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■驚異的な燃費を達成した未来のエコカー誕生
1997(平成9)年10月14日、トヨタは世界初となる量産型ハイブリッド車(HV)「プリウス」を発表、発売は同年12月18日から始まりました。
ハイブリッドシステムそのものは新しい技術ではなく、1930年代からあるものですが、それを量産小型車に適用して、圧倒的な燃費を実現したのです。
●21世紀に間に合ったハイブリッドカー
初代プリウスの原点は、1993年に社内で検討が始まった21世紀のクルマを目指した“G21プロジェクト”であり、そこには通常のガソリン車の2倍の燃費性能という大きな目標が掲げられました。
これを達成するための手段としてハイブリッドが選ばれたというか、ハイブリッドしかないというのが結論となって開発が進みました。
プリウスの原型は、発売の2年前、1995年の東京モーターショーで展示されたコンセプトカーで、直噴D-4エンジンとモーターにキャパシターを組み合わせたハイブリッドで、モーター走行はできず、エンジンをアシストするマイルドハイブリッドシステムでした。
しかしこれでは、目標の燃費を達成できなかったことから、2つのモーターと動力分割機構を組み合わせたTHSを開発。市販化までわずか2年、超特急の凄まじい開発であったことが想像されます。
●驚異的な燃費28km/Lのプリウスは世界に衝撃を与えた
プリウスは、カローラと同等のサイズの4ドアセダンで、ホイールベースを延ばして室内スペースを確保し、また燃費のために空気抵抗に優れたスタイリングを採用。空気抵抗係数(Cd)0.30は、セダンとしてはトップレベルでした。
インテリアも先進的で、大型のセンターメーター、中央部にマルチインフォメーションディスプレイを備え、オーディオやエアコンの表示に加えて、エンジンとモーター、バッテリー間のエネルギーフローを表示。
プリウスのハイブリッドシステム(THS)については、後述しますが、プリウスの10-15モード燃費は28.0km/L。一般的な4ドアセダン(スプリンター)の燃費が18.5km/L程度なので、ハイブリッドの効果は驚異的でした。
一方、車両価格は標準仕様で215万円とやや割高でしたが、当時は地球温暖化がクローズアップされた時期。特に米国では、エコカーのシンボルとしてハリウッドスターなどに愛用されるなどの後押しもあり、2000年5月までのプリウスの累計販売は3万7000台を記録しました。
●動力伝達機構によってエンジンとモーターを巧妙に制御するTHS
プリウスのハイブリッドシステム(THS)は、エンジン、2つのモーター/発電機、動力分割機構などで構成されるシリーズ・パラレル方式です。
遊星ギアを利用してエンジンとモーターを連結し、状況に応じて2つを巧みに使い分けます。通常はエンジンとバッテリーの両方の動力を適正に使い分け、バッテリーの容量に余裕があればモーター走行、また減速時にはモーターを発電機として使用してバッテリーに充電する回生ブレーキシステムを採用しています。
搭載エンジンは、プリウスのために新開発されたアトキンソンサイクルを適用した1.5L直4 DOHCエンジン。これに組み合わせるモーターは出力30kWで、エンジンとモーターを合わせた総合的なトルクは40.5kgmに達します。
初めてプリウスに乗った時にその巧みな制御に驚かされましたが、一方でブレーキなど何とも言えない違和感がありました。その後、プリウスはTHSの改良とともに進化し続け、今や燃費はもちろん、すべてにおいて他のハイブリッドの追従を許さない完成の域に達している印象です。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。
(Mr.ソラン)