218馬力のバイクで速度を出す気にならないわけは?【バイクのコラム】

■ライディングスクールで実力のなさを自覚した

SC82_20kmh
パイロンコースで練習していると1速アイドリング+αの速度域でもコントロールできない実力に気付かされます

カタログスペックの最高出力が160kW(218P)を誇る、リッタースーパースポーツバイク「CBR1000RR-R」に乗っていると、どれだけ速いのかを聞かれることがしょっちゅうあります。

しかしながら筆者には、このリッターSSの最高速やレブリミットまで使ったフルパフォーマンスについては語れるような経験がありません。建前ではなく、高速道路でも流れに乗っていますし、アクセル全開にすることもありますが、あまりの加速に1秒も開いていられません。

なぜ、そうしたライディングになってしまうのかといえば、実力のなさを自覚しているからです。

まっすぐの道で、前も後ろもクリアであれば、アクセル全開を続けることができるかもしれませんが、様々な車両が混じり合って走っている公道で、事故なく走ろうと思うと法定速度がひとつの目安となっています。

いや、正直な話をすると、法定速度でもコントロールしきれないと思うことはしばしばです。

実際、先日ライディングスクールに行ってきました。自腹での参加でしたし、記事化の許可も得ていないので、どんなスクールだったのかは書きませんが、場所は東京サマーランドの駐車場でした。

内容としては、パイロンで設定したコースを走って、基礎的なライディングスキルを固めようというもの。CBR1000RR-Rでは1速固定状態で、速度的にもメーター読みで20km/h前後といったところでした。

そんなに低速では練習にならないと思われる方もいるでしょうが、自分のスキルでは、たまに上手く走れたと思ったら、次はラインが乱れるといった具合。20km/hでもバイクをコントロールできているとはいい難い状態だったのです。

●125cc以下でも思い通りには動かせない

Z125
一般ライダーがコントロールできる限界は125ccクラスまでという意見もよく見かけます

考えてみれば、200kgを超える車体ですから、常に安定して同じように走らせることが容易でないのは自明です。

そして、1速での低速走行でも思い通りにコントロールできないのですから、それより上の速度域で走るのに余裕があるはずありません。

過去に何度かライディングスクールに参加することで、自分のスキルを認知しているからこそ、公道という危険な環境では慎重になってしまうのでした。

こうしたライディングスクールなどでは、「一般ライダーがコントロールできるのは125cc以下の原付二種クラスまで」という話を聞くこともあります。

自分もスキルアップのために、原付二種のマニュアルバイクを持っていますし、こちらのバイクでもライディング練習会などに参加することもあります。恥ずかしながら、原付二種でも完全にコントロールできているとは、とても言えない状態です。

スキルが足りないのは自分だけで、他のライダーはバイクを完全にコントロールできるのかもしれませんが、いずれにしてもスキルに合った走りで公道走行を楽しんでほしいと思います。

●レスポンスのいいエンジンは低速で扱うのも楽しい

SC82_36kph
単なるハイパワーではなく、超絶レスポンスがいいので市街地の速度域でもエンジンを十分に味わえます

「そんなに下手くそならばバイク降りてしまえ」という声も聞こえてきますし、「お前なんかに乗られる高性能バイクがかわいそうだ」という指摘があることも承知しています。

それでも、自分がハイパワーなリッターSSに乗っている理由は、高性能エンジンは低速走行が楽しいからです。

200馬力を超えるハイパワーと聞くと、低速ではスカスカで1万rpm以上でやっとパワーが出てくるようなエンジンを想像するかもしれませんが、自分の印象では、CBR1000RR-RのSC82Eエンジンは、アイドリングからスロットルを少し回しただけでも、しっかりと期待通りのパフォーマンスを発揮します。

このバイクにはアクセル開度のメーター表示があり、全開にすると57度前後の数値になります。しかし、アクセル開度が2度と3度で明らかにエンジンの働きが異なるようなフィーリングがありますし、加速感も異なります。

このレスポンスのよさは、小排気量バイクでは味わいがたいものです。原付二種では、微妙なアクセルワークでの差が感じづらいために、ついついラフな操作になりがちです。

しかし、リッターSSは電気モーターのように微妙な操作に反応するエンジンになっています。つまり、低速でのアクセルコントロールがバイクの動きにしっかりと反映され、低速でも扱っている感覚が存分に味わえるわけです。

それが、低スキルを自認している自分がリッターSSに乗っている理由です。ピークパフォーマンスのことは語れませんが、低速域での好レスポンスを楽しんでいるのです。

自動車コラムニスト・山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
続きを見る
閉じる