■ヤマハ発動機らしく、新興国に水とラグビーで貢献
さまざまな事業を展開しているヤマハ発動機は、広報グループが多岐にわたる事業を「ニュースレター」というカタチで発信しています。今回のテーマは「ヤマハクリーンウォーターシステム(YCW)」を使った水です。
「YCW」とは、自然界の水浄化の仕組みを応用した浄水装置。住民による自主運営やメンテナンスが可能で、水道設備のない新興国や途上国の小さな集落での期待が高まっています。なお、2023年3月現在、世界16ヵ国に計49基が設置されていて、きれいな水で人々の暮らしを潤しています。
海外市場開拓事業部の岡部紀彦さんは、新興国などでの事業のきっかけについて「国連は、SDGsで掲げた17の目標に対して、異なる課題の掛け合わせによるマルチベネフィットの創出を提唱しています。安全な水へのアクセスと、質の高い教育や健康につながるスポーツを掛け合わせることで、同社らしい貢献ができるんじゃないかというのが発想の基点となりました」と説明します。
今回の舞台は、ケニアの首都ナイロビから約250kmにあるヴィクトリア湖畔の集落セカ・カグワ村。
2022年に新たに「YCW」が設置されました。「YCW」が設置されたセカ・カグワ村の中学校では、同社と現地NGO、現地ラグビー協会が協力し、ラグビー授業も実施されたそうです。
ケニアは、陸上競技やサッカーが盛んで、ラグビーはまだメジャーとはいえないそうです。しかし近年は、優れた身体能力を活かし、7人制ラグビーの国際大会で優勝を飾るなど、大きな可能性を秘めています。
ヤマハ発動機では、ケニアの大地でラグビーの芽を育んでいこうと、ジャージやボール、練習用具などを同校に寄贈(静岡ブルーレヴズ提供)し、ヤマハ発動機のラグビー部OBを含む社員が、生徒たちと一緒に汗を流しています。
スポーツに水は欠かせません。楕円のボールを追いかけた後に、喉に流し込むきれいな水と弾けるような笑顔が広がったそうです。ラグビー経験を持つ同校の教師も、「ラグビーは、献身性が求められるチームスポーツです。生徒は楽しみながら規律を学び、身に着けられます」と、今後の授業での継続も期待しています。
これまでは、ヴィクトリア湖に注ぐ川の水や雨水を飲み水としていた生徒たちは、「YCW」で浄化されたきれいな水を飲料水として使うようになりました。先行して「YCW」を導入したマダガスカルやセネガルの集落では、9割以上の住民が腹痛などの症状が改善したという実績も重ねています。
岡部さんらとともに同国初の「YCW」設置に尽力した同社の本谷龍一さんは、「現地で耳にした、衛生的な水があるから幸せではなく、きれいな水があることはゼロレベル、という言葉が忘れられません。浄水装置の設置がゴールではなく、これは人々が幸せになっていくためのスタートラインです。衛生的な生活の確保から一歩進んで、健康増進や若者たちの笑顔にも寄与していきたい」と振り返るとともに、将来の決意も語っています。
(塚田 勝弘)