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■低燃費アイテムを盛り込んでクラストップの低燃費を実現
1985(昭和60)年3月14日、初代のホンダ「シティ」に量産車初のFRM(Fiber Reinforced Metal:繊維強化金属)コンロッドを採用したシティEIIIが登場しました。FRM以外にも独自に開発した混合気制御などを組み込み、クラストップの燃費をアピールしたのです。
●初代シティは、トールボーイの愛称で大ヒット
1981年、“トールボーイ”と称した独特の背高ノッポスタイルのシティがデビューしました。“カッコいいクルマ・イコール・背が低い”という当時の常識を打ち破り、1570mmの全幅に対して1470mmの全高を持った画期的なクルマでした。
全長の短いクルマの室内空間を最大にするため、高さだけでなく、タイヤは極力ボディの四隅に追いやり、サスペンションはスペース効率に優れたマクファーソンストラットを採用。
パワートレインは、徹底的にコンパクトに設計された新開発の1.2L直4 SOHCエンジンと、4速&5速MTおよびホンダマチック4速ATの組み合わせが選べました。
当初は、否定的な意見もありましたが、結果は若者の圧倒的な支持を得て大ヒット。1982年には、2Lクラスと同等の速さを持った“韋駄天ターボ”と呼ばれた「シティ・ターボ」や1984年にはオープンモデル「シティ・カプリオレ」が加わり、シティ旋風を巻き起こしたのです。
●ターボやオープンモデルに続いて低燃費EIIIを追加
そして低燃費をアピールするために登場したのが、シティEIIIです。
FRMのコンロッドやL.L.Rによって、1.2Lクラストップの燃費を実現。FRM(Fiber Reinforced Metal:繊維強化金属)は、金属(EIIIは、アルミ)に炭素繊維などの繊維状の強化材を加えたもの。強度や耐熱性、耐摩耗性などに優れた複合素材なので、コンロッドを軽量化できます。
また、L.L.R. (リーン・リーン・リッチ)システムは、エンジンに吸入された混合気を、低負荷時にはリーン(薄い)混合気に、中・高負荷では徐々にリッチ(濃い)混合気にきめ細かく制御する手法です。
ほかにも、非対称フロントグリルや可倒式ドアミラーを採用するなど、静粛性や乗心地の向上も図られ、車両価格82万円(MT)で発売されました。
このようにしてシティは、高性能だけでなく、燃費性能も優れていることをアピールすることに成功したのです。
●ホンダが積極的に採用を進めているFRM
FRMは、金属に炭素繊維などの繊維状の強化材を加えたもので、強度や耐熱性、耐摩耗性などに優れた複合素材です。
ホンダは、コンロッドだけでなく、「アコード」や「シビックタイプR」「NSX」などの一部のモデルには、一般的な鋳鉄ライナーの代りにFRMを活用しています。優れた強度と摺動性だけでなく、アルミの高い熱伝導性を生かして冷却性能を上げる効果があります。
鋳鉄ライナーではピストンのアルミ合金との熱膨張率の違いから、低温時にはクリアランスを多く設ける必要があります。そのため、始動時にはピストンスラップ音の発生が不可避ですが、FRMによるライナーでこのクリアランスを詰めることに成功、これにより気筒間の寸法を縮小することができ、エンジンの小型化やボア拡大を図ることができるのです。
トールボーイの愛称で大ヒットしたシティ、その勢いで走りの韋駄天ターボ「シティ・ターボ」やお洒落なオープン「シティ・カプリオレ」と若者受けするモデルを追加しています。それらにとどまらず、低燃費をアピールするEIIIも投入してくる、あらゆる点に抜け目のないホンダ・シティだったのですね。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。
(Mr.ソラン)