日産「ダットサン・サニー」デビュー。日本のモータリゼーションをけん引したサニーは41万円、ライバルのカローラは43.2万円【今日は何の日?4月23日】

■軽量ボディと俊敏な走りで大衆車市場を開拓したサニー

1966年にデビューしたダットサン・サニー、初代サニー
1966年にデビューしたダットサン・サニー、初代サニー

1966年(昭和41年)4月23日、日産自動車から「ダットサン・サニー」がデビューしました。

当時は名神高速道路が完成するなど交通インフラ整備が進み、日本のモータリゼーション黎明期。高速走行もできる本格的な大衆車として登場したのが、サニーでした。


●日産自動車のルーツはダットサン

初期の日産のクルマには、ダットサン・サニーやダットサン・ブルーバードのように車名の前に『ダットサン』というブランド名が付いていました。サニーは、4代目の1983年までダットサン・サニーの車名で、5代目以降は日産サニーを名乗りました。

日産の源流を辿ると歴史は古く、1911年に創立された快進社まで遡ります。快進社は、小型乗用車「DAT自動車(脱兎号)」を生産しましたが、DATは資金協力者の田健治郎(Den)と協力者の青山祿郎(Aoyama)、竹内明太郎(Takeuchi)の3氏のイニシャルを取ったものです。

その後、快進社はダット自動車商会となり、大阪の実用自動車製造と合併して「ダット自動車製造」ができ、「DATSUN(ダットサン)」という名前の乗用車を開発。そして、このダット自動車製造を鮎川義介が創立した戸畑鋳物が1933年に吸収して「自動車製造株式会社」を設立、その翌年1934年に社名を変更して日産自動車が誕生したのです。日産自動車ができる前に、すでにダットサンというクルマが存在し、自動車製造を行っていたのです。

●ファストバック風の軽量ボディで人気を獲得

ダットサン・サニーのリアビュー。当時は、セダンでも2ドアが一般的
ダットサン・サニーのリアビュー。当時は、セダンでも2ドアが一般的

大衆車の先陣を切ったサニーの特徴は、軽量ボディを生かした優れた動力性能でした。

ノーズが長く、傾斜したリアウインドウで構成されるファストバックのような、当時としては斬新なスタイリング。特徴的なのは、新開発の一体成型システムで剛性を確保しながら、外板も極力薄肉化を図り、車両重量は軽量625kgを達成していることです。

エンジンは、当初800ccの排気量であった計画を急遽1000ccに拡大した直4 OHVで56PSを発揮。最高速は135km/hを超え、1.5Lクラスの優れた走りを見せました。車両価格は標準仕様で41万円、同年デビューしたライバルのトヨタ「カローラ」は、43.2万円でした。

1966年11月 にデビューしたサニーのライバルである初代トヨタ・カローラ
1966年11月 にデビューしたサニーのライバルである初代トヨタ・カローラ

発売後、サニーは高い評価を受け、5ヶ月で3万台を超える販売を記録し、その年の12月には月販台数が1万台の大台を突破。また半年後の11月には、ライバルの初代カローラも登場し、大衆車の市場規模は2年間で倍増しました。その起爆剤になったのは、間違いなくサニーだったのです。

●モータリゼーションを支えたライバルのサニーとカローラ

サニーとカローラは、当初から激しいトップ争いを繰り広げました。

サニーは、前述のように1.0Lエンジンながら軽量ボディを生かした俊敏な走りが特徴。一方のカローラは、“プラス100ccの余裕”という挑発的なキャッチコピーで、サニーより100cc排気量が大きい最高出力60PSを発揮する1.1L直4 OHCエンジンを搭載。スタイリングは、当時最先端のセミファストバックを採用し、走り、乗り心地、静粛性、室内空間などバランスの取れたクルマでした。

販売では、カローラがサニーを上回り、日本を代表する大衆車トップの座を獲得します。その後もカローラとサニーは、“CS戦争”と呼ばれた熾烈な競争をしながら、日本のモータリゼーションをけん引するという重要な役割を果たしたのです。


2002年に登場した国内最後のサニーとなった9代目
2002年に登場した国内最後のサニーとなった9代目

サニーは、9代目をもって2004年に生産を終了し、38年の歴史に幕を下ろしました。一方のカローラは、単一モデルの販売台数でVWビートルを抜いて世界No.1となり、現在も記録を更新中です。明暗がはっきりと分かれた形ですが、サニーも歴史に名を残す名車であることに変わりはありません。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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