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■ダイハツ初のセダン「コンパーノ・ベルリーナ」派生のオープンモデル
1965(昭和40)年3月29日、ダイハツからオープンモデル「コンパーノ・スパイダー」が発表されました。
ダイハツが初めて小型乗用車市場に投入した「コンパーノ・バン/ワゴン(1963年)」「コンパーノ・ベルリーナ(1964年)」の派生モデルとして登場したのです。
●ベルリーナで乗用車市場に参入したダイハツ
ダイハツは、1907年にエンジンを製造する「発動機製造株式会社」として創業し、戦前から戦後にかけて重要が高まった三輪トラックの製造で成功を収めました。乗用車市場への参入は、1963年にコンパーノ・バン/ワゴン、翌年1964年にセダンのコンパーノ・ベルリーナでした。
ベルリーナのパワートレインは、0.8L直4 OHVエンジンと4速MTの組み合わせで、駆動方式はFR。クルマのデザインがアメ車主流の当時、お洒落なイタリア車の雰囲気を醸し出しているベルリーナは、大きな注目を集めました。
ダイハツが乗用車として満を持して投入したベルリーナでしたが、デザインは評価されたものの、ラダーフレームなど基本設計が古すぎたためか、販売は低迷。
さらに、1966年にはトヨタ「カローラ」、日産自動車「サニー」が登場して市場を席巻、ベルリーナの出る幕はなく静かに消え去ったのです。
●ベルリーナのルーフを取り除いてオープン化したスパイダー
スパイダーは、セダンのベルリーナのルーフを取り去り、収納可能なソフトトップを持った4人乗りのオープンスポーツカーとして仕立てられました。
スポーティモデルという位置づけから、エンジン排気量を0.8Lから1.0Lに拡大した直4 OHCへ載せ替え、ツイン・ソレックスキャブレターを装着。最高出力65PSと4速MTの組み合わせで、最高速145km/h、0→400m加速18.5秒と、当時のスポーツカーとしては十分な性能を発揮しました。
デザインは、当時フェラーリやアルファロメオなど、数々の名車を手がけたイタリア人カーデザイナーのアルフレッド・ビニアーレでした。
コンパーノ・スパイダーは大人気とはいきませんでしたが、イタリア映画に出てくるようなお洒落なスタイルが一目置かれる“粋なクルマ“でした。その価格は69万5000円。トヨタ「スポーツ800」とホンダ「S600」よりも10万円ほど高かったことも、販売低迷の理由だったのかもしれません。
●軽だけでなくコンパクトカーでも存在感を示す
ダイハツは、1967年にトヨタ傘下に入り、自社開発モデルの主力を軽自動車に移します。コンパーノは、モデルチェンジすることなく、初代でその生涯を終えました。
とは言うものの、ダイハツは以降も軽だけでなく、小型車にもトヨタの協力を得て、多くの名車を投入しています。
代表的なところでは、トヨタとの業務提携後に誕生した初のモデル、パブリカベースの2ドアセダン「コンソルテ(1969年~)」、カローラのプラットフォームを使ったフラグシップ「シャルマン(1974年~)」、FFコンパクトカーで、世界最小1.0Lディーゼルが話題になったFFコンパクトカー「シャレード(1977年~)」などがあります。
SUV系では、3ドアのコンパクトクロカン「ロッキー(1990年~)」、5ドアコンパクトSUV「テリオス(1997年~)」、テリオスの後継「ビーゴ(2006年~)」などがあります。
最近では、長く人気を維持しているコンパクトカー「ブーン(2004年~)」や、ダイハツ初のハイブリッドで人気の2代目「ロッキー(2019年~)」が好調です。
コンパーノはモデルチェンジすることなく初代でその生涯を終えましたが、コンパーノで培われた貴重なダイハツならではのノウハウは、軽だけでなくそれ以降の小型車のクルマづくりに生かされ続けているのです。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。
(Mr.ソラン)