CX-60はマツダのプレミアムクラス新参入への第一歩。まずはマイルドハイブリッドに試乗【マツダ・CX-60とは?】

■CX-60とは:ラージ商品群の第一弾

CX-60フロントスタイル
CX-60のフロントスタイル

マツダは2022年から投入を開始し、2023年までに導入する4種のミッドサイズSUVのことを「ラージ商品群」と呼んでいます。その最初のモデルとなるのがCX-60です。

企業として成長していくにはさまざまなアプローチがありますが、マツダのねらいは収益性の高いプレミアムクラスに参入していくことだととっていいでしょう。

基盤となる技術群をブロックとして段階的に積み上げることで、優れた技術を効率的に開発・展開する「ビルディングブロック戦略」に基づいて行われます。投入が予定されているモデルは、CX-60、CX-70、CX-80、CX-90の4種です。

CX-60リヤスタイル
CX-60のリヤスタイル

これらCX-60、CX-70、CX-80、CX-90は、既存モデルとなるCX-5やCX-50(北米の工場で生産されるスモール商品群の1車種)から上の幅広い価格帯に位置します。今回予定されている4車種はボディタイプが2つで、シート配列は2列と3列。欧州や日本には、2列シートのCX-60と3列シートのCX-80を導入。北米などの市場には、ワイドボディ2列シートのCX-70、3列シートのCX-90が導入されることになっています。

CX-60は2.5リットル直列4気筒ガソリンエンジン、3.3リットル直列6気筒ディーゼルターボ、3.3リットル直列6気筒ディーゼルターボ+モーターのマイルドハイブリッド、2.5リットル直列4気筒ガソリンエンジン+モーターのハイブリッドの4つのパワーユニットが用意されます。

●CX-60の基本概要 パッケージング:新たに開発されたFR&4WD用プラットフォームを採用

CX-60プラットフォーム
新たに開発されたCX-60のプラットフォーム。画像はマイルドハイブリッドのもの

CX-60のプラットフォームは新たに開発されたFR/4WD用のプラットフォームを採用します。マツダはロードスターを作り続けているので、FRのプラットフォームが途切れてはいませんが、ラージクラスのFR用モノコックプラットフォームとなると2000年に終了したセンティア以来、20年以上ぶりのものとなります。

CX-60のホイールベースは2870mm。全長×全幅×全高は4740×1890×1685mmで、CX-8と比べると160mm長く、50mm幅が狭く、高さは45mm低くなります。

直列6気筒のエンジンの後方には、モーターやミッションが配置。トルクコンバーターはなく、この影響もあってドライブトレーンはコンパクトにまとめられました。車内への張り出しも最小限に抑えることができたため、ドライバーがオフセットして座るといったことはなくなり、ドライビングポジションは自然な姿勢となっています。

ラゲッジルームもラージクラスにふさわしく大容量を誇っています。通常時のラゲッジルーム容量はサブトランクの93リットルを含んで570リットル。つまり、フロアボードより上の容量は477リットルということになります。最大荷室幅は約1275mm、奥行きは約975mm、高さは約817mmで、ゴルフバッグ4個を横向きに搭載できます。

●CX-60の基本概要 メカニズム:2種のエンジンを用意し、マイルドハイブリッドとPHVも設定

CX-60のエンジンルーム
CX-60のエンジンルーム

前述のように、CX-60には2.5リットルの直列4気筒2.5リットル・ガソリンエンジンと、直列6気筒3.3リットル・ディーゼルターボエンジンの2つのエンジンが用意されています。それぞれ、エンジンのみ使用するバージョンとモーターが組み合わされるバージョンがあります。4気筒ガソリンエンジンは大きなモーターが組み合わされPHVに、6気筒ディーゼルターボエンジンには小さめのモーターが組み合わされマイルドハイブリッドとなります。今回試乗したモデルは、マイルドハイブリッドです。

エンジンルームカバー外し
エンジンのカバーを外すと、さらにカバーされたエンジンが現れる

CX-60のマイルドハイブリッドシステムは、前方からエンジン-クラッチ-モーター-クラッチ-8速ATという順序に並んでいます。2つのクラッチを繋いだり切り離したりして、駆動や回生を行います。

最大の特徴は、一般的なATのようにトルクコンバーターが組み合わされないことです。トルクコンバーターはそのものにトルク増大効果がある(つまり減速機構をもつようなもの)ので、一般的なATと組み合わせることでクリープ現象を生み出すことができます。

日本は非常に渋滞の多い交通事情なのでクリープ現象があったほうが乗りやすく、いわばクリープ現象が必須ともいえます。CX-60のマイルドハイブリッドシステムでは、トルクコンバーターは採用されていませんが、エンジンとモーターアシストによってクリープ現象を生み出しています。

サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン、リヤがマルチリンク。サスペンションジオメトリーの最適化によって、減速時にフロント部分が沈み込むピッチングを防止しています。通常、減速時はフロントが沈みリヤが持ち上がりますが、リヤも沈み込む設定としたことによってクルマ全体が平行四辺形のように動き、動きを安定させています。

CX-60 4WD
4WDシステムはトランスファーを用いての機械式配分

CX-60にはさまざまなテクノロジーが採用されています。そのうちの1つ、自動ドライビングポジションガイドは、はじめてCX-60に乗り込んだときに行うもので、ガイダンスに沿ってドライビングポジションを調整することで正しいドライビングポジションとすることができます。顔認識システムが採用されていて、次回からは自動的にポジションが合わせられます。

●CX-60のデザイン:魂動の流れを汲みラージクラスのボリューム感にあふれるフォルム

CX-60フロントスタイル2
CX-60フロントスタイル

マツダのデザイン哲学である「魂動」の流れのなかにあるだけに、フォルムそのものは一連のマツダSUVと関連性の高いものを感じますが、さまざまな部分で新しい要素も多く取り入れられています。

CX-60リヤスタイル2
CX-60のリヤスタイル

デザインのコンセプトは「Noble Toughness」で、気品ある力強さと訳されるでしょう。ボディサイズが大きくなっていますが、単純に大きくなっただけではありません。直列6気筒エンジンが収められるボンネットはより長く、スパッと切り落とされ垂直配置となったフロントエンドは力強いシルエットを実現しています。フェンダーのボリューム感はより大きく強調され、ラージクラスにふさわしいものとなっています。

CX-60インパネ
CX-60のインパネ

インテリアも気品ある力強さを感じることができるものです。インパネは水平基調とすることで、よりワイド感が増した印象を受けます。コンソールもかなりの幅広で、FFモデルにはないしっかりとした存在感を示し、CX-60がFRベースのモデルであることを主張しています。

CX-60にはプレミアムモダンとプレミアムスポーツ、2タイプのプレミアムモデルが用意されます。プレミアムモダンは織物の上質さを追求し、日本の掛縫い表現するステッチ、トリム加装天然木素材の使用など日本的な要素を満載。プレミアムスポーツはキルティングのスウェード素材とナッパレザーをブラック基調でまとめたモデルです。

●CX-60の走り:どっしり落ちついた走りだが、乗り心地には課題も

CX-60 走りイメージ
どっしりと落ちついているCX-60の走り

クルマの見た目どおり、どっしりと落ちついた走りがCX-60の身上です。エンジンのスペックは254馬力/550Nmで、12馬力/153Nmのモーターがアシストします。モーターはあくまでアシスト役というイメージで、モーターが積極的に介入はしてきません。

このモデルはマイルドハイブリッドでモーターを前面に押し出すものではないし、せっかくの6気筒エンジンなのだから、モーターよりもエンジンのフィールを前面に押し出してくるのは当然のセッティングといえるでしょう。低速から力強く、グッとわき上がる550Nmのトルクはじつに快適です。モーターがアシストするのはちょっとしたトルクの落ち込み部分という印象。ミッションがトルクコンバーターレスの8ATなので、変速時に起きるトルクの変化をトルクコンバーターが吸収することがありません。

そうした部分でモーターが上手に働いて、トルクを平滑化しているという印象を受けます。変速はきわめてスムーズですが、適度なステップシフト感もあって、旧来のクルマ好きには受ける部分といえます。

CX-60は、プレミアムクラスとなるラージクラス商品群の第一弾として登場しましたが、どうもプレミアムになりきれていない部分を感じます。ディーゼルノイズは上手に押さえられている印象ですが、アイドリングストップからの再始動は少し振動が気になります。

そしてさらに気になるのが、足まわりから入る振動です。つねに細かい振動があって、プレミアムカーとしては仕上げが足りない印象。今回の試乗車であるXDハイブリッド・プレミアムスポーツは、車両本体価格が500万円を超えます。輸入車でこの価格帯でも乗り心地がイマイチなクルマはあります。でも、国産車のマツダはこの乗り心地ではお客さんが納得しないでしょう。

●CX-60のラインアップと価格:300万円アンダーから600万円オーバーまで豊富なラインアップ

CX-60イメージ
高級感を追い求め、プレミアムクラスに打って出たCX-60

かつての国産車は多くのパワーユニットを用意するクルマも多く、バリエーションも豊富でした。余談となりますが、1994年に登場した三菱のデリカスペースギアはエンジンが4種、ボディがロングとショート、ルーフタイプ4種、2WDと4WD、MTとATが複雑に組み合わされていました。さすがにそこまでではありませんが、CX-60はパワーユニットが4種、駆動方式も2種あり。グレード展開は23種にもなります。

もっともベーシックなパワーユニットが2.5リットルの直列ガソリン4気筒で、2WDの25S Sパッケージ(2WD)の299万2000円~25S エクスクルーシブ モード(4WD)の407万円までの3グレード(2WDと4WDを別カウントすると6グレード)設定。その上のパワーユニットが3.3リットル直列6気筒ディーゼルターボでXD(2WD)の323万9500円~XDエクスクルーシブモード(4WD)の465万8500円までの4グレード(2WDと4WDを別カウントすると8グレード)設定。以上がピュアエンジンモデルです。

CX-60価格表
CX-60の価格表

この上に設定されるのがハイブリッドとPHVで、ハイブリッドとPHVは全車4WDのみの設定となります。3.3リットル直列6気筒ディーゼルターボにモーターを組み合わせたマイルドハイブリッド仕様は、XD-ハイブリッド エクスクルーシブ スポーツ(モードも同価格)の505万4500円~XD-ハイブリッド プレミアム モード(スポーツも同価格)の547万2500円の4グレード設定。最上位に位置するのが2.5リットル直列4気筒ガソリンを使用するプラグインハイブリッドで、PHEV Sパッケージの539万円~PHEV プレミアム モード(スポーツも同価格)の626万4500円までの5グレード設定。

ボトムモデルとトップモデルの差は約2倍にもなります。欧州プレミアムやレクサスなどでは、ボトムモデルとトップのハイパワースポーツモデルとでは、こうした価格差を見かけることはありますが、最近の国産SUVではなかなか見ることができない価格差です。

●CX-60のまとめ:マイルドハイブリッドだけでは判断がむずかしい。更新を待て!

CX-60フロントイメージ
CX-60のフロントイメージ

マツダが再度参入しようとしているプレミアムクラスは、経済的にも余裕のあるユーザーがオーナーとなるカテゴリーです。そうしたカテゴリーにチャレンジしていくマツダの姿は、日本の自動車メーカーとして頼もしいものですし、期待も非常に大きなものとなります。

それだけ重大な出来事なので、今回の試乗では話題の直列6気筒エンジン車に試乗しましたが、この1つのパワーユニットだけで判断してはいけないような気がします。

たしかに、乗り心地などには課題が残るのですが、これが最上級となるPHEV系になると話が変わる可能性もあります。最上級がとてもいい乗り心地であれば、その下のグレードについては「さらなる快適性を求めるのであればPHEVを選ぶといいでしょう」という結論に達すると思います。プレミアムクラスなのだから、最上級を選ぶべきだという考えです。

CX-60リヤイメージ
CX-60のリヤイメージ

一方で、ここまでの質感が得られているなら、パワーユニットに多くは求めず、高級感のみを満喫したいという考えもあります。そうなると、300万円を切る価格設定をしている25S Sパッケージなどはかなりの買い得感があります。今までミニバンなどで送迎を行っていた宿泊施設なども、CX-60に変更したほうがよりプレミアムな印象が強くなるでしょう。

いずれにしても、“まとめ”を書くにはもう少しほかのグレードにも乗ったほうがいい印象。いずれは機会がやってくるので、そのときが訪れたら記事を更新していきたいと思います。

【マツダCX-60 XD-ハイブリッド プレミアムスポーツ 主要諸元】
・寸法
全長×全幅×全高(mm):4740×1890×1685
ホイールベース(mm):2870
トレッド フロント/リア(mm):1640×1645
・エンジン
排気量(cc):3283
圧縮比:15.2
最高出力( kW〈ps〉/rpm):187〈254〉/3750
最大トルク(Nm〈kgm〉/rpm):550〈56.1〉/1500-2400
燃料タイプ:軽油
燃料タンク容量(L):58
・電気駆動モーター
冷却システム:水冷方式
最高出力(kW(ps) /rpm):12.4(17)/900
最大トルク(Nm〈kgm〉/rpm):153〈15.6〉/200
・駆動用バッテリー
化学成分:リチウムイオン
容量(Ah):7.5
 セル数:12
・トランスミッション:8AT
・ドライブトレイン:4WD
・燃料消費率(WLTC km/L):21.1
・シャシー
サスペンション(F/R):ダブルウィッシュボーン/マルチリンク
タイヤサイズ:235/50R20
ホイールサイズ:20×7.5J
ブレーキタイプ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク
価格(税込):5,472,500円

(文・写真:諸星 陽一)

この記事の著者

諸星陽一

諸星陽一 近影
1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想のクルマ生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。