スーパーGTマシンに座れて触れてエンジン音を聴ける!お土産もらえる!日産栃木自動車大学校のオープンキャンパスがクルマ好きには見逃せないイベントだった

■将来有望な高校生らに混じってオープンキャンパスに潜入

左から大澤さん、林さん、成田さん
日産栃木自動車大学校の左から大澤さん、林さん、成田さん

自動車が好きで、自動車に関わりたい仕事がしたいと思ったら、一般にイチバン身近なのは自動車ディーラーに勤めることでしょう。ディーラーに勤めるひとつの道が、メカニックを目指すことです。自動車の調子の悪い部分を良くしたり、安全に走れるように点検したり、自動車を使っていく上でなくてはならない仕事です。電気で動こうが、もし自動運転により人間が運転しなくなっても必要なお仕事、いや、その時はさらに重要視されていくことでしょう。

そうなれば、特段自動車が好きでなくても、整備士は世の中に必要とされる、やりがいのあるお仕事として選択するのもいいことでしょう。

そんな将来のやりがいのあるお仕事を目指すなら、自動車整備士の国家資格が取れる学校へ入学するのが近道。そんな学生たちのために、どんな学校なのかを紹介するためのイベント「オープンキャンパス」が行われています。ここ、日産栃木自動車大学校のオープンキャンパスの様子を見てみましょう。

GT300マシンを取り囲むオープンキャンパスに参加した主に高校生と親御さん
GT300マシンを取り囲むオープンキャンパスに参加した主に高校生と親御さん

高校生や、中学生が、保護者のかたがたとスーパーGTマシンの前に座っています。しかもそのマシンは、2022年スーパーGT300クラスで優勝した近藤真彦監督率いるKONDO RACINGの56号車「リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R」。日産自動車大学校では、「日産メカニックチャレンジ」として、GT300クラス参戦のチームに学生も参加して挑戦しているのですが、昨年は見事にスーパーGT300クラス優勝を果たしているのです。

学生がメカニックとして参戦するというのは、チームにとって決して有利になるとは言えません。なにせ、他のチームはそれでご飯を食べて何年も経験を積んだメカばかりで構成されるのが一般的。学校イベントでもレジャーでもなく、大人の真剣勝負の世界に入り込むわけで、言葉を選ばず言えば、学生さんが足手まといになることもあり得るわけです。

●スーパーGTマシンのタイヤ交換を体験!

タイヤ交換は女の子でもチャレンジ
タイヤ交換は女子でもチャレンジ

それでも、それらを乗り越えた上で、さらに群雄割拠のGT300クラスで優勝するとは、至難の業をこなしているとしか言えません。

そこで得られるプロ意識、チームワーク、諦めない心は、経験した学生さんにとって代えがたい貴重な経験であり、一生の思い出でとなるでしょう。それも、優勝したとなると格別です。

その優勝マシンを前にレースに参戦するとは?といったことから、そこから得られるものなどのお話のあと、いよいよマシンに触れることができます。今回はまず、タイヤ交換の経験。レースで戦うために軽量化されているとは言え、最高速度で270kmとかを超える車両を支えるタイヤ・ホイール。タイヤサイズは「330/710/R18」、つまり、幅33cm、外径71cm、内径18インチなわけで、小さくはありません。

GTマシンに収まりしばし真剣な表情
GTマシンに収まりしばし真剣な表情

このタイヤ・ホイールをセンターロックは外れた状態で差し替えるという作業をやってみるんですが、なかなか現役メカニックのようにはうまくいきません。ただ、参加した女子やお母さんがたも含め、みんな楽しそうにやっているのが印象的です。つらそうにやっている人は見当たりません。当たり前かな?

GT300マシンへ乗車体験
GT300マシンへ乗車体験

その後、ドライバーズシートに座って記念写真を撮ったり、エンジンを掛けてその迫力ある音を間近で聞いたり、一緒に来ているお父さんのほうが楽しんでいるような親子もいらっしゃったようですし、母娘で楽しんでいる姿も見受けられました。

そういったタイヤ交換だけが、レースメカニックのお仕事ではありませんし、そもそも整備士とレースメカニックは別の職業とも言えます。

実習車両の歴代スカイラインGT-Rに触れる参加者
実習車両の歴代スカイラインGT-Rに触れる参加者

けれど、クルマを安全に走らせる基本中の基本がタイヤであることは間違いありません。その精神は自動車に関わるものとして、すべてに共通するものであり、少しでもそれに触れるのは今後の進路にも大きく影響するのではないでしょうか。

オープンキャンパスで今回はこのようなお土産が渡されました
オープンキャンパスで今回はこのようなお土産が渡されました
お土産に含まれる「リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R」ミニカー(毎回いただけるとは限りません)
お土産に含まれる「リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R」ミニカー(毎回いただけるとは限りません)

そうしたレース参戦経験、「日産メカニックチャレンジ」を在学中にプログラムとして参加できるのが日産自動車大学校なのです。

そんなオープンキャンパスを経験した高校生たちは、今回お土産にいただいた特製のミニカーを手にして、自分の将来を思い描き帰路についたに違いありません。


●学生に聞く、日産メカニックチャレンジの経験は社会でどう活かされる?

日産メカニックチャレンジを経験した日産栃木自動車大学校在学中の3人の学生さんにお話を聞いてみました。

一級自動車工学科4年の林篤志さん
一級自動車工学科4年の林篤志さん

日産自動車の開発者としての就職内定が決まっているという4年生の林篤志さんは、「スーパーGTの活動では、サーキットでのレースの合間などに、主にスポンサー様や応援してくださる一般のお客様のホスピタリティを中心に活動してきました。それまでそういった経験はなかったのですが、どういうふうに人と接することが出来るのか、どうやったらお客様が喜んでくださるのか、ということを考えることで学ぶことができ、今後の社会人生活にも活かせるのではないかと思っています」

一級自動車工学科3年の大澤謙世さん
一級自動車工学科3年の大澤謙世さん

やはり将来は日産自動車で開発を目指したいという3年生の大沢謙世さんも、「スーパーGTの活動にたくさん参加させていただきました。学生スタッフ全体の統括リーダーを務めることで、集団を同じ方向へ導くことの大変さも経験しました。例えば、事前の打ち合わせで決めていたけれど、お客様が多かったりして、決められたとおりにならなかったことも多く、現場で対応することも多くありました。そういった経験から、やはり、何事も型にはまることも大事だけど、その場その場で臨機応変にやることも大事だと実感したのは、将来に活かせると思いました」

一級自動車工学科4年の成田颯さん
一級自動車工学科4年の成田颯さん

また、4年生の成田颯さんは、日産の試乗テストコース、グランドライブを運営する日産自動車の関連会社である日産クリエイティブサービスに就職が決まっているそうです。「スーパーGTの活動では、広報活動を担当させていただき、監督さんやドライバーのかたにお話を聞いたり、写真を撮ったり、別の学生や日産のテクニカルスタッフのお話などをスポンサーさんへ向けてのレポート制作をやってきました。その経験から、自分の言葉で何かを伝えるのが楽しいと思うことになり、就職先の選択にも影響しました」


●スポーツメカニクス科ではモータースポーツも、板金塗装も、溶接も学べる

中村光之校長が今一番気になるクルマはフェアレディZ
中村光之校長が今一番気になるクルマはフェアレディZ

そんな3名が在籍する日産栃木自動車大学校の特徴を、中村光之校長先生にお聞きしました。

――カリキュラムではスポーツメカニクス科が特徴的ですよね

スポーツメカニクス科のアルトワークス
スポーツメカニクス科のアルトワークス

一般の整備士になるためのカリキュラム以外のカリキュラムでは、スポーツメカニクス科を充実させていってるのが栃木校の特徴です。

スポーツメカニクス科のトロフィーやレーシングスーツその他
スポーツメカニクス科のトロフィーやレーシングスーツその他

今後予定している活動は、ひとつが、日産メカニックチャレンジとしてスーパー耐久に参戦するチームゼロワンの2台のフェアレディZ、(ニッサンZ GT4とニッサン・フェアレディZニスモRC)のメンテナンスを受け持つ浅野レーシングさんとのコラボ授業です。これは、スポーツメカニクスの学生が過酷な耐久レース用のレーシングマシンのメンテをすることで、より高い整備技術を学びます。さらに予防整備や過酷に遣われた市販車の整備への応用力を身に着けます。

もうひとつは、アメ車をレストアして販売しているMAVERICK(マーベリック)さんの協力を得て、アメ車のレストアを実際に行いながら、板金、塗装、エアブラシなどのカスタムペイントを学びます。扱う車両は実際に販売する車両ですので、スポーツメカニクスの学生は良い緊張感をもって技術を学ぶことができます。栃木校には板金塗装を学ぶコースがありませんが、スポーツメカニクス科では、この活動を通して学ぶことができます。

また、溶接についても、毎年、栃木校への出張授業にて溶接の基礎を教えていただいているショップGroovy Line(グルービーライン)さんのところで、希望学生には追加で1ヶ月程のインターンシップを行ないエキゾーストマフラーの製作などに取り組んでいます。

――設備面での栃木校の特徴は?

土地柄、設備面が広いのが特徴です。広めの駐車場やグラウンドもあります。

栃木校は学生が自動車通学してもいいことになっているのも特徴ですね。都心の学校ですと、クルマでの通学が認められておらず毎日クルマに乗ることができなくなってしまう、それがここでは毎日好きなクルマに接することができる。

それに、学校の実習場を使って自分や家族のクルマを自分で整備することも可能です。中にはリミテッドスリップデフの交換をやったり、留学生が10万円で買ってきた軽自動車を授業で学んだ技術を使って、ブレーキオイルの交換とディスクパッドの交換をやっていました。

――在学中の学生さんの特徴はありますか?

日産栃木自動車大学校の中村光之校長
日産栃木自動車大学校の中村光之校長

多様な学生が多いのが栃木校の特徴です。50代の女性がいたり、40代で社会人から学生になったり、来年はアメリカから入学する女性がいたりします。アジアからの留学生も多いですが、意外なところから入学する人も結構いますよ。

――卒業生での特徴的なひとはいますか?

特別な有名人とかは思い浮かびませんが、日産系販売会社の部長、役員になった人はたくさんいますね。それに日産自動車に開発関連で活躍している人もいます。

また、卒業生の方とお会いしてお話をお聴きますと、皆さん大変仕事に真摯にかかわっていらっしゃる方ばかりで驚きます。昨年の日産のサービス技術大会で、関東ブロックで優勝した茨城日産の3名の方は全員栃木校の卒業生でした。

――栃木校で在学中に学生さんに学んでほしいことは

私自身のこれまでの人生を振り返ると、今までの判断や行動の一つ一つが多くの成功と失敗となり、今の自分自身を形作っているなと感じます。人生とはそういうものの積み重ねなんだとこの歳になって改めて噛みしめています。

今、私が学生に伝えたいのは、人生は一瞬一瞬の積み重ねです、一つの判断、一つの行動を無駄にせず、大事にして欲しいということです。毎日の授業にしても日産メカニックチャレンジにしても、頑張ってやっていくといろいろなことが学べます。大事な一瞬の積み重ねが1日に、その積み重ねが1年に、そしてその人の人生がどんどん豊かになっていくことを信じて前に進んでいってもらえると嬉しいですね。


整備士を目指す基本は、使える物を修理して長く使う精神だと思います。言わば、「もったいない」の心とも言えるかも知れません。日本人が長らく培ってきたその精神をつなぐ、整備士は尊い職業なんだと思います。それが、次の若い世代に繋がってゆけるのなら、広く、これからの日本全体にとってもありがたい話なのだと確信します。

(文・写真:小林和久)

●日産栃木自動車大学校

日産栃木自動車大学校
日産栃木自動車大学校

〒329-0604 栃木県河内郡上三川町上郷2120
https://www.nissan-gakuen.ac.jp/tochigi/

日産栃木自動車大学校
日産栃木自動車大学校


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この記事の著者

編集長 小林和久 近影

編集長 小林和久

子供の頃から自動車に興味を持ち、それを作る側になりたくて工学部に進み、某自動車部品メーカへの就職を決めかけていたのに広い視野で車が見られなくなりそうだと思い辞退。他業界へ就職するも、働き出すと出身学部や理系や文系など関係ないと思い、出版社である三栄書房へ。
その後、硬め柔らかめ色々な自動車雑誌を(たらい回しに?)経たおかげで、広く(浅く?)車の知識が身に付くことに。2010年12月のクリッカー「創刊」より編集長を務める。大きい、小さい、速い、遅いなど極端な車がホントは好き。
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