量産エンジン最高峰のリッターSS乗りがハーレーのどこに魅力を感じた?【バイクのコラム】

■量産エンジンの最高峰を求めてリッターSSに乗る

160kW(218PS)のハイパワーエンジンは、一般公道のツーリングでは真価を発揮するシーンは皆無。
160kW(218PS)のハイパワーエンジンは、一般公道のツーリングでは真価を発揮するシーンは皆無。

筆者のようなリターン組を含むライダーの皆様、2023年のGW(ゴールデンウイーク)はツーリングを楽しまれましたか?

個人的な観測範囲では降雨は少なく、風の強いGWでしたが、それなりにツーリング日和だと感じたライダーの方が多かったのではないでしょうか。

残念ながら、筆者はじっくりとツーリングを楽しむことはありませんでした。それでも、GW中に開催されたライディングスクールに参加しましたので、愛機のパフォーマンスを引き出そうとする刺激的な瞬間を味わう機会を得ることはできました。

あらためて紹介しますと、筆者の愛機はホンダのリッターSS(スーパースポーツ)「CBR1000RR-R FIREBLADE SP」です。市販車ベースのマシンで開催される耐久レース(鈴鹿8耐など)で勝つために生まれたマシンといえます。

心臓部といえるエンジンは、MotoGPマシンと同じボア×ストロークがウリとなっている総排気量999ccの直列4気筒DOHC。最高出力160kW(218PS)は、量産車としては最高峰といえるもの。このエンジンが欲しくて、CBR1000RR-Rを選んだといっても過言ではありません。

●ライディングがうまくないと恥ずかしいマシン

スーパースポーツならではの前傾ポジションには慣れたが、スポーツライディングはなかなか身につかない。
スーパースポーツならではの前傾ポジションには慣れたが、スポーツライディングはなかなか身につかない。

正直、ハイパワーなエンジンを積んだマシンであっても、常にスポーツライディングをする必要はないと考えていました。四輪の感覚でいえば、スポーツモデルをのんびりと乗る楽しみもあると思っていたのです。

しかし、ドライバーがキャビンの中にいる四輪と、ライダーがむき出しになっている二輪では、スポーツモデルの感覚が異なることに気付きます。

四輪のスポーツカーであれば、乗降時に厳しさを感じることはあっても、乗り込んでしまえばシートポジションなどをゆったり気味にセットすることも可能ですが、リッターSSは常に戦闘的なライディングポジションを強いられます。おのずとスポーツライディングをしないといけない、という気分になるわけです。

富士スピードウェイで開催されたモーターファンフェスタ2023で見かけたハーレーダビッドソン。スペックを主張しない姿勢に目が覚めた。
富士スピードウェイで開催されたモーターファンフェスタ2023で見かけたハーレーダビッドソン。スペックを主張しない姿勢に目が覚めた。

残念ながら、筆者は50歳をすぎてリターンしたライダーです。四半世紀ほどバイクから離れていた時期がありますので、ライディングスキルはさび付いています。CBR1000RR-Rにふさわしいスポーツライディングなどできるわけもありません。

そうした面を少しでもカバーしようと、ライディングスクールに参加したりもしているのですが、そもそもセンスがないのか一向に上達することなく、スクールに通うほど「恥ずかしい」「情けない」というネガティブな気分になっていきます。

スキルアップをしようとするほどに、せっかく手に入れたバイクを心から楽しめなくなっていくのです。

そんなときに、ふと気づいたのがハーレーダビッドソンというブランドです。

●マイペースで楽しめるのはハーレーの魅力かも

ハーレーダビッドソン「ナイトスター」は水冷エンジンのREVOLUTION MAX 975エンジンを搭載。
ハーレーダビッドソン「ナイトスター」は水冷エンジンのREVOLUTION MAX 975を搭載。

前述したように、筆者がリッターSSを選んだのは最強エンジンというスペックにこだわったからです。ネットスラングでいえば、スペック厨なマインドであることを否定はしません。

そうした感覚ともっとも離れているのが、ハーレーダビッドソンのモデルという印象があります。ハーレーといえば大排気量エンジンを積んでいるイメージはありますが、エンジンスペックを語るようなシーンは少ないと感じます。

実際、最新のスポーツモデルであるナイトスターの水冷エンジンは、総排気量975ccで、最高出力は66kWとなっています。同じような排気量のスポーツモデルに比べると、1/3程度のスペックとなっていますが、それを否定する意見を見かけることはほとんどありません。

まさに、スペックを気にせずに乗りこなせることが、ハーレーダビッドソンの価値のひとつといえるのかもしれません。

多くのリターンライダーに支持されてきたハーレーダビッドソン。最近では「#ハーレー女子」といったハッシュタグを見かけることも増えていますが、数値化できない魅力に価値を見出すユーザーが多いということなのでしょう。

スペック厨から卒業して、マイペースでバイクライフを楽しむには、ハーレーダビッドソンという選択も悪くないかも…などと感じた2023年のGWでした。

自動車コラムニスト・山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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