだ。
・ステアリングスイッチ
オーディオ関連のステアリングスイッチはハンドル左スポークに設けられています。
ひとつの面を分割したのではなく、おおよそそれぞれに凹凸や引っ込みを与え、見なくともほぼ指さぐりで操作できる形状になっています。
・360°ビュー・モニター
車庫入れ編で解説していますが、ここではあらためてしおりさん入りでもういちど。
表示画面は多彩で、通常画角ビュー、広角ワイドビュー、通常画角シースルービューの前後に上面視を添えた6種類と、左右サイドを大きく映すサイドビュー1種、計7種の画面があります。
画面に映るしおりさんを車外から見るとこのようになります。
・コマンダースイッチ
どこに載せようか踏ん切りがつかず、結局ここでご紹介。というのも、このスイッチで操作できる項目はオーディオ、ナビ、360°カメラ、カスタマイズなど、多岐に渡っているからです。
中央のダイヤル型コマンダースイッチは、上下左右&回転&押しでの操作。メニュー項目選択、ナビ地図拡大/縮小は回転、画面移動や地図移動は上下左右、決定は押し・・・周囲の4つは左上から反時計まわりにオーディオ、ホーム画面、戻る、ナビ(装着車のみ)のスイッチ・・・このスイッチの使い方は、とにかく先に触りまくり、不明点は取扱説明書で補って覚える、というほうが早いと思いました。
わかりにくかったのはお気に入りボタン「☆」で、てっきりよく聴くラジオorテレビ放送局だけを登録するのかと思ったら、「長押しでそのときに表示されている連絡先や放送局、ナビ地点などを登録できる(取扱説明書より)」もの。したがって、押すとラジオ局に地名、メニュー名など、登録した順にカテゴリーごちゃまぜに表示されました。
音量ノブはまわして音量調整。このノブ自体も左右移動でき、AM/FMやテレビのプリセット選局/自動選局や、曲やビデオファイルの頭出しができます。
短押しのたびに消音、長押しのたびにマツダコネクト自体OFFの画面消しなのは使いづらく、短押しでオーディオON/OFF、マツダコネクトのOFFはめったにしないだろうから、画面操作で行うことにするほうが、ユーザーには感覚的にわかりやすいと思いました。消音とオーディオOFFは違うと思うのですが、現状では地図表示のまま、オーディオを消音ではないOFFにしようとすると画面自体消え、ナビは使えなくなります。
すばらしいのはコマンダースイッチそのものの設置場所で、腕を置いたアームレストの先から手首をだらんと垂らしたその指先で操作できる! そして音量調整を画面のチョンチョンタッチにせず、そのつまみもここに置いたこと。自然な左腕姿勢のまま操作できるのが秀逸で、コマンドスイッチとシフトレバーの間にスペースをうまく作り、ここに空調スイッチをプラスしたらもっとよくなると思いました。
この「リアル試乗」を毎度見ているひとには(いるかなあ?)、マークなりアイコンなりを目で見つけなければならない静電容量のチョンチョンタッチを筆者が嫌っているように見えるかも知れませんが、全否定してはいません。チョンチョンタッチにしていいものといけないものがあるといっているだけで、たとえばナビ操作の多くは画面に直接指を持っていける画面タッチのほうがいいと思っています。
50音入力なんてその最たるもので、ジョイスティックやダイヤル操作でやるとなるとイライラします。逆に、連続的操作となる音量調整やナビ地図の拡大/縮小、空調操作の温度/風量調整はダイヤルまわしのほうが望ましいし、空調モード選択は指ごたえのある押しボタンがいいに決まっている・・・目的によって操作方法も適材適所があると思うのです。
ただ、コマンドスイッチの位置はすばらしいのですが、ナビ、オーディオ、ビュー切り替え・・・すべての操作をこのスイッチだけに依存するのは無理があると思いました。
画面は遠い位置にあるものの、手が届かないわけじゃないのだから、やはり画面タッチ機能を許してもいいのではないでしょうか。
指紋などで汚れるから嫌だというひとがいますが、汚れたら拭けばいいだけの話だし、それすら嫌ならコマンドスイッチ操作に徹すればいい。要は使いやすいほうをユーザーが選べるようにしてほしいわけで、コマンドスイッチと画面タッチの併用で、マツダコネクトのインターフェースが完成するのだと思います。
実は、丸いコマンドダイヤルの上面はタッチパッドにもなっていて、設定ONの指移動でカーソルを動かすこともできますが、やはり使いにくく、無理がありました。
しおりさんはどうかと、試しに「東京タワー」を検索してもらいましたが、ノブ全体を上下左右移動で選んだときの使いにくさを解消するものにはなっていません。次の文字にカーソルを持っていこうとすれば行き過ぎたり、間違えた文字を消そうとするためには、端っこの「×」まで飛ばなければならなかったり・・・どうにももどかしさがつきまとい、指のタッチのダイレクト操作にはとうていかなわない。
でも、この方がいいというひとだっているかも知れず、ここに画面タッチが加われば、3通りのインターフェースを持つことになり、多くのユーザーをカバーできることになるでしょう。わざわざなくす必要はなく、選択肢が増えればいいのです。
というわけで、次回につづきます。
(文・写真:山口尚志(身長176cm) モデル:星沢しおり(身長170cm))
【試乗車主要諸元】
■マツダCX-60 XD-HYBRID Exclusive Modern〔3CA-KH3R3P型・2022(令和4)年8月型・4WD・8AT・ロジウムホワイトプレミアムメタリック〕
★メーカーオプション
・ドライバー・パーソナライゼーション・システムパッケージ 5万5000円(消費税込み)
・パノラマサンルーフ 12万1000円(同)
・ロジウムホワイトプレミアムメタリック特別塗装色 5万5000円(同)
●全長×全幅×全高:4740×1890×1685mm ●ホイールベース:2870mm ●トレッド 前/後:1640/1645mm ●最低地上高:180mm ●車両重量:1940kg ●乗車定員:5名 ●最小回転半径:5.4m ●タイヤサイズ:235/50R20 ●エンジン:T3-VPTH型(水冷直列6気筒DOHC24バルブ直噴ターボ) ●総排気量:3283cc ●圧縮比:15.2 ●最高出力:254ps/3750rpm ●最大トルク:56.1kgm/1500~2400rpm ●燃料供給装置:電子式(コモンレール) ●燃料タンク容量:58L(軽油) ●モーター:MR型 ●最高出力:16.3ps/900rpm ●最大トルク:15.6kgm/200rpm ●動力用電池(個数/容量):リチウムイオン電池 ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):21.0/18.0/21.2/22.4km/L ●JC08燃料消費率:- ●サスペンション 前/後:ダブルウィッシュボーン/マルチリンク ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク ●車両本体価格:505万4500円(消費税込み・除くメーカーオプション)