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■トヨペットクラウン(初代クラウン)は、完全オリジナルの純国産車
1955(昭和30)年1月7日、初代クラウンである「トヨペットクラウン」がデビューしました。今から68年も前のことです。
戦後間もない時期に多くの国内自動車メーカーが欧米で生産されたパーツ組み立てのノックダウン生産を選択する中で、トヨタが目指したのは完全オリジナルの純国産車、それがトヨペットクラウンでした。
●豊田喜一郎の志の高さが生んだトヨペットクラウン
トヨタの実質的な創業者である豊田喜一郎が目指したのは、完全オリジナルの国産車を製造すること。
戦前の1935年に初めての乗用車「AA型乗用車」、戦後直後の1947年には「トヨペットSA型」を販売しましたが、いずれもまだ乗り心地が悪く、耐久信頼性にも課題がありました。それらの経験を糧に完成したのが、トヨペットクラウンでした。
世界レベルを目指したトヨペットクラウンには、多くの新しい技術が採用されています。エンジンは、1.5Lの4気筒OHCで48PSを発揮、サスペンションは前輪に独立懸架(ダブルウィッシュボーン式)を採用。
日本の道路事情に合わせて乗り心地を向上させ、最高速は100km/hを超えました。クルマの出来栄えもまた、当時の外国部品で組み立てた国内車より優れていたので高い人気を集めました。
こうして完全オリジナルのトヨペットクラウンの登場がトリガーとなり、追随する形でさまざまなメーカーからオリジナル乗用車が発売され、日本における本格的なモータリゼーションが始まりました。トヨペットクラウンは名車という称号だけでなく、日本の自動車産業の発展の礎となった大きな意味を持つ存在なのです。
●クラウンの歴史を簡単に振り返ってみましょう
・2代目クラウン(1962~1967年)
初のモデルチェンジによって、より広く長く低いヨーロピアンスタイルに変貌。高速道路の整備が進む中、高剛性の「X型プラットフォーム」の採用、国産初のV型8気筒エンジンを搭載したモデルも登場。
・3代目クラウン(1967~1971年)
「ペリメーター・フレーム」を採用し、低床化を実現。静粛性や乗り心地を改良し、公用車でなく、高級自家用車を目指したクルマに変貌。
・4代目クラウン(1971~1974年)
個性的すぎるスタイルであったため、落ち着いた顧客層には受け入れられず、3年の短命で終了。
・5代目クラウン(1974~1979年)
失敗作と言われた4代目の反省を受け、重厚さと安定感を強調したスタイルに原点回帰。
・6代目クラウン(1979~1983年)
豪華さばかりでなく、先進技術も充実。厳しい排出ガス規制をクリアしながら、クラウン初の直列6気筒ターボエンジン、電子制御AT、前席パワーシートなどの技術も採用。
・7代目クラウン(1983~1987年)
“いつかは、クラウン”のキャッチコピーは、多くの人の心を掴みました。日本初のスーパーチャージャー搭載とともに、4輪独立懸架サスや4輪ESC(横滑り防止)など、機能はさらに充実。
・8代目クラウン(1987~1991年)
バブル絶頂期、高級志向がもてはやされ、クラウンも贅沢装備と最新技術を採用し、バブルの象徴のような、4L V型8気筒の大排気量エンジンが登場。
・9代目クラウン(1991~1995年)
高級輸入車に負けない品質は確保するも、バブル崩壊で売れ行きは不調。
・10代目クラウン(1995~1999年)
“ペリメーター・フレーム”から“モノコック”ボディに変更し、先代より100kg以上軽量に。重厚ながら、快活なクラウンへと変貌。
・11代目クラウン(1999~2003年)
若い世代にも目を向け、ターボを復活させたスポーツモデル「アスリート」も登場。一方で、新開発のマイルドハイブリッドを搭載。
・12代目クラウン(2003~2008年)
過去のしがらみを捨て、「ゼロクラウン」と呼ばれました。直列6気筒からV型6気筒へ、プラットフォームは“Nプラットフォーム”へ変更し、多くの仕様を刷新。
・13代目クラウン(2008~2012年)
本格的なハイブリッドや安全技術「プリクラッシュ・セーフティ・システム」によって、環境性能や安全技術が進み、高級感だけでない新しいクラウンをアピール。
・14代目クラウン(2012~2018年)
デザインや内装、パワートレインなどすべてを刷新。環境性能や安全性能、走行性能をさらにレベルアップ。ピンクや青色、若草色などのボディ色を限定販売して、大きな話題に。
・15代目クラウン(2018~2022年)
“TNGA”をベースにしたプラットフォームと、高効率ダイナミックフォースエンジンとハイブリッドエンジン、さらに先進の運転支援技術、コネクテッド技術を採用して先進性をアピール。
2022年9月には大胆に変貌した16代目、クロスオーバータイプのクラウンの発売が始まりました。1955年に登場して以降、変革を重ねてきましたが、これほど大きく変貌した“型破りなクラウン”は初めてです。
新型クラウンに見られる“革新と挑戦”が評価される一方で、往年のクラウンファンの中には“こんなのはクラウンでない”という人もいるとか。伝統あるクラウンだからこその、奥深い受けとられ方なのかもしれませんね。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。
(Mr.ソラン)