ヤマハが2023年の全日本レースを戦うワークスマシン公開。電動マシン「TY-E2.1」やバイオ燃料対応の「YZF-R1」などを初披露

■「YZ450FM」も新型マシンを入

ヤマハ発動機(以下、ヤマハ)が、2023年シーズンに全日本で開催されるレースに参戦するワークスマシンについて、画像や映像を正式発表しました。

2023年シーズンの抱負を語ったヤマハ・ファクトリー・レーシングチームの監督やライダーたち
2023年シーズンの抱負を語ったヤマハ・ファクトリー・レーシングチームの監督やライダーたち

今回公開されたのは、いずれもヤマハのワークスチーム「ヤマハ・ファクトリー・レーシングチーム(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)」や、主要サポートチームから参戦するマシンたち。

ヤマハは、2023年シーズン、全日本ロードレース選手権の最高峰クラス「JSB1000」には「YZF-R1」、全日本モトクロス選手権では最高峰「IA1」に「YZ450FM」をそれぞれ投入します。

さらに、全日本トライアル選手権の最高峰「IAスーパー」では、史上初となる電動バイク「TY-E2.1」で参戦。エンジン車の「TYS250Fi」とのダブルエントリーを行いますが、今回これらすべてのマシンを初披露しました。

また映像では、各マシンを駆るライダーたちや監督たちも登場し、2023年モデルの紹介や2023年シーズンの抱負なども語っています。

●「YZF-R1」は100%非化石燃料に対応

まずは、全日本ロードレース選手権の最高峰クラス「JSB1000」に、ヤマハ・ファクトリー・レーシングチームから参戦する「YZF-R1」。

岡本選手の2023年型「YZF-R1」
岡本選手の2023年型「YZF-R1」

2022年シーズンのヤマハは、中須賀克行選手が自身11回目のチャンピオンを獲得したほか、2年連続で全勝優勝を果たし、2022年のシーズン最終戦までに「13連勝」という偉業を達成しています。

2023年も中須賀選手がYZF-R1の2023年モデルを駆り参戦するほか、チームメイトには2022年のルーキーイヤーに7度の表彰台に立ちランキング3位となった岡本裕生選手が継続参戦します。

これら2名のライダーが駆る新型YZF-R1の外観は、グラフィックが多少変更されている程度で、2022年モデルと大きな差はみられません。

ですが、JSB1000クラスは、2023年シーズンより100%非化石由来のカーボンニュートラル燃料、いわゆるバイオ燃料の導入が決まっています。

2022年シーズンのJSB1000でチャンピオンを獲得した中須賀選手とYZF-R1
2022年シーズンのJSB1000でチャンピオンを獲得した中須賀選手とYZF-R1

世界最高峰2輪レースの「MotoGP」でも2024年シーズンから導入されますが、2026年シーズンまでは非化石由来40%、2027年より100%の非化石由来となるといった経過措置が採られているのに対し、JSB1000クラスは2023年より100%非化石由来を適用。カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを、世界に先駆けて導入するのです。

ちなみに使用される燃料は、4輪の国内最高峰レース「スーパーGT」でも2023年より適用されるハルターマン・カーレス社製で、JSB1000ではワンサプライヤーでの供給が決まっています。

中須賀選手が駆る2023年型「YZF-R1」
中須賀選手が駆る2023年型「YZF-R1」

そうしたレギュレーションの変更に対応したのが2023年モデルのYZF-R1。ヤマハ・ファクトリー・レーシングチームの吉川和多留監督によれば、「まだ十分にテストができていないが、開幕戦に間に合うように急ピッチで仕上げている」とのこと。

新型YZF-R1には市販化を目指すキットパーツも採用し、その開発も並行して実施。より多くのユーザーへ、高い戦闘力を発揮するパーツの供給を目指すといいます。

●全日本モトクロスには新型YZ450FM投入

一方、全日本モトクロス選手権の最高峰IA1には、5年ぶりにフルモデルチェンジを受けた2023年型「YZ450F」をベースに、ワークス仕様のモディファイを受けた新型「YZ450FM」が投入されます。

富田選手が乗る2023年型「YZ450FM」
富田選手が乗る2023年型「YZ450FM」

ベース車両となった市販モトクロッサーのYZ450Fは、パワフルで扱いやすい軽量な新設計エンジン、新開発のバイラテラルビーム・フレームなどの採用で、軽快性と安定性を高次元で両立していることが特徴。

また、新設計クラッチや新トランスミッションなど各部を改良することで、より戦闘力をアップさせています。

フルモデルチェンジを受けた市販モトクロッサーYZ450F
フルモデルチェンジを受けた市販モトクロッサーYZ450F

それをベースとするのが、ワークスマシンの2023年型YZ450FM。マシンの詳細は明らかになっていませんが、ベース車両のポテンシャルアップに伴い、ワークスマシンの実力もかなり向上していることが伺えます。

参戦ライダーは、ヤマハ・ファクトリー・レーシングチームから、2022年シーズン、ヤマハに2011年以来となるチャンピオンをもたらした富田俊樹選手。チームメイトには、2022年ランキング3位の渡辺祐介選手が起用されます。

さらに、2023年シーズンのIA1には、新チーム「ヤマハ・ファクトリー・イノベーションチーム(YAMAHA FACTORY INNOVATION TEAM)」も投入。

2022年シーズンにチャンピオンとなった富田選手とYZ450FM
2022年シーズンにチャンピオンとなった富田選手とYZ450FM

このチームは、ヤマハが2022年シーズンの全日本モトクロスに投入したステアリングアシスト機構「EPS(エレクトリック・パワー・ステアリング)」の開発を進めるために設立したのだそうです。

EPSは、高速走行時はハンドルの安定感、低速走行時は軽快なハンドリングなどを生むことを目指して開発されているシステム。将来的には、市販車への投入も視野に入れた開発が進んでいます。

2023年シーズンでは、このチームに、全日本モトクロス「IA2」で2022年の王者となったジェイ・ウィルソン選手が、監督兼ライダーとして参加。チームメイトには町田旺郷選手が起用され、ステアリングの電子制御という新しい価値創造に挑みます。

●全日本トライアルは電動バイクTY-E2.1がフル参戦

全日本トライアル選手権の最高峰「IAスーパー」でヤマハは、なんと史上初となる100%電動バイクのフル参戦を予定しています。

全日本トライアルIAスーパーにフル参戦する「TY-E2.1」
全日本トライアルIAスーパーにフル参戦する「TY-E2.1」

マシンは、2022年シーズン、世界最高峰の「FIMトライアル世界選手権」フランス大会で国内トップライダーの黒山健一選手と共に参戦した「TY-E2.0」をベースに、より進化をさせた「TY-E2.1」です。

バッテリーと駆動用モーターで走る100%電動バイクが「TY-E」。ヤマハは2018年よりこのマシンをトライアル競技へ投入。2018年と2019年では、電動バイクだけで競う世界選手権「トライアルEカップ」に参戦し、2年連続ランキング2位を獲得。

2022年に世界戦を戦った黒山選手とTY-E2.0
2022年に世界戦を戦った黒山選手とTY-E2.0

エンジン車と戦った2022年のフランス戦ではマシントラブルなどもあり31位に終わっていますが、ポテンシャルは十分にあったといいます。

そして、2023年シーズンは、全日本トライアルIAスーパーの全8戦に、TY-E2.1を投入し、エンジン車と戦います。

ライダーには、ヤマハ・ファクトリー・レーシングチームに所属し、TY-Eの開発を初代モデルから進めている黒山選手を起用。他メーカー製のエンジン車たちを相手に、どんな戦いを披露してくれるのか注目されます。

野崎選手が乗るエンジン車の「TYS250Fi」
野崎選手が乗るエンジン車の「TYS250Fi」

なお、ヤマハは、同じIAスーパーにエンジン車の「TYS250Fi」も投入。こちらのマシンには「チーム・ノザキ・ヤマルーブ・ヤマハ(Team NOZAKI YAMALUBE YAMAHA)」から2022年ランキング4位の野崎史高選手が乗り、自身初、ヤマハにとって2012年以来となるチャンピオン獲得を目指します。

なお、今回ヤマハが公開した映像では、各ライダーやチーム監督たちが、2023年シーズンにかける意気込みなども語っていますから、興味がある人はぜひ一度ご覧下さい。

(文:平塚直樹

【関連リンク】

2023年 ヤマハ国内レース参戦体制発表会(出展:ヤマハ発動機 YouTube公式チャンネル)

この記事の著者

平塚 直樹 近影

平塚 直樹

自動車系の出版社3社を渡り歩き、流れ流れて今に至る「漂流」系フリーライター。実は、クリッカー運営母体の三栄にも在籍経験があり、10年前のクリッカー「創刊」時は、ちょっとエロい(?)カスタムカー雑誌の編集長をやっておりました。
現在は、WEBメディアをメインに紙媒体を少々、車選びやお役立ち情報、自動運転などの最新テクノロジーなどを中心に執筆しています。元々好きなバイクや最近気になるドローンなどにも進出中!
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