ヤマハの電動トライアルバイク「TY-E2.0」など3製品・サービスが2022年度グッドデザイン賞を受賞

■次世代の電動バイクがデザインでも評価を獲得

ヤマハ発動機(以下、ヤマハ)は、2022年10月7日、電動トライアルバイク「TY-E2.0」、小型船舶用の次世代電動操船システム「HARMO(ハルモ)」、自動搬送サービス 「eve auto(イヴオート)」の3製品・サービスが、2022年度グッドデザイン賞を受賞したことを発表しました。

ヤマハの電動トライアルバイクTY-E2.0などが2022年度グッドデザイン賞を獲得
TY-E2.0のフロントビュー

今回受賞したヤマハ製品のなかでも、バイク愛好家などにとって最も注目なのは、やはりTY-E2.0の受賞でしょう。

ヤマハが2022年3月に発表し、バイクの一大祭典「第49回 東京モーターサイクルショー」(3月25日〜3月27日・東京ビッグサイト)などにもお披露目されたこのモデルは、山間部にある複雑なセクションを走り抜けるトライアル競技向けに開発された100%モーターとバッテリーで走るバイク。

2022年8月には、実際にトライアル世界選手権にも挑戦し、ポテンシャルの高さも実証しています。

次世代の電動バイクへの基軸として期待されているTY-E2.0が、その走りだけでなく、デザインでも評価されたというのは、さすが「デザインのヤマハ」ですね。

●高い戦闘力を持つ電動バイク

今回、ヤマハ製品が受賞したグッドデザイン賞とは、公益財団法人日本デザイン振興会が、1957年から実施している歴史あるデザイン関連のアワードです。

ヤマハの電動トライアルバイクTY-E2.0などが2022年度グッドデザイン賞を獲得
TY-E2.0のサイドビュー

工業製品からビジネスモデル、イベントなど、幅広い領域を対象とし、日本で唯一の総合的デザイン賞として知られています。

その2022年の賞を受賞したTY-E2.0は、ヤマハが製品ライフサイクル全体のカーボンニュートラルを目指す目標に向けたアプローチのひとつとして開発している電動バイク。

2018年に初代モデル「TY-E」が発表され、2018年と2019年には世界選手権「トライアルEカップ」へも出場。ヤマハ・ワークスで活躍し、開発ライダーも務める黒山健一選手のライディングで、2年連続のランキング2位を獲得しています。

ヤマハの電動トライアルバイクTY-E2.0などが2022年度グッドデザイン賞を獲得
TY-E2.0を駆る黒山選手

今回、受賞したTY-E2.0は、そのアップデート版で、車体には初代モデルをベースに、新設計のCFRP製コンポジット(積層材)モノコックフレームを採用。パワーユニットやバッテリーのレイアウトを見直すことで、前モデルとの比較で大幅な低重心化を達成しています。

また、パワーユニットも熟成。クラッチやフライホイールなどのメカニズムと、微妙なグリップの変化を読み取る電動モーター制御の組み合わせにより、トラクション性能なども向上しています。

さらに、前モデル比で約2.5倍の容量を持つ新開発の軽量バッテリーを搭載するなどで、より戦闘力をアップしています。

ヤマハの電動トライアルバイクTY-E2.0などが2022年度グッドデザイン賞を獲得
世界最高峰の大会「2022年FIMトライアル世界選手権」の第5戦フランス大会に参戦した黒山選手とTY-E2.0

なお、TY-E2.0は、前述の通り、2022年8月27日〜28日、世界最高峰の大会「2022年FIMトライアル世界選手権」の第5戦フランス大会に参戦。

マシントラブルなどもあり、結果は残念ながら31位に終わりましたが、TY-E2.0で大会に参戦した黒山選手は、世界で「戦えるバイク」に仕上がっていたとコメント。そのパフォーマンスの高さを実感しています。

●電動トライアルバイクの可能性とは?

今回、グッドデザイン賞を受賞したTY-E2.0について、グッドデザイン賞の審査員は以下のようなコメントを発表したそうです。

「企業内の自主研究制度から生まれたイノベーションという点が興味深い。モーターサイクルメーカーの豊富な知見を生かしてライダーと観客そして環境問題の三方良しを実現したプロジェクトチームの意欲的な活動成果を高く評価する。

ヤマハの電動トライアルバイクTY-E2.0などが2022年度グッドデザイン賞を獲得
TY-E2.0のパワーユニット

電動トライアルバイクのパイオニアとして性能とスタイリングの進化に留まらず、競技フィールドの変革(室内競技としての可能性)やバランス感覚を養う新たな健康競技への発展など、新たなビジネスチャンスの創造をぜひ期待したい」

ちなみに、審査員のコメントにある通り、このバイクは、元々は、社内の自主研究制度から生まれたそうです。また、ヤマハでは、このバイクについて「FUN×EV」という開発コンセプトを掲げ、CO2を排出せず、しかも乗って楽しい新しいモデルを創出することを目的にしているそうです。

また、同じくコメントに「室内競技としての可能性」とあるのは、もしこの電動トライアルバイクが製品化などされれば、インドアでのトライアル競技などにも使えるという意味です。

ヤマハの電動トライアルバイクTY-E2.0などが2022年度グッドデザイン賞を獲得
TY-E2.0のバッテリー

トライアルのインドア競技は、その昔、日本でも開催されていましたが、現在は、排気ガスが出るガソリンエンジン車での実施は、消防法の規定などにより不可能なのだとか。でも、排気ガスが出ない電動バイクであれば、実施は可能ということですね。

トライアルは、実際に見ると、かなり迫力もありますから、ぜひ実現してもらいたいものです。

●船舶用や生産工場向け製品も受賞

なお、TY-E2.0以外で受賞したヤマハ製品では、まず、小型船舶用の次世代電動操船システム「HARMO(ハルモ)」。特に高い評価を得たデザイン100点に与えられる「グッドデザイン・ベスト100」に選出されています。

ヤマハの電動トライアルバイクTY-E2.0などが2022年度グッドデザイン賞を獲得
小型船舶用の次世代電動操船システム「HARMO(ハルモ)」

このHARMOは、環境負荷の小さな電動推進器ユニットと、船の動作を制御するリモートコントロールボックス、直感的な操作を可能とするジョイスティックなどで構成する次世代操船システムのプラットフォーム。

高い環境適応性と簡単なコントロールによって、観光地のクルーズ船などにより楽しく、より快適な「水上のロースピードモビリティ」としての価値を加えるといった特徴を持ちます。

ヤマハの電動トライアルバイクTY-E2.0などが2022年度グッドデザイン賞を獲得
動搬送サービス「eve auto(イヴオート)」

また、動搬送サービス「eve auto(イヴオート)」も受賞。これは、様々な産業現場で活躍が期待される小型EVを用いた自動搬送サービスのこと。慢性的な人手不足に悩む生産現場などで、搬送の自動化を実現するソリューションです。

主な特徴は、工場建屋内だけでなく建屋間(屋外)の走行も可能な走破性や、力強い牽引・積載力を持つこと。また、自動/手動運転を両立した車両デザインによる導入・運用しやすいパッケージなどを持ちます。

バイクはもちろん、船舶や生産工場などに向けた製品など、幅広い分野で活躍するヤマハ製品。今後も、ユニークで、すばらしいデザインの製品を期待したいですね。

(文:平塚直樹

この記事の著者

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平塚 直樹

自動車系の出版社3社を渡り歩き、流れ流れて今に至る「漂流」系フリーライター。実は、クリッカー運営母体の三栄にも在籍経験があり、10年前のクリッカー「創刊」時は、ちょっとエロい(?)カスタムカー雑誌の編集長をやっておりました。
現在は、WEBメディアをメインに紙媒体を少々、車選びやお役立ち情報、自動運転などの最新テクノロジーなどを中心に執筆しています。元々好きなバイクや最近気になるドローンなどにも進出中!
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