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■つなぎ目の少ないシームレスなボディ
EV専用プラットフォームを使ったメルセデス・ベンツのバッテリーEV(ピュアEV)であるEQSは、巨大4ドアクーペのようなエクステリア、超が付くほど先進的なインテリアが目に飛び込んできます。
ここでは、内外装のデザインや特徴的な装備についてピックアップします。
ボディサイズは、全長5225×全幅1925×全高1520mmで、ホイールベースは3210mm。
内燃機関仕様の「S 400 d Long」の全長5290×全幅1920×全高1505mm、ホイールベース3215mmよりも60mmほど全長は短いものの、この巨体になってくると、見た目ではほとんど差を抱かせないはず。
また、近年のメルセデス各モデルは、燃費向上に必須である空力性能の高さを感じさせる滑らかなボディ表面が印象的です。セダンであってもクーペルックといえる流麗なボディラインが目を惹きます。
そのため、遠目から見ると似通って見えるモデルもあるのは、デザイン言語に基づいた造形であるのはもちろん、空力性能を追求していった結果ともいえます。
エンジンが搭載されないEQSは、前後オーバーハングが短いのも特徴で、BEVであることを印象付けるのと同時に最新技術によるフラッシュサーフェイス化を実現しているように映ります。
近年のメルセデスは、官能的純粋と表現する「Sensual Purity(センシュアルピュリティ)」という思想のもと、エクステリアデザインを構築していて、EQSもグラマラスなボディラインを基調に、継ぎ目が少ないシームレスなデザインが与えられています。
Mercedes-AMG初となるBEVでもある「EQS 53 4MATIC+」は、こうしたデザインを基調にしながらもアグレッシブなディテールを備えています。
EVらしさがあるのは、「ブラックパネル」と呼ばれるユニットに統合されたフロントマスク。超音波センサーをはじめ、カメラ、レーダーセンサーなどの先進安全装備、運転支援向けのセンサーが車外から見えないように組み込まれています。
また、左右フェンダーまで回り込んだボンネットも特徴的。こちらもシームレスなデザインになっているだけでなく、高速走行時の揚力を抑える役割も担っているそう。
なお、ボンネットはユーザーでは開閉できず、車内にもボンネットオープナーは見当たりませんでした。ボンネットは、室内用エアフィルター交換などのメンテナンスの際に、ディーラーでのみ開閉可能。ただし、ウォッシャー液補充のため、左フェンダー側面にフラップが配置されています。
全車標準の格納式シームレスドアハンドルも燃費向上策の一環で、押すとポップアップする最近流行りの方式ですが、筆者は慣れるまで触れても開かずに戸惑いました。押すように触れると開くため、コツをつかめば何てことはなかったのですが。
また、リヤまわりでは、テールゲートスポイラーと横一文字のリヤコンビランプ(ライトバンド)が目を惹きます。
●有機ELディスプレイを含めた3つのディスプレイとARヘッドアップディスプレイを用意
インテリアは、ひと昔前であればコンセプトカーのような未来的な仕立て。
Honda eは、サイドカメラミラーシステムのモニターを含めると5つのディスプレイが横並びになっていますが、EQSの「MBUXハイパースクリーン」は、ディスプレイが3つ配置されています。とはいえ、車両価格的にも当然ですが、先進性ではEQSが圧倒しています。
3つの画面は、12.3インチのメーターディスプレイ、17.7インチのセンターディスプレイ、12.3インチの助手席前ディスプレイで、センターと助手席前は有機ELを採用。さらに、ARヘッドアップディスプレイ(もしくはヘッドアップディスプレイ)もタイプ別設定。
この「MBUXハイパースクリーン」は「EQS 53 4MATIC+」に標準で、「EQS 450+」は「デジタルインテリアパッケージ」としてオプション設定です。
この3つのディスプレイとヘッドアップディスプレイにナビ画面(ヘッドアップディスプレイはナビの情報)を表示することもできます。助手席前のディスプレイでは、Webブラウザ、USBメモリーに保存された動画コンテンツ、設定画面の操作などが可能。
なお、走行中に動画コンテンツは再生されず、走行中のコンテンツ表示には、Bluetoothヘッドフォンやイヤフォンのペアリングが必要(TV映像は、走行中は映りません)。
ドライバーが助手席側を見ていると車両が判断すると自動減光され、見えなくなるそう。助手席乗員は、ヘッドフォンなどを使うことで、エンタメを楽しめるようになっています。
●最適な場所での充電スポットを提案してくれるナビ機能も搭載
そのほか、自然対話式音声認識機能を備える「MBUX」では、BEVならではの「Electric Intelligence ナビゲーション」が搭載されています。
こちらは、ナビのマップデータから得た勾配や充電ステーションの位置などの情報、車両の充電状況、気温などをナビが総合的に判断し、どこで充電するのがいいのかも含めて適切なルートを案内が提供される機能。
もちろん、充電スポットの情報をナビ上に表示することもできます。「MBUX」ではほかにも、出発時刻に合わせたプリエントリークライメートコントロールの設定、エネルギーフローの表示はもちろん、最大充電電流の設定も可能。音声操作で「充電ステーションを探して」「出発時刻を8時に設定して」などにも対応しています。
EQSの多岐にわたる機能を使いこなすには、相当慣れが必要のように思えますが、優秀な自然対話式音声認識機能である「MBUX」がフォローしてくれます。
EQSから初採用された大型HEPAフィルター(High Efficiency Particulate Air)による「エナジャイジングエアコントロールプラス」もトピックス。
車内外の大気状況をモニターし、「MBUX」のメニューで確認できる機能です。つまり、空気の見える化といえます。HEPAフィルターが、車内の飛散粒子を削減し、状況に応じて外気換気、車内循環を選択します。
車内外にPM2.5対応の粒子センサーを備えるほか、HEPAフィルターは活性炭も使い花粉、PM2.5(99%除去)、NOxなどの微粒子もキャッチし、ウイルス対策では、ヨーロッパのテストをクリア。ニオイも軽減するそうです。
また、積載性を特徴付けているのは、大開口部と奥行きのあるフロアです。
巨体を活かし、通常時でも610L、最大時は1770Lまで拡大する大容量。後方にいくほど、ルーフラインが寝ている(下がっている)ため、高さのある荷物は向かなそうですが、日常使いや大人4人での数泊のドライブでも不足はなさそうです。
(文:塚田勝弘/写真:小林和久)