航続距離は561kmのフォルクスワーゲン「ID.4」日本上陸。BEV専用VWの価格は499万9000円〜636万5000円

■航続距離はエントリー仕様が388km、上級グレードが561km

フォルクスワーゲンID.4。フロントビュー
フォルクスワーゲンのバッテリーEV「ID.4」の走り

2022年11月22日、フォルクスワーゲンのバッテリーEV「ID.4」が発売されました。

EV専用プラットフォームを使った世界戦略車であり、日本向けにはe-ゴルフ以来のバッテリーEVになります。日本仕様のボディサイズは、全長4585×全幅1850×全高1640mm。

アウディ「Q4 e-tron」とブランド違いの兄弟車といえる存在で、「Q4 e-tron」は、全長4590×全幅1865×全高1630mmとなっています。

フォルクスワーゲン「ID.4」は、2タイプの導入記念仕様の「Launch Edition」からの上陸になります。

フォルクスワーゲンID.4。リヤビュー
電動SUVの「ID.4」のリヤビュー

まず日本導入へ導入するのが、「ID.4 lite Launch Edition」および「ID.4 Pro Launch Edition」。

バッテリーEV専用の「モジュラー・エレクトリックドライブ・マトリックス(MEB)」をベースに、2タイプの駆動用バッテリーが設定され、リヤモーターが後輪を駆動します。

この「MEB」アーキテクチャーは、大容量バッテリーを前後アクスル間のアンダーボディに搭載。長い航続距離を確保するとともに、ロングホイールベース・ショートオーバーハング化によって1クラス上のモデルに匹敵するキャビンを備えています。

フォルクスワーゲンID.4。サイドビュー
フォルクスワーゲンID.4のサイドビュー

エントリー仕様である「ID.4 lite Launch Edition」は、52kWの駆動用バッテリーを積み、125kW(170PS)/310Nmのモーターを搭載。WLTCモードによる航続距離は388km。

上位グレードの「ID.4 Pro Launch Edition」は、77kWの大容量バッテリー、150kW(204PS)/310Nmのモーターを搭載。航続距離は、561kmとなっています。

200V普通充電、CHAdeMO(チャデモ規格)の急速充電に対応し、充電状況は充電ポートのインジケーター、ドライバーインフォメーションディスプレイ、室内の「ID.light」などで確認可能。

家庭用充電設備などの普通充電(6kW)を使った場合、「ID.4 lite Launch Edition」は、バッテリー残量0%から満充電まで約9時間、「ID.4 Pro Launch Edition」では約13時間で完了します。

フォルクスワーゲンID.4。充電ポート
充電リッドは、運転席側後方に配置。普通用、急速用を用意する

また、ID.4取扱ディーラーの158拠点に90kWの急速充電器が設置され、原則24時間365日利用できます。

さらに、アウディとポルシェがすでに加入済みの「プレミアム チャージング アライアンス(Premium Charging Alliance = PCA)」 にフォルクスワーゲンも加わります。各ブランドの販売店または、都市部に展開される90-150kW級出力の急速充電ネットワークを統合する日本国内の充電サービス事業の利用が可能。

2022年12月末時点で、日本国内約210拠点、220基(3ブランド合計)の急速充電器を、ID.4を含めた各ブランドのユーザーが利用できる予定になっています。

■スタイリッシュな電動SUV

フォルクスワーゲンID.4。フロント
フォルクスワーゲンID.4のフロントマスク

電動SUVを謳うボディフォルムは、流麗なシルエットとエッジの効いたキャラクターラインなど、最新EVにふさわしい雰囲気を漂わせています。空気抵抗値であるCd値は、0.28とSUVの中では秀逸。

一方のインテリアは、シフトレバーが廃され、ドライブモードセレクターと統合されたメーターディスプレイ、大型のセンターディスプレイが備わる未来感あふれる仕立てになっています。

なお、導入時点では半導体不足などからナビゲーションの装着がなく、スマホ連携が可能なディスプレイオーディオを搭載しています。

フォルクスワーゲンID.4。コクピット
ID.4のインパネ

キャビンに乗り込むと、前後席ともに床面が高く感じられます。床下にバッテリーを積むバッテリーEVらしく「上げ底感」を抱かせる一方で、とくに後席は床から座面先端までの高さが十分に確保されていて、ほとんど違和感を抱かせない着座感となっています。

身長171cmの筆者が運転姿勢を決めた後方に座ると、膝前にこぶしが縦に2つ、頭上にはこぶしが1つ強の余裕が残ります。

フォルクスワーゲンID.4。フロントシート
フォルクスワーゲン「ID.4」のフロントシート

床面は高くなっているものの、前席座面下につま先が入るため、窮屈ではありません。後席は背もたれが立ち気味で、高めのシートにきちんと腰掛けるような、ドイツ車に多い姿勢になります。

ラゲッジスペースは広く、通常時543Lから最大時1575Lという容量が確保されています。ラゲッジは奥行きに余裕があり、後席足元空間も広いため、4人家族でもストレスなく使えそう。

フォルクスワーゲンID.4。リヤシート
フォルクスワーゲン「ID.4」のリヤシート

安全装備では、レーンキープアシストシステムの「Lane Assist」、プリクラッシュブレーキシステムの「Front Assist」、レーンチェンジアシストシステムの「Side Assist」といった先進安全装備の搭載はもちろん、「ID.4 Pro Launch Edition」には、同一車線内全車速運転支援システムの「Travel Assist」が標準化されています。

■バッテリーEVらしい動きだが、運転のしやすさも印象的

プレス向け試乗会に用意されていた試乗車は「ID.4 Pro Launch Edition」。先述したように、最高出力150kW(204PS)/4621rpm、最大トルク310Nm/0-4621rpmというアウトプット。走り出しから非常に静かで、モーターらしい鋭い加速フィールを立ち上がりから享受できます。

フォルクスワーゲンID.4。シフトセレクター
シフトセレクターは、ひねると奥側に「D」「B」に入る。手前側にひねると「R」になり、スイッチを押すと「P」に入り、誤操作は少ない

高速道路でアクセルを踏み込むと、容易に流れをリードできる加速を瞬時に引き出せる一方で、超高級EVにありがちな、乗員が酔いそうになるような加速Gほどではなく、安心して乗れる印象を受けました。

「D」レンジに入れた状態でアクセルペダルを戻していっても、乗員の頭が振られるような回生ブレーキのフィールではないのも好印象。比較的、内燃機関車に近く、「B」にすると多少回生ブレーキが強まる程度。

フォルクスワーゲンID.4。フロントビュー
ID.4の走行イメージ

これなら内燃機関車やハイブリッド車などからでも早く慣れそうです。また、低速域では路面の凹凸に対して揺すぶられるような乗り味を示し、床下にバッテリーを積むBEVらしい動きをするものの、基本的にフラットライドといえます。

動的質感では、先述したように、静粛性の高さが際立っています。路面によっては、ロードノイズが強調されてしまうほど。

フォルクスワーゲンID.4。ラゲージコンパートメント
ID.4のラゲッジスペース

いずれにしても車内で静かに会話を楽しめるのは、内燃機関車では得られない美点といえるでしょう。

重心の低さが特徴であるBEVに加えて、リヤ駆動を採用することもあり、2140kgという重量級ボディであることをあまり感じさせない、軽快なフットワークも享受できます。なお、最小回転半径は5.4mとまずまず。

ただし、クーペのような流麗なルーフラインと小さめのサイドウインドウ、天地に低いリヤウインドウを備えたフォルムからも分かるように、斜め後方の視界はもう少し。「アラウンドビューカメラ」の視界サポートが欠かせない後方視界のように感じられました。

フォルクスワーゲンID.4。リヤビュー
ID.4のリヤまわり

静粛性の高さや、運転しやすいパワーフィールと回生ブレーキ、先進的なインテリアなどのバッテリーEVらしさと、フォルクスワーゲンらしい直進安定性の高さも光る「ID.4」。

ロングドライブの機会が多いのであれば、561kmの航続距離を確保し、同一車線内全車速運転支援システムの「Travel Assist」を備えた「ID.4 Pro Launch Edition」がオススメです。

●フォルクスワーゲン ID.4 車両本体価格

「ID.4 Lite Launch Edition」:499万9000円
「ID.4 Pro Launch Edition」:636万5000円

(文:塚田勝弘/写真:小林和久

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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