ダイハツがハイゼット カーゴ、アトレー、ハイゼット トラックに採用したFR用CVTが20年ぶりとなる「市村産業賞 貢献賞」を受賞

■軽バン、軽トラックに求められる燃費向上やスムーズな走りに寄与するFR用CVT

ダイハツは、2021年12月にハイゼット カーゴ、アトレーをフルモデルチェンジするとともに、ハイゼット トラックをマイナーチェンジしています。パッケージングの進化などに加えて、メカニズム面の目玉が、新プラットフォームの「DNGA」の採用、新開発のFR用CVTの搭載です。

ダイハツ・アトレーのエクステリア
ダイハツ・アトレーのエクステリア

小型化されたCVTは、軽商用車の床下スペースに搭載できただけでなく、CVTならではの発進性や燃費の良さ、静粛性の向上にも寄与しています。

ハイゼット カーゴのインパネ
ハイゼット カーゴのインパネ

このほどダイハツは、このFR用CVTが市村清新技術財団の「第55回市村産業賞 貢献賞」を受賞したと発表しました。受賞テーマは「後輪/四輪駆動軽商用車向け無段変速機の開発」。

同賞は、優れた国産技術を開発することで産業分野の発展に貢献、功績があった技術開発者に贈られるもので、ダイハツの受賞は「インテリジェント触媒(自己再生型自動車排ガス浄化触媒)の研究」で「第35回市村産業賞 貢献賞」を受賞して以来、20年ぶりになるそうです。

ダイハツ・ハイゼット カーゴのエクステリア
ダイハツ・ハイゼット カーゴのエクステリア

軽商用車は、農業などの一次産業から建設業や配送業など、幅広い業種から必須といえる存在。ダイハツは一度に多くの荷物を運ぶことが求められる軽商用車に最適なキャブオーバー、FRレイアウトを採用し、荷室と荷台の最大化による積載性や悪路でも頼れる走行性能、耐久性などを追求しています。

同社は、FR用CVTを開発した背景について、近年は、女性やシニア、外国人など使用者の多様化、小口配送の増加に伴う荷崩れ防止の観点から、従来よりも走りやすい滑らかな乗り心地が求められていることを挙げています。さらに、大幅な燃費向上も必須であることから、既存の4速ATから軽乗用車では主流のCVTへ進化させる必要もあった、と説明しています。

ハイゼットカーゴのラゲッジ
ハイゼットカーゴのラゲッジ

このような課題の解決に向けて、軽商用車初になるFR車用のCVTを新開発するとともに、様々な路面状況や目的に合った走行性能を実現できる3モード電子制御式4WDも開発されています。

FR車用CVTは、キャブオーバーレイアウトという限られたユニット搭載スペースの中に収まるように、小型化と低背化が不可欠だったそう。同時に、商用車に求められる耐久性、信頼性という課題も克服されています。

CVTのイメージ
CVTの採用技術

主な採用技術は、低燃費技術としてアウトプットリダクション方式CVTが採用されています。ワイドレシオ化やアウトプットリダクションのギヤレシオ適正化などにより、燃費を約17%向上。小型化技術として採用された「前後進パラレル配置」も特徴です。

前後進の切替が2軸で構成され、入力軸に対して両側に振り分けることにより低背化に成功し、従来のAT車と同等の荷室スペースの確保に寄与しています。

CVTの採用技術
FR用CVTの特徴

さらに、耐久信頼性技術として、ベルト保護制御が盛り込まれています。常時クラッチ圧を制御することにより、過大入力に対してクラッチを滑らせ逃がすことで、ベルトの耐久信頼性を確保。路面状況に応じてFRから4WDまで自動的にトルク分配を制御し、走行する「4WDオート」を備えた3モード(2WD/4WDロック/4WDオート)の電子制御式4WDシステム(3モード電子制御式4WD)が開発されたことで、多様な環境下での走破性を向上させたとしています。

(塚田 勝弘)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
続きを見る
閉じる