ホンダのミニバン「ジェイド」デビュー。「ストリーム」の後継はステーションワゴン風でスタイリッシュ【今日は何の日?2月12日】

■乗用車ライクなミニバンの人気が低迷し始めた頃に登場

2015(平成27)年2月12日、ホンダは新型「ジェイド」を発表、翌日から発売が始まりました。ステーションワゴンのように背が低く、ミニバン並みの居住性を確保したワゴン風ミニバン。2014年に生産終了した「ストリーム」の後継ですが、販売は苦しみました。

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2015年にデビューした5ナンバーミニバンのジェイド


●コンパクトミニバンのパイオニアとなった初代ストリーム

2000年にデビューした初代ストリームは、1994年に登場して大ヒットした「オデッセイ」よりも背の低い、扱いやすい5ナンバーのコンパクトミニバンとして、新たな市場を開拓しました。

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2000年にデビューしたストリーム。5ナンバーミニバンとして大ヒット

シビックのプラットフォームを延長して、従来のミニバンにない低重心・低床パッケージングによって、コンパクトながら3列シート7人乗りの室内空間と流麗なスタイリングを両立、またセダン並みの乗り心地も魅力でした。

コンパクトで小回りの利くミニバンとして人気を集めたストリームは、販売から10ヶ月で10万台を超える大ヒットモデルとなりました。

ところが、2003年に同じコンセプトのトヨタ「ウィッシュ」が登場すると、状況は反転。ウィッシュの勢いに押され、その後販売台数は徐々に落ち込み、結局ストリームは2014年に生産を終え、2世代でその歴史に幕を下ろしたのです。

●スタイリッシュなハイブリッドミニバンも、人気獲得はならず

ジェイドは、ステーションワゴンのように全高が低く、ミニバン並みの居住性を確保したワゴン風ミニバンで、ストリームとオデッセイとの統合を目指したモデルでした。

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ジェイク搭載のi-DCDハイブリッドシステム

当初は3列シートのみの設定で、パワートレインはDCT(デュアルクラッチトランスミッション)とモーターを組み合わせた「i-DCD」を搭載したハイブリッド専用車でした。スタイリッシュさを強調するため、後席ドアはスライド式でなくヒンジ式を採用。さらに、最新の安全運転支援システム「Honda SENSING」も搭載されました。

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ジェイドのシートアレンジ。5ナンバーながら余裕の3列シートを用意

流れるようなフォルムとハイブリッドの小気味の良い走り、ミニバントップクラスの燃費は評価されましたが、販売は伸びず2020年7月に生産終了となりました。2000年前後にブームとなっていた背の低い乗用車ライクなミニバンの人気は、この頃にはすでに低迷していたのです。

●遅れて登場したステップワゴンの陰に埋もれたジェイド

ジェイドの登場から僅か2ヶ月後に、同じ5ナンバーミニバン「ステップワゴン」のモデルチェンジが行われ、5代目が登場したことも、ジェイドの販売に影響を与えました。

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2015年ジェイドデビューの2ヶ月後に登場した5代目ステップワゴン

1996年にデビューしたホンダの初代ステップワゴンは、低床化と高いルーフによって、5ナンバーながら余裕の3列シートを実現。当時5ナンバーサイズのミニバンは画期的で、発売から3年間ミニバンの首位を独走しました。5代目ステップワゴンもまたジェイドよりもコンパクトながら、車高が300mm以上高いボクシーなスタイリングで、室内空間の広さがアピールポイントでした。

2015年当時、ミニバン市場の要求は、乗用車ライクなスタイリッシュさよりも、居住性に優れた実用性が重視されるように変化していました。そのため、ジェイドはステップワゴン人気の陰に隠れて、存在感を示すことができなかったのです。


オデッセイが火付け役となった乗用車ライクなミニバンは、2010年頃から人気に陰りが見え始め、両側スライドドア(乗降のしやすさ)を配備した車高の高い(室内の広い)実用的なミニバンが人気となり始めました。ジェイドは究極の乗用車ライクなスタイリッシュ・ミニバンだったのですが、登場時点で時代の主流は別な方向へと大きく曲がり始めていたようです。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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