「あおり運転」と思われない正しい車間距離の目安とは? 事故件数No.1「追突事故」の原因は「車間距離不保持違反」

■適切な車間距離の目安と取り方とは

車間距離を極端に詰める「煽り運転」は社会問題にもなっている
車間距離を極端に詰める「煽り運転」は社会問題にもなっている

警察庁によると、2020年の交通事故でもっとも多かったのは追突事故でした。交通事故に占める割合はなんと30.9%。交通事故のおよそ10件のうち3件が追突事故によるものなのです。

そして、追突事故の原因の1つが車間距離の不保持です。

車間距離の不保持とは、前のクルマとの間に適切な距離が確保できていないことを指します。前方を走るクルマが急ブレーキをかけたとき、車間距離が近すぎると追突してしまい事故が起きてしまいます。

そして、車間距離の不保持は事故の危険性があるだけでなく、道路交通法違反に該当してしまうおそれがあるのをご存じでしょうか。

●一般道と高速道路で罰則が異なる「車間距離不保持違反」

一般道よりスピードを出す高速道路での「煽り運転」はかなり危険
一般道よりスピードを出す高速道路での「煽り運転」はかなり危険

車間距離の保持について、道路交通法第26条では次のように書かれています。

「直前のクルマが急に停止したとしても、追突を避けられる距離を保って走行しなければならない」

一般道で車間距離不保持違反をした場合、違反点数は1点、反則金は普通車で6000円です。交通違反の中では軽い部類とはいえ、大事故の危険性もあり、うっかりでは済みません。また、高速道路ではその危険度が増すことから、高速自動車国道等車間距離不保持違反となり、違反点数は2点、反則金は9000円が科されます。

そして、車間距離の不保持でさらに気を付けたいのは、あおり運転です。2020年6月30日「危険運転妨害罪」が創設され、あおり運転の処分が厳格化されました。「危険運転妨害罪」とは、他のクルマを妨害する目的で、車間距離不保持違反をしたり、急ブレーキ禁止違反などの危険行為を行うことです。

一般道においては、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。違反点数は25点、欠格期間2年の免許取り消しです。高速道路での停車など、著しく危険な状況を生じさせてしまった場合は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。違反点数は35点となり、欠格期間3年の免許取り消しになります。

前方のクルマを妨害するつもりがなくても、車間距離を詰めすぎて、相手に恐怖を感じさせてもいけないのです。コッチにそんな気はないのに、相手が恐怖と感じたら、それはもうあおり運転となってしまうのです。警察に通報するなどの手段をとる可能性もゼロではありません。一般道でも高速道路でも、適切な車間距離を確保して運転しなければならないのです。

●適切な車間距離の取り方

車間時間は2秒以上が理想とされている
車間時間は2秒以上が理想とされている

車間距離不保持違反にならないためには、適切な車間距離を知っておく必要があります。法令を基に考えると「前のクルマが急ブレーキしたときに追突しない距離」が適切な車間距離です。数値で示されているわけではないので、停止距離や車間時間を参考に判断します。

停止距離とは、危険を察知してからブレーキをかけて、クルマが停止するまでの距離のことで、ドライバーがブレーキを踏むまでの空走距離と、ブレーキが効きだして車両が停止するまでの制動距離を足したものです。たとえば、乾いた路面で時速30km/hで走っている際の停止距離は14m。時速60km/hであれば、44mがおおよその停止距離と言われています。

運転免許を取得する際に、学習した方も多いでしょう。時速60km/h未満であれば、適切な車間距離は「時速-(マイナス)15m」がおおよその目安、と記憶しておいてもよいかもしれません。

時速60km/h以上であれば、適切な車間距離は「時速=車間距離」が目安と言われています。たとえば、時速80km/hで走っている場合は80m、時速100km/hの場合は100mです。雨などで路面が濡れている場合は、この2倍程度の車間距離が必要とされています。

しかし、運転をしながら前のクルマとの正確な距離を把握するのは容易ではないので、前のクルマがある地点を通過してから、自車が同じ場所を通過するまでに一般道では2秒、高速道路では3秒ほどの距離感を目安にするのが理想とも言われてます。

たとえば、一般道を時速40km/hで走っているとき、車間時間を2秒確保すれば実際の車間距離は約22mになり、時速50km/hの場合は約28m、時速60km/hの場合は約33mになるといわれています。

また、高速道路を走っている場合は、前のクルマとの間に白線(車線境界線)何本分の距離が空いているかによって、車間距離を確認することも可能です。車線の境界にある線は、8mの白線と12mの空白区間の計20mで構成されています。時速100km/hの場合は前のクルマとの間に白線と空白区間が5セットあればちょうど良いということ。

ちなみに、前のクルマとの間隔を取りすぎたり、あまりにも周囲の流れより遅い速度で走るのは、スムーズな交通の流れを乱してしまう可能性があるので、車間距離の空けすぎにも注意しないといけません。

(鈴木 僚太[ピーコックブルー])

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