トヨタ「RAV4L V EV」発売。EVのポテンシャルを確認するフリート販売を開始【今日は何の日?11月29日】

■RAV4ベースの電気自動車「RAV4L V EV」、インダクティブ充電方式を採用

1999(平成11)年11月29日、トヨタは電気自動車「RAV4L V(ファイブ) EV」にインダクティブ充電仕様車を設定して、フリート販売を始めました。インダクティブ充電とは、トランスのように電磁誘導を利用して非接触で電力を供給する方式の充電器です。

1999年に発売(フリート販売)のRAV4 V EV
1999年に発売(フリート販売)のRAV4 V EV

●実車走行の実績から様々な情報を抽出するためのフリート販売

ベースのRAV4は、1994年にデビューして、乗用車ベースの都会派SUVとして大ヒットしました。

RAV4L V EVは、交流同期モーターやインバーター、シール型ニッケル水素バッテリーなどで構成され、車重はベースに対して約360kg増大。モーターの最高出力は50kW(68PS)・最大トルクは190Nm(19.4kgm)で、最高速度は125km/hを記録しました。満充電に要する時間は約6時間(DC200V)、満充電時の航続距離は215kmです。

1994年発売のRAV4、都会派SUVで大ヒット
1994年発売のRAV4、都会派SUVで大ヒット

RAV4L V EVは、特定の大口カスタマーに買い戻し権付で販売するフリート販売で対応。車両価格は495万円に設定されていましたが、販売が目的でなくEVの実車走行実績を積んで、技術的なさまざまな情報を抽出するのが目的です。

フリート販売は、市場実績のない新しい技術を採用したクルマを一般ユーザーに販売する前に、メーカーが行う手法のひとつです。

●現在は接触充電が主流だが、将来的にはワイヤレス充電へ

充電方式には、接触(コンダクティブ)充電方式と非接触充電方式のインダクティブ充電やワイヤレス充電などがあります。

1999年発売のLAV4 V EVの運転席周り、バッテリー残量計を装備
1999年発売のLAV4 V EVの運転席周り、バッテリー残量計を装備

接触充電は、現在主流の充電ケーブルを介して金属接点によって電力を転送する充電方式です。100Vと200Vの普通充電と、高電圧によって大電力を充電する急速充電があります。

RAV4Lが採用した非接触のインダクティブ方式は、卓球のラケットのような充電プラグを、クルマ側に装着したスリット状の充電インレットに差し込んで、電磁誘導によって電力を転送する方式です。

ワイヤレス充電のイメージ図
ワイヤレス充電のイメージ図

一方、最近注目されているのが、非接触のワイヤレス充電です。ワイヤレス充電は、充電ケーブルを接続することなく、駐車場に埋め込んだ給電装置からクルマの床下に搭載した受電装置へ電磁誘導や磁界共振作用を利用して、電力を給電するシステムです。

接続ケーブルを繋ぐことなく充電の手間が省け、電動化や自動運転技術にとっても、非常に重要で有望な技術です。

●将来有望なワイヤレス充電、まだ課題も多い

スマホでワイヤレス充電が実用化されていますが、これは送電可能距離が短い電磁誘導式です。電気自動車では、クルマの地上高の距離でも効率よく給電できる磁界共振方式が主流となっています。すでに自動車メーカーや電機系メーカー、大学などで実証試験が行われ、技術的には実用段階に入り、国際標準化・規格化が進められています。

ただし、標準化・規格化が進んだとしても、ワイヤレス充電のための駐車場のインフラ整備が必要で、一方の受電装置を搭載するクルマ側は、高電圧に対する安全性やコストアップを克服しなければいけません。

ワイヤレス充電が実用化されれば、道路に給電装置を埋め込んで走りながら充電する、走行中ワイヤレス充電が次の目標となります。


RAV4Lで採用されたインダクティブ充電方式は、現在採用はほとんどなく、目標はワイヤレス充電へ向かっています。ワイヤレス充電が実現されれば、ユーザーはケーブルを接続するという充電作業から解放されることになります。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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