ホンダの究極は似ている! シビックタイプRをCBR1000RR-Rオーナー目線で乗ってみた【バイクのコラム】

■CBR1000RR-RとシビックタイプRは似ている?

CBR_honda-e
個人的にはリヤ駆動の電気自動車「Honda e」の加速フィールにCBRと似た部分を感じている

ホンダのオウンドメディア「Honda Magazine」のオリジナルコンテンツとして、シビックタイプRとCBR1000RR-R FIREBLADEの開発責任者が対談するという内容の動画が公開されていました。

四輪と二輪それぞれで究極のスポーツモデルの開発責任者が、どんなことを考え、なにを目指しているのか。非常に面白い内容で、じつは両車の目指すところにホンダの共通点があるというのも興味深いところでした。

動画については記事末にリンクを貼っておきますので、そちらでご覧ください。

さて、この対談については自分の中でも公私混同的に楽しめました。ひとつには、CBR1000RR-R FIREBLADEオーナーとして、また新型シビックタイプRに試乗する機会を得たばかりの自動車コラムニストとして参考になる部分も多かったのです。

CBR1000RR-RとシビックタイプR。同じように「R」を掲げ、最速を目指す2台にはどのような共通点があり、どこがホンダらしいのか、自分なりの感想をお伝えしようと思います。

ただし、CBR1000RR-Rの走行フィールにもっとも近いホンダの四輪車は電気自動車「Honda e」だと思っています。アイドリング付近から1万rpmまでスムースにトルクを発生するCBR1000RR-Rのエンジンが生むシームレスな加速感は、リヤ駆動の電気自動車であるHonda eのアクセルレスポンスのよさと通じるものがあると感じるからです。

●性能の片りんを感じ、究極を所有している満足

CBR1000RR-R
写真は筆者の愛機である2020年モデルのCBR1000RR-R FIREBLADE SP

さて、レースをしているわけでもなく、サーキット走行も嗜むつもりがない自分が、なぜホンダバイクのスポーツモデルにおけるフラッグシップであるCBR1000RR-Rを購入したのか。

リターンライダーが初めて乗る大型二輪としてはふさわしくないと思われるのか、事あるごとに購入理由を聞かれるのですが、その際にはいつも「量産車として最高レベルの出力を誇るエンジンと、それに見合った車体という究極のモデルを所有しているという満足感が得たかったから」と答えています。

実際、2022年の鈴鹿8耐で勝利しているようにモータースポーツの世界で活躍することを前提としたCBR1000RR-Rの性能を公道で引き出すことは不可能です。その意味ではFF世界最速を目指しつづけるシビックタイプRにしても公道では実力の100%を発揮することはできません。

仮にサーキット走行を楽しむライダー・ドライバーだったとしてもナンバー付き車両として公道で使用する限りは、つねにパフォーマンスを引き出すということは非現実的だといえます。自分だけでなく、ホンダが最速・究極を目指して開発したメカを所有しているという自己満足感で選んでいるオーナーは多いのではないでしょうか。

●躊躇なく全開にできるのが両モデルの共通点

シビックタイプR
イメージ写真同様に、最新のタイプRに初試乗したのはウェット路面だったが……

究極のハードウェアを所有する満足感があるとはいえ、法定速度の範囲で走らせることがストレスだらけであったりすれば、市販車としては評価できないという見方もあるかもしれません。

その点について、筆者の個人的な経験をお伝えすれば、心配無用といえます。

CBR1000RR-Rの999ccエンジンは218馬力という超・強心臓ですが冒頭でも触れたように、電気モーターのようにスムースに回ります。さらにアクセル(スロットル)操作に対するリニアリティも抜群。車体のほうも余裕がありますから、1速や2速でアクセル全開にすることは日常的に楽しめます。

もっとも、ハイパワー・ハイレスポンスなエンジンですからあっという間に法定速度に達してしまうので、全開を味わっていられるのは1秒もなかったりするのですが。

また、街乗りのような走りであっても、ポジションこそ慣れが必要ですが、意外なほどストレスは感じません。唯一、街乗りしていて気になるのはCBR1000RR-Rの最小回転半径の大きさくらいでしょうか。

同じ事はシビックタイプRにもいえます。

先日、シビックタイプRに初試乗することができたのはクローズドコースながらウェットでした。そんなシチュエーションでハイパワーFF車に乗るというのは不安だらけだったのですが、10mくらい動かしたところで不思議なくらいの安心感を覚え、いきなりアクセル全開にすることができたのです。フロントタイヤは空転、タコメーターの針もレブリミットまで高まりますが、けっして恐怖感はありません。

正直、筆者のスキルではCBR1000RR-Rにしろ、シビックタイプRにしろ全性能を引き出すことはできません。しかし、どちらもアクセルを全開にして、そのパフォーマンスの片りんを感じることはできます。瞬間的ですが、究極のマシンを味わっているという満足感が得られます。

共通するフィーリングを整理していくと、スキルの低いオーナーであっても躊躇なくアクセルを全開にできるという安心感があるのです。

冒頭で紹介したホンダが公開している開発責任者の対談では、扱いやすいことがホンダのDNAという話もありましたが、上手い人にとって扱いやすいだけでなく、スキルを問わず楽しめるのがホンダのスポーツモデルに共通する特徴といえるのかもしれません。

自動車コラムニスト・山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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