レクサス「RX500h」の楽しい走りはハイブリッド車のイメージを一変させる

■欧州プレミアムブランドに一歩も引けをとらない高い質感

レクサスRXは、1998年に北米市場でラグジュアリーSUVとして登場しました。2005年にはハイブリッド車のRX400hを導入し、このクラスのパイオニアとしてリードしてきたモデルです。

1998年の販売開始から2022年9月末の時点で、約95の国と地域で累計約362万台を販売するレクサスのコアモデルとなっています。日本市場には2009年に初代モデルが導入され、日本市場における3代目(グローバルでは通算5代目)となる現行型のレクサスRXは2022年11月に登場しました。

RX500h Fスポーツパフォーマンスの走行シーン
RX500h Fスポーツパフォーマンスの走行シーン

今回は、日本だけでなく北米市場でもコアモデルとなっている、新型レクサスRXのフラッグシップモデル・RX500h Fスポーツパフォーマンスに試乗することができましたので、インプレッションをお届けします。

2022年11月に登場した現行型レクサスRXは、ドライバーの意図に忠実でリニアな応答を目指す、レクサスならではの乗り味「レクサス・ドライビング・シグネチャー」をさらに進化させるため、徹底的に鍛え上げているのが特徴です。

RX500h Fスポーツパフォーマンスのフロントビュー
RX500h Fスポーツパフォーマンスのフロントビュー

現行型レクサスRXのボディサイズは、全長4,890mm×全幅1,920mm×全高1,700〜1,705mm。全長は先代モデルと同じですが、全幅は+25mm、全高は-5〜10mmと、ワイド&ローのフォルムとなりました。

ホイールベースは先代モデルより+60mmの2,850mmとなり、室内空間が拡大しています。

RX500h Fスポーツパフォーマンスのサイドビュー
RX500h Fスポーツパフォーマンスのサイドビュー

現行型レクサスRXでは、ボディの骨格にGA-K改良プラットフォームを採用。重心高を先代モデルより15mm下げ、軽量化の車両重量もグレードによって-20〜+20kgと重量増を抑えています。

さらに、トレッド幅をフロントで15mm、リアで45mm拡げることで、ヨー慣性モーメントを低減させるパッケージを実現しました。

RX500h Fスポーツパフォーマンスのリアビュー
RX500h Fスポーツパフォーマンスのリアビュー

サスペンションは、フロントにマクファーソンストラット式サスペンションを採用。リアには、路面への駆動力の確実な伝達とスムーズな車両姿勢変化の両立を目指し、新開発のマルチリンク式サスペンションを採用。

ショックアブソーバーの配置とサスペンションメンバーのマウントブッシュ特性の最適化により、発進、加速時の車両姿勢変化を抑えるとともに、走行時の車両の振動を抑制し上質な乗り味を実現しています。

RX500h Fスポーツパフォーマンスに搭載される2.4Lターボハイブリッド
RX500h Fスポーツパフォーマンスに搭載される2.4Lターボハイブリッド

現行型レクサスRXに搭載されているパワートレインは、RX350に搭載されている最高出力279ps・最大トルク430Nmを発生する2.4L直列4気筒ターボ+8速ATをはじめ、RX450h+にシステム合計最高出力309psを発生する2.5L直列4気筒エンジンのプラグインハイブリッドシステム。そして、システム最高出力371psを発生する2.4L直列4気筒ターボハイブリッドシステムの3種類。

ハイブリッド車のトランスミッションは2.5LエンジンがCVT、2.4Lターボエンジンが6速ATとなっています。駆動方式は4WDを中心に、2.4Lターボエンジン搭載のRX350に2WD(FF)が搭載されています。

ACCの操作スイッチ
ACCの操作スイッチ

運転支援システムは、レクサスセーフティプラスを採用。運転状況に応じて、適切な操作サポートを行うプロアクティブドライビングアシストや、ドライバーモニターとの連携によるドライバーの運転に応じた最適制御など、人間中心の考えに基づいたサポートを行います。

●これまでのFスポーツとは味付けの異なる懐の深い乗り心地

RX500h Fスポーツパフォーマンスのフロントスタイル
RX500h Fスポーツパフォーマンスのフロントスタイル

今回試乗したのは、現行型レクサスRXのフラッグシップモデル、RX500h Fスポーツパフォーマンスで、車両本体価格は900万円。

試乗車にはオプション装備として3万3000円のデジタルキー、専用ブラック塗装のルーフレール3万3000円。27万9400円のマークレビンソンプレミアムサラウンドサウンドシステム、そして2万900円の寒冷地仕様が装着され、合計936万6300円という仕様です。

RX500h Fスポーツパフォーマンスのリアスタイル
RX500h Fスポーツパフォーマンスのリアスタイル

RX500h Fスポーツパフォーマンスの外観は、レクサスのアイコンであるスピンドルグリルを、ボディとグリルの境界を融合させたシームレスな表現としたこと。冷却機能を維持しながら、力強さと低重心を表現し、新しいアイデンティティをアピールしています。

RX500h Fスポーツパフォーマンスのインストルメントパネル
RX500h Fスポーツパフォーマンスのインストルメントパネル

インテリアは、新しいコクピット思想「Tazuna Concept」に基づきデザイン。

人が馬を操る際に使う「手綱」に着想を得て、ステアリングスイッチとヘッドアップディスプレイを高度に連携させ、視線移動や煩雑なスイッチ操作をすることなく、各種機能の制御が可能なコクピットとなっています。

RX500h Fスポーツパフォーマンスのフロントシート
RX500h Fスポーツパフォーマンスのフロントシート
RX500h Fスポーツパフォーマンスのリアシート
RX500h Fスポーツパフォーマンスのリアシート

また、フロントシートの左右カップルディスタンスは20mm拡大。そして前後のカップルディスタンスは980mmと先代モデルと数値は同じですが、フロントシートバックの薄型化やリアシートが37度までリクライニング可能となり、よりゆとりのある空間を確保しています。

5人乗車時のラゲッジスペース
5人乗車時のラゲッジスペース
最大化した際のラゲッジスペース
最大化した際のラゲッジスペース

ラゲッジスペースは、バックドアトリムの薄型化などにより荷室長を50mm拡大し、5人乗車時で612Lという容量を確保。荷室の床面を30mm下げたことにより、荷物積み降ろしの際の負担を軽減しています。

RX500h Fスポーツパフォーマンスの走りは、従来のハイブリッド車とは全く異なるフィーリングで、非常にパワフル。そして、乗り心地はFスポーツとは思えないほどしなやかでゆったりとした乗り心地です。

この乗り味は、主力マーケットである北米を強く意識したものと言えるでしょう。

RX500h Fスポーツパフォーマンスの21インチのアルミホイール
RX500h Fスポーツパフォーマンスの21インチのアルミホイール

RX500h Fスポーツパフォーマンスに搭載されているのは,レクサス初となる新ハイブリッドシステムです。最高出力274ps・最大トルク460Nmを発生する2.4L直列4気筒ターボエンジンにフロントモーター、そして6速ATを採用。リアには「eAxle(イーアクセル)」と呼ばれる高出力モーターを搭載しています。システム用バッテリーには高出力のバイポーラ型ニッケル水素電池を採用しています。

パドルシフトを装着
パドルシフトを装着

WLTCモード14.4km/Lという優れた燃費性能も魅力ですが、システム最高出力371psという高出力が特徴です。アクセルペダルを踏むと、V8エンジンと聞き間違えるほどの野太いエンジンサウンドを奏でます。

ドライブモードの切り替えはディスプレイで行う
ドライブモードの切り替えはディスプレイで行う

そのサウンドとともに、2.4Lターボのハイブリッドシステムはダイナミックな加速性能を発揮します。

ターボエンジンというとターボラグが気になるところですが、RX500h Fスポーツパフォーマンスは、ターボラグを前後モーターがアシストすることで、アクセル操作に対する駆動力の応答遅れを防ぎ、リニアでパワフルな加速性能を発揮します。

ドアを開閉するレバー
ドアを開閉するレバー

ほかのレクサスに搭載されているハイブリッド車のモーターによる走行割合が約80%なのに対して、このRX500h Fスポーツパフォーマンスは約20%台と、圧倒的にエンジンを主体として走行しています。

このハイパワーなハイブリッドシステムを見事に調律して、安定した走行性能を発揮するのが、DIRECT4と呼ばれる4WDシステムです。

マークレビンソンのオーディオを装着
マークレビンソンのオーディオを装着

このシステムの駆動力配分制御は、車輪速センサー、加速度センサー、舵角センサーなどの情報を用いて、前後輪の駆動力配分比を100:0~20:80 の間で制御し、発進加速性、操縦安定性の向上、低燃費に貢献しています。

発進時、直進加速時は、車両のピッチングを抑え、ダイレクトな加速感が得られるように、前輪:後輪=60:40~40:60程度で制御。コーナリング時には車速、舵角などの情報を用いて、走行状態に合わせた駆動力配分とすることで、優れた操縦安定性を達成しています。

ラゲッジのスイッチでリアシートの背もたれを倒すことができる
ラゲッジのスイッチでリアシートの背もたれを倒すことができる

走行シーンに合わせて、トラクション性能の確保や車両のピッチングを抑えながら、クルマがドライバーの思いどおりに動く気持ち良さを実現。レクサスが培ってきた電動化技術と車両運動制御技術を融合し、ドライバーがクルマと対話できる走りを具現化しています。

このRX500h Fスポーツパフォーマンスの、公道で意のままに操れて気持ち良い走行フィールは、メルセデスAMGに近い仕上がりと感じました。

ラゲッジに家庭用電気機器を使えるコンセントを設置
ラゲッジに家庭用電気機器を使えるコンセントを設置

当初は900万円という価格を見て高いと思いましたが、試乗するとその印象は間違えていたと感じました。2030年にはレクサスの新車販売はすべてBEV(バッテリー電気自動車)になると宣言しています。

そのレクサスがBEVメーカーになる前に乗っておきたい一台として、RX500h Fスポーツパフォーマンスは外せないモデルと言えます。

(文・写真:萩原 文博)

この記事の著者

萩原 文博 近影

萩原 文博

車好きの家庭教師の影響で、中学生の時に車好きが開花。その後高校生になるとOPTIONと中古車情報誌を買い、免許証もないのに悪友と一緒にチューニングを妄想する日々を過ごしました。高校3年の受験直前に東京オートサロンを初体験。
そして大学在学中に読みふけった中古車情報誌の編集部にアルバイトとして働き業界デビュー。その後、10年会社員を務めて、2006年からフリーランスとなりました。元々編集者なので、車の魅力だけでなく、車に関する情報を伝えられるように日々活動しています!
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