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■「重ステ」など流行語も生んだ、今は無き装備たち
最近のクルマといえば、パワーウインドウやパワーステアリングは当たり前、ミニバンなら電動で開閉するパワースライドドアですし、自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)や高速道路でのハンズフリー走行など、どんどん便利になっていますよね。
ところが、ひと昔前のクルマでは、シフトチェンジはシフトノブとクラッチで操作するマニュアルが当然でしたし、ウインドウの開閉さえハンドルを回して行うなど、「なんでも手動」が当たり前でした。
でも、そんな一見面倒な装備は、実は旧車乗りの心をグッとつかむ場合も多いのも確か。特に、昔からのクルマ好きは、当時のままの装備に心ひかれる人も多いでしょう。
では実際に、旧車乗りの多くは、旧車といえばどんな装備を思いつくのでしょうか?
旧車に特化した買取サービス「旧車王」を運営するカレント自動車では、旧車に興味のある男女215名を対象に、旧車の装備に関するアンケートを実施。旧車乗りが投票した古い装備の人気ランキングを発表しました。
●旧車の装備に「不便を感じない」人が最多
今回の調査は、2023年1月5日〜2023年1月15日の期間、インターネットによるアンケート形式で行われたものです。なお、ここでは2010年以前のクルマを旧車と定義しています。
調査では、まず「現在乗っている(乗っていた)旧車の装備について満足しているか」を質問。結果は、
1位:「特に不便さを感じることはない」 78.9%
2位:「不便に思う」 11.7%
3位:「不便さを気に入っている」 9.4%
となり、旧車乗りには、愛車の装備に満足している人が多いことが分かりました。
一方で、次に多かったのは「不便に思う」でしたから、やはり旧車には今のクルマほど便利でないことを感じている人も一定数いるようです。
ただし、3位の「不便さを気に入っている」という人も9.4%ながらいることで、愛車の装備に不便な点を感じつつも、それがかえって魅力だと思う人も少数派ながらいることも分かります。
●手動が当たり前だった旧車の装備を人気投票
そして、次が本題です。旧車乗り215名に「旧車の装備と聞いて思い浮かぶもの」という質問(複数回答可)を行い、以下のような結果となりました。
1位:「シガーライター&灰皿」 103票
2位:「カセットデッキ」 97票
3位:「手動ウィンドウ」 95票
4位:「重たいステアリング」 88票
5位:「フェンダーミラー」 80票
※上位5位を抜粋
いずれも、昔からクルマに乗っている人には懐かしい装備ばかりですね。特に昭和の時代からクルマに乗る筆者の場合は若い時代を思い出し、ちょっとグッとくるものもあります。
逆に、若い世代などでは知らない人も多いのではないかと思うので、少し説明します。
●車内での喫煙が一般的だった時代の装備
1位となった「シガーライター&灰皿」は、文字通りタバコに火を付けるためのライターと灰皿のことで、昔のクルマにはインストルメントパネルの中央部、オーディオやエアコンスイッチ部付近などにありました。
昔は、クルマを運転しながらタバコを吸うことが一般的だったので、運転席から手が届く場所にあったんですね。
なお、シガーライターは、ライターを外すと電源ソケットがあり、そこからアクセサリー電源もとれました。
今のクルマでは、シガーライターや灰皿があった箇所に、USBソケットや電源ソケットが付いているモデルも多いのは、その名残かもしれませんね。
●音楽を聞くのはカセットテープが主流だった
2位の「カセットデッキ」は、いわゆるカセットテープで音楽を聴くためのもの。昔は、手軽に持ち運びができる音楽の音源といえばカセットテープでしたからね。高速道路のSAやPAでは、よく人気歌手や流行歌などのカセットテープが売られていたものです。
調査を行ったカレント自動車によれば、
「カセットデッキは1970年前半から1980年代頃まで使われ、その後CDに移行」したといいます。また、最近のクルマでは、
「ディスプレイオーディオでスマホと連携して音楽を聴いたり、Bluetoothで聴くのが主流になってきているくらいなので、カセットデッキと聞くとかなり懐かしい装備だと感じます」
と、この装備について解説しています。
●ウインドウも手動で開閉
3位に入ったのは「手動ウィンドウ」。
昔のクルマは、サイドウインドウの開閉はドア内側のハンドルを使って行っていたのです。現在でも軽トラックや一部の車種には手動ウィンドウを採用しているものもあるようですが、かなり珍しい装備だとはいえます。
4位に入ったのは「重たいステアリング」。昔のクルマには、ハンドルを回すなど操作をアシストするいわゆる「パワステ」、パワーステアリングというものはなかったので、特に、駐車時など低速でハンドルを切る際は重たかったことを意味します。
ちなみに、手動ウィンドウはその昔「手巻き寿司」、重たいステアリングはパワステに対して「重ステ」といった愛称もあり、クルマ好き同士の間で流行語となりました。いずれも今では死語ですが、当時を知る人には懐かしい言葉ではないでしょうか。
●タクシーなどでは今でも装着車があるフェンダーミラー
5位の「フェンダーミラー」とは、左右フロントフェンダーについているサイドミラーのことです。
当時は、サイドミラーといえばフェンダー部に装着されていることが当たり前だったのです。
現在は、ドア左右に装着される「ドアミラー」が普通。さらに、最近は、ミラーの代わりにカメラが付いた「デジタルサイドミラー」というものまで登場しています。
ちなみに、デジタルサイドミラーは、悪天候時などでも後方確認時などの視認性を確保するといった特徴を持ち、採用実績はまだ少ないですが、レクサスのセダンモデル「ES」や、ホンダのEV「ホンダe」などに搭載されています。
一方で、フェンダーミラーは、左右後部の視認性が意外にいいということで、タクシーなどでは今でも装着している車両も、少なくはなりましたが存在します。
●旧車に欲しい快適装備の1位はスマートキー
ちなみに、今回の調査では、旧車乗りに「欲しい快適装備」も質問。結果は、
1位:「スマートキー」 66票
2位:「LEDヘッドライト」 65票
3位:「エアコン」 58票
4位:「パワーステアリング」 46票
5位:「自動追従機能」28票
※上位5位を抜粋
となっています。遠隔でドアの開閉などができるスマートキーをはじめ、どれも今では一般的となった装備ですが、やはり旧車には付いていないものも多いようです。
ともあれ、旧車乗りの多くは、装備が「不便」であっても、それを上回る魅力が愛車にあることで乗り続けているようです。
よく家電などでも、昭和の製品をいまだに愛用する人がいますから、クルマでも、古いものの良さを愛する人が一定数いることがよく分かりますよね。
(文:平塚直樹 *写真はすべてイメージです)