マツダ新社長となる毛籠勝弘氏はなにをすべき?「お客さんのニーズを考える」新型モデル、大いに楽しみです

■アメリカで稼げる体制を作ってきたマツダ新社長毛籠勝弘氏

新代表取締役社長 兼 CEO(最高経営責任者)コミュニケーション・サステナビリティ統括となる毛籠勝弘氏
新代表取締役社長 兼 CEO(最高経営責任者)コミュニケーション・サステナビリティ統括となる毛籠勝弘氏

マツダの社長交代が発表された。6月の株主総会の承認を持って、丸本さんから毛籠さんにバトンタッチされる。マツダのクルマ作りはどうなっていくだろうか? 様々な観点から考察してみたい。まず現在のマツダ車のラインナップだけれど、クルマの方向性そのものについていえば100%といってよいくらい藤原前COO。パワーユニットは人見氏の意向が組み込まれている。

退任となる、現代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)の丸本明氏
退任となる、現代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)の丸本明氏

ちなみにCX-5から始まるマツダの復活劇のハンドリングをしたのは、会長で勇退した金井さんや金沢さん、早くして亡くなられた以南さんといった世代。金井さんや金沢さんにたくさん文句を言ったけれど、皆さん私より人間が大きく、いろんなことを教えて頂いた。しかし金井さん世代の流れを引き継いだ藤原さんは、全く違うタイプだった。少数の意見しか聞かない。

例えば厳しい燃費規制である欧州CAFE。内燃機関だけじゃ無理だと100回くらい言ったのに、藤原・人見ラインは全く聞かない。どうやらマツダ社内からも同じような意見が出ていたようだけれど完全否定したと聞く。人見さんには「開発の5%でいいから電動化に回したらいかがか?」と言ったけれど「圧縮着火で電動化なんかいらない」。さらに電気自動車の否定論ばかり出す。

はたまたアメリカでクロスオーバーが売れ始めた頃「マツダ6をベースにアウトバックのようなモデルを作ったらどうか」と藤原さんに聞いたら「マツダの市場は2%でいい。他と同じもの作らない」と全面否定宣言。CX-5にターボエンジン載せた時、エクステリアもそれっぽくしたらいかがかと聞いたら、この時は「どんなパワーユニットでも外観は一切変えない」。藤原美学らしい。

会見する新社長兼CEO毛籠勝弘氏と現社長兼CEO社長丸本明氏
会見する新社長兼CEO毛籠勝弘氏と現社長兼CEO社長丸本明氏

そんな時、毛籠さんはアメリカを担当していた。アメリカのユーザーから様々なリクエストを受け、すべて「なるほど」と思い、日本に対応する商品をリクエストすると、私と同じように全て「No」だったらしい(関係筋の情報)。されど毛籠さんは様々な手を使いマツダ3の「マツダスピード」を復活させ、マツダ6のクロスオーバーこそ作れなかったが今や稼ぎ頭になっているCX-50も出した。

ラージ商品群第一弾のCX-60
ラージ商品群第一弾のCX-60

直近のマツダの収益は大半がアメリカからのもの。藤原体制で構築した欧州といえば、燃費の良いトヨタのハイブリッド車を投入しても厳しい状況。もちろん収益についていえば言うまでも無い。毛籠さんがアメリカで稼げる体制を作っていなければ今のマツダは窮地です。ラージ商品群も、燃費や商品力で問題無しといえず、大幅な路線変更が必要になってくると思う。

ラージ商品群第一弾のCX-60
ラージ商品群第一弾のCX-60

以上、読んで頂ければマツダの課題とやるべきことが解ってくるかもしれない。今までのマツダは「作る側」の好みだった。それを好むユーザーからすれば「素晴らしい!」なのだけれど、他からお客さんを引っ張ってくることなどできない。毛籠さんの方向性は「お客さんのニーズを考える」ということ。その上でマツダにしかできないクルマ作りをしていけばいい。

握手する新社長兼CEO毛籠勝弘氏(左)と現社長兼CEO社長丸本明氏(右)
握手する新社長兼CEO毛籠勝弘氏(左)と現社長兼CEO社長丸本明氏(右)

おそらくマツダ社内で大改革や大きな方向変換が行われると思う。そしてアメリカでの実績を考えると毛籠さんは良い選択をすると私は考える。クルマという商品は開発に時間が掛かる。藤原さんが居なくなってもうすぐ1年。新しい体制で方向変化したモデルが出てくるまで2年くらい掛かるかもしれない。大いに楽しみです。

国沢 光宏

【毛籠勝弘氏 職歴】

・1983年(昭和58年)3月 東洋工業株式会社(現マツダ株式会社)入社
・2002年(平成14年)4月 グローバルマーケティング本部副本部長
・2002年(平成14年)8月 グローバルマーケティング本部長
・2004年(平成16年)3月 マツダモーターヨーロッパGmbH.副社長
・2008年(平成20年)11月 執行役員 グローバル販売統括補佐、グローバルマーケティング担当
・2011年(平成23年)4月 執行役員 営業領域統括補佐、顧客つながり推進担当補佐、グローバルマーケティング担当
・2012年(平成24年)4月 執行役員 営業領域統括補佐、顧客つながり推進担当補佐、グローバル販売&マーケティング担当
・2013年(平成25年)6月 常務執行役員 営業領域総括、グローバルマーケティング・カスタマーサービス・販売革新担当
・2016年(平成28年)1月 常務執行役員 マーケティング戦略統括、マツダモーターオブアメリカ, Inc.(マツダノースアメリカンオペレーションズ)社長兼CEO
・2016年(平成28年)4月 専務執行役員 マーケティング戦略統括、ブランド推進統括補佐、マツダモーターオブアメリカ, Inc.(マツダノースアメリカンオペレーションズ)社長兼CEO
・2019年(平成31年)4月 専務執行役員 北米事業統括、マツダモーターオブアメリカ, Inc.(マツダノース アメリカンオペレーションズ)会長兼CEO
・2019年(令和元年)6月 取締役 専務執行役員 北米事業統括、マツダモーターオブアメリカ, Inc.(マツダノースアメリカンオペレーションズ)会長兼CEO
・2021年(令和3年)6月 取締役 専務執行役員 コミュニケーション・広報・渉外・管理領域統括
・2022年(令和4年)6月 取締役 専務執行役員 コミュニケーション・広報・渉外・サステナビリティ・管理領域統括