三菱「eKクロスEV」の走りは、軽自動車のレベルを超えた!?

■ガソリンエンジン車と同等レベルの使い勝手を実現

日産と三菱自動車が共同開発した、日産サクラと三菱eKクロスEV。

前者はアリア、リーフの末弟の新型軽EVとして打ち出しているのに対し、後者はeKクロスシリーズのEV版として位置づけられています。

そのため、eKクロスEVは「ミストブルーパール/カッパーメタリック」の専用ボディカラー、フロントフェンダー、テールゲートに備わる専用バッジなどをのぞけば、ガソリンエンジン車と見分けがつきにくくなっています。

三菱eKクロスEV
三菱eKクロスEVのエクステリア

一方、電動化に伴い、パッケージングの面でマイナスとなる影響がほとんどないのはうれしいところ。ガソリン車と同等レベルの乗降性、居住性、積載性を享受できます。

三菱eKクロスEV
写真は三菱eKクロスEVの専用ボディカラー「ミストブルーパール/カッパーメタリック」

リヤドアは、スライドではなくスイング式(ヒンジ式)ですが、ハイトワゴンらしく開口部が大きく、前後ドアともに小さいため、オープン時もそれほど気を使わずにすみます。

リヤドアの開口部足元は、若干狭くなるものの、乗降時に気になるほどではありません。さらに床面が低く、シートの座面も少し腰を下ろした高さにあり、身体の上下動も少なくすみます。

三菱eKクロスEV
三菱eKクロスEVのインパネ

運転席に収まると、日産サクラほどの先進感は覚えないものの、フル液晶の7インチメーターディスプレイ、ピアノブラック調パネルのセンタークラスターなどが、新鮮味と質感の高さを醸し出しています。

前席は、ワイドなベンチ式で、とくに運転席座面が広く、横方向のゆとりを抱かせます。ハイトワゴンらしく頭上まわりにも余裕があり、後席にも広大な頭上空間が広がります。

三菱eKクロスEV
三菱eKクロスEVのフロントシート

後席は、床から座面前端までのヒール段差が若干低め。フロアは、前席側が高くなっていて、前席座面下は広くはないですが、足が入れられる設計になっています。

なお、後席は左右別々にリクライニングが可能で、スライドは左右一体式。荷室を広げる際は、後席全体を前寄りにスライドさせるか、後席背もたれを前倒し(左右別々に前倒し可能)するかになります。さらに、ラゲッジアンダースペースには、充電用ケーブルが収まるようになっています。

●街中なら「ECO」モードでも実用上不足はなし

さて、街中から走り出すと、EVらしく発進時から力強くスムーズで、しかも静粛性の高さに驚かされます。「ECO」モードでもストップ&ゴーが続く街中であれば実用上、不足はありません。

三菱eKクロスEV
「プレミアムインテリアパッケージ」を選ぶと、ライトグレーの合成皮革&ファブリックシートになる

「NORMAL」モードにすると、力強さが増し、回生ブレーキもより利くようになります。EVらしい、よりメリハリのある走りが得られます。

高速道路に入ってから「SPORT」にすると、合流時のダッシュ力や追い越し時の力強さが増すだけでなく、回生フィールも高まり、スポーティな走りに変わります。

三菱eKクロスEV
専用メーターに表示されるドライブコンピューター

高速域のパンチ力は、最高出力を軽規制に収めるため、それなりですが、流れを容易にリードできるくらいの力はあります。

さらに、いわゆるワンペダルの「イノベーティブペダル」をオンにすれば、より回生レベルが強まり、アクセルだけでコントロールできる領域が拡大します。

また、静粛性の高さも軽自動車とは思えないレベルで、上の階級であるAセグメント、Bセグメントくらいは十分に凌駕しています。タウンスピードでのこもり音もなく、ロードノイズも抑えられています。さらに、重心が低くコーナリング時の安定感が高く、同時に乗り心地もフラットで前席に乗っている限りはかなり快適です。

●航続距離に頼りなさを感じ得ない…?

三菱eKクロスEV
走らせ方やシーズンなどによるが、180kmのカタログ値に対して、実走行距離は当然短くなる

最大の泣き所は実航続距離の短さでしょう。日常の買い物程度を想定しているとはいえ、夏場の試乗時では、充電残量93%でも143kmでした(NORMALモード時の表示)。

エアコンの効きはいいですが、涼しさを感じられる一方で、航続距離の減りが早く感じます。なお、製品評価技術基盤機構によると、日本人のクルマの運転時間は、平均約80分という調査結果もあり、そうなると夏場や冬場では、少し頼りなく感じることもありそうです。

三菱eKクロスEV
床下に充電用ケーブルが収まる

また、こうした非常に高い完成度を誇るのに、基本的には、こうした短距離走行が前提であるのは、やや「もったいない」ような気がします。

バッテリーをさらに積めば、ガソリンエンジン車と同等のパッケージングに支障をきたすだけでなく、価格も高くなり、重量増による乗り心地の悪影響などもありそう。逆に、補助金を受け取れるのはもちろん前提として、実航続距離を織り込み済みとして購入すれば、走りの質感では、軽とは思えないレベルを手にすることができます。

三菱eKクロスEV
普通充電、急速充電に対応する

なお、CEV補助金は55万円で、東京都の場合はさらに60万円(再エネ電力導入時)という地方自治体独自の補助金もあります。令和4年度のCEV補助金は、日産サクラと三菱eKクロスEVが売れているため、10月中旬~10月下旬を目処に受付終了見込みと発表されていますので、要注意です。

(文・写真:塚田 勝弘)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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