超大型本格オフローダーのトヨタ「メガクルーザー」デビュー。陸上自衛隊の高機動車を民生用に仕立てて市場に投入【今日は何の日?1月9日】

■6年間でたった132台しか世に出ていない希少なオフローダー

1996(平成8)年1月9日、トヨタの「メガクルーザー」が発売されました。もともとは、自衛隊で活躍しているジープ型車両である高機動車を民生用にリメイクして市販化したモデルですが、1996年から2001年末までの6年間で、僅か132台しか登録されなかった非常にレアなクルマとなっています。

1996年にデビューしたメガクルーザー。自衛隊の高機動車を市販化した本格オフローダー
1996年にデビューしたメガクルーザー。自衛隊の高機動車を市販化した本格オフローダー

●高機動車(コウキ)は、陸上自衛隊の人員転送用車両

メガクルーザーの起源は、1951年に自衛隊の前身である警察予備隊が使う制式車両の入札のため、試作した小型4輪駆動車に遡ります。この時落札され採用されることになったのは、米国カイザー・ウィリス社と技術提携していた中日本重工業(現在の三菱重工のルーツのひとつ)の「三菱ジープ」でした。

1951年にデビューしたトヨタジープ BJ型
1951年にデビューしたトヨタジープ BJ型

この競合に参加していた他の車両に、トヨタ「トヨタジープBJ」と日産「4W60ジープ」もあったのですが、その後、“ジープ”の名がウィリスオーバーランド社の商標であることから、トヨタは「ランドクルーザー」、日産は「パトロール」と名乗り、市販化されたのです。

その後自衛隊では、時代とともにジープより大型で大パワーのエンジンを搭載し、高い走破性を実現する新世代の軍用4WD車のニーズが高まり、トヨタへ高機動車の開発を要請。トヨタが開発、日野自動車が生産するという形で、高機動車は1993年に全国の陸上自衛隊に配備されました。

●高機動車を民生仕様にしたメガクルーザー

高機動車を民生用に仕立てて1996年に登場したのが、メガクルーザーです。

メガクルーザーのリアビュー
メガクルーザーのリアビュー

メガという名がついているだけあって、その大きさは規格外。クラウンの全長4,910mm、全幅1,800mm、車重1,900kgに対して、メガクルーザーは全長5,090mm、全幅2,170mm、車重2,850kgと、まさしく名前通りメガトン級です。

エンジンには、トルクフルな4.1L直4ディーゼルターボを搭載、37インチタイヤを履き、センターデフのフルタイム4WD、4輪独立のダブルウィッシュボーンなどで、どこでも走破できる高い機能を装備しています。ちなみに、車両価格は962万円です。

JAF災害対策指揮車として活躍してもいたメガクルーザー
JAF災害対策指揮車として活躍してもいたメガクルーザー

“和製ハマー”と呼ばれるメガクルーザーですが、狭い日本では大きすぎて日常的に使うのはさすがに不向きで、6年間の販売台数は、僅か132台でした。もともと自衛隊で災害時の救助や復旧作業などで活躍していたメガクルーザーですので、消防署や地方公共団体で使われ活躍してもいました。

●ハマーも同様に軍用4WD車を市販化したモデル

2002年にデビューしたハマーH2
2002年にデビューしたハマーH2

米軍は、自衛隊より先んじて1980年代に軍用4WDモデル「ハンヴィー」の生産を1985年から開始。ジープをより大型化して、高出力、高走破性を持ったハンヴィーは、米軍の軍用モデルとして一気に普及しました。

そして俳優のアーノルド・シュワルツネッガー氏の要望により、GMは1992年から民間仕様の「ハマー(H1)」として販売を開始。ボディは、全長4,686mm、全幅2,197mm、車重3,091~3,684kg。エンジンは、GM製の6.2L&6.5L V8ディーゼルOHVで最高出力198PS/最大トルク59.4kgmを発揮。2006年にはいすゞ製の6.6Lディーゼルが搭載されてもいました。

H1に続きH2、H3が市場に投入されましたが、残念ながら2010年に販売を終了。しかし、2022年にEVとして復活し、大きな注目を集めています。


かく言う私もハマーは見たことはありますが、残念ながらメガクルーザーには出会ったことはありません。しかし、ベースである自衛隊向けの高機動車は、現在も製造されているそうで、公道を移動中の高機動車は見かけたことがあります。再び大きな注目を集める民間での力強いクルマが、現れないとは言えませんね。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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