軽商用バンの新型「スズキ・スペーシア ベース」は、使いやすい荷室や多彩な装備、良好な乗降性や走りを用意

■ライバルは、ホンダN-VAN、新型タント ファンクロスなどか?

2022年8月26日(金)、スズキから軽商用バンの新型モデルである「スペーシア ベース」が発表されました。

軽乗用車でスーパーハイトワゴンのスペーシアをベースに、商用バン化したスペーシア ベースは、個別配送などのビジネス用途をメインに据えています。ライバルは、ホンダ「N-VAN」が筆頭になるはず。

スズキ スペーシア ベース
スズキ「スペーシア ベース」のエクステリア

なお、ダイハツは、2022年8月にウェイクの生産を終え、すでにホームページからも削除されています。

一方で、以前お伝えしたように、2022年秋にタントの新バリエーション「タント ファンクロス」を発売するとアナウンス済みです。

この新型「タント ファンクロス」は、すでに発売されている「スペーシア ギア」とガチンコになるはずで、もちろん、このスペーシア ベースともある程度競合するかもしれません。

スズキ スペーシア ベース
スズキ「スペーシア ベース」のリヤビュー

この新型「スペーシア ベース」とイメージが最も近いのは、「ダイハツ・ウェイク」をベースとした「ハイゼット キャディー」でしょう。残念ながらヒットしたとはいえず、ウェイクよりも先の2021年3月末でホームページから削除されています。

●はたらくクルマ、趣味の相棒として、エブリイにはないニーズを満たす

今回、スズキから発表された「スペーシア ベース」は、スペーシアの名を冠するものの、あくまで商用登録の4ナンバーになり、全国軽自動車協会連合会が発表する軽自動車の新車販売ランキングのスペーシアには加算されないそうです。

スズキ スペーシア ベース
エクステリアは、スペーシア カスタムがベース

「スペーシア ベース」が送り出された背景には、セミキャブオーバーのエブリイバンの販売減少という事情もあるとのこと。

長年の間、軽商用バンは、キャブオーバー(セミ/フル含む)というレイアウトが当たり前でした。最近は、個人配達の増加に伴い、女性や高齢者などが働く姿も珍しくなくなっています。セミキャブオーバーは、狭い道での取り回しのしやすさなどがある一方で、乗降性をはじめ、居住性や走行性(音・振動、乗り心地など)に関しても通常のFFベースと比べると、ある程度制約があります。

スズキ スペーシア ベース
新型スペーシア ベースのインパネ

普段、愛車で乗り慣れた感覚で、こうしたはたらくクルマとも接したい、という声にも応える狙いが含まれているようです。

スズキでは、軽商用バンを使う層の女性比率と高齢者比率の拡大に伴い、仕事や作業の効率化向上のニーズがあると見ているほか、ホンダ「N-VAN」も獲得したように、はたらくクルマとしてだけでなく、キャンプなどのアウトドアや趣味の相棒としてのニーズもあると分析。車中泊を伴うソロキャンプを楽しむ層やリモートワークの増加なども「スペーシア ベース」を生んだきっかけのひとつになっているそう。

スズキでは、あくまで軽商用バンの「はたらくクルマ」として主に勝負しつつも、そのシートアレンジなどを見ていると、遊びグルマ、あるいは軽キャンパーのベース車としてのニーズも満たす意欲が伝わってきます。

スズキ スペーシア ベース
遊びグルマとして提案された用品装着車のイメージ

まさに仕事、遊びの「ベース」車になるという想いが込められています。

具体的には、仕事も遊びも含めて、メインとするターゲットユーザーは、1人から2人で、バンやハイトワゴンを自分専用として使いたい、仕立てたいというユーザーを見据えています。

そのため、荷室は使い勝手重視で、運転のしやすさ、乗り心地にも妥協したくないユーザーもターゲットにしています。キャンピングカー・ビルダーが「スペーシア ベース」に目を付けるのは間違いなく、どんな軽キャンパーを出してくるのか気になるところです。

スズキ スペーシア ベース
用品装着車のイメージ

●若手の設計者がバンのユーザーの困り事を探る

今回のスペーシア ベースでは、若手設計者6人が30件以上のバン、トラックユーザーを訪問し、困っていることに関して徹底した調査を行ったそうです。調査だけでなく、困り事を解決するためのアイディアを考え、パーツの試作品まで作ったそう。

スズキは、ユーザーニーズに対して、きめ細かい対応をする印象がありますが、同社でも珍しい試みとのこと。スペーシアをまさにベースとしたスペーシア ベースは、スペーシアと同等の乗降性を備えています。

スズキ スペーシア ベース
新型スペーシア ベースのフロントシート

また、ホンダ「N-VAN」とは異なり、助手席のしつらえも運転席と同じで、2人まで快適に座れるのが特徴。なお、後席はエブリイの流用ではなく、新設計となっています。

荷室のトピックスは、マルチボードの初採用で、上段と中段、そして下段に設置可能。このボードは、荷室側からは操作できず、スライドドア側から行います。

スズキ スペーシア ベース
下段にボードを設置し、助手席背もたれを前倒ししても長尺物の積載が可能

テールゲート側からも操作できる形状にすると、ボードの横幅に制約が出てしまうためだそう。2人で車中泊する際などに最大限、横幅を提供したいという想いがあったそうです。なお、ボードの操作は、慣れると1人でもできますが、慣れるまではカメラマンと2人で撮影のためのシートアレンジをする必要がありました。

スズキ スペーシア ベース
マルチボードの上段設置状態

マルチボードを上段に設置(荷室床面からボードまでは430mm)し、後席を折りたたむと、折りたたんだ後席に座り、ボードを机とすることで、ノートPCなどの作業(リモートワーク)や、作業現場などでの打ち合わせもできるモードになります。

中段(荷室床面からボードまでは290mm)モードにすると、ローテーブルを使う感覚で、リモートワーク、あるいはテールゲートを開けての移動販売などにも使えるとしています。

さらに、下段モードは、後席を床下に格納し、前席のヘッドレストを取り外して背もたれをフラットに寝かせることで、寝かされた前席とマルチボード(下端)がほぼフラットになります。マットなどを敷けば車中泊に対応。片側だけフラット化することで、長尺物の積載も可能になります。

スズキ スペーシア ベース
スズキ スペーシア ベースのラゲッジ(前後分離モード)

マルチボードを使う中でもユニークなのが、前後分離モード。後席を床下格納することで、生まれた広大な奥行きをマルチボードで前後に分けるモードで、ペットとの旅行やスーツケースなどを最後方に積みながら、さらに前席後方(後席を格納した部分)に荷室スペースを確保できます。なお、荷室長は1205mm、荷室床面幅は1245mm、荷室高は1220mmとなっています。

スズキ スペーシア ベース
スズキ スペーシア ベースのラゲッジ(前後分離モード)

●スズキ軽商用初、軽商用初の装備を数多く用意

専用装備も含めて、ユーティリティをチェックします。スズキ軽商用初となるルーフレール(XF)をはじめ、荷室両サイドのリヤクォーターポケットの採用がトピックス。

スズキ スペーシア ベース
ルーフレールを備える

ほかにも、スズキが得意とする助手席シートバックテーブル(助手席を完全に前倒し可能)、オーバーヘッドシェルフ(XF)、DIYに対応するユーティリティナット、前席両側のフロアコンソールトレーなどが用意されています。

快適装備では、スズキ軽商用初の後席右側パワースライドドア、キーレスプッシュスタートシステム、後席脱着式シートベルトを用意。そのほか、防汚タイプラゲッジフロア、「XF」にUSB電源ソケット(タイプAとCを用意)、LEDルームランプ(リヤ)も備わります。さらに、軽商用初となる運転席&助手席シートヒーター(GFの2WDは、運転席シートヒーターのみ)、ロールサンシェードも備わります。

スズキ スペーシア ベース
オーバーヘッドシェルフを備える

ほかにも、スズキ軽商用初となるプレミアムUV&IRカットガラス(XF)とフルオートエアコン、チルトステアリングと運転席シートリフター(XF)など、FFベースの軽乗用車に乗り慣れた層に支持されそうな装備が網羅されています。

●エクステリアは、「スペーシア カスタム」がベース

エクステリアは、「スペーシア カスタム」がベースで、ブラックのグリルやドアミラー、アウタードアハンドル、リヤガーニッシュ、ホイール(アルミとスチールホイールを設定)などが目を惹きます。リヤクォーターパネルの専用デザインもタフさや遊び心を抱かせるアクセントになっています。

スズキ スペーシア ベース
遊びグルマとして提案された用品装着車のイメージ

設定されるボディカラーは、新色の「モスグレーメタリック」をはじめ、「アクティブイエロー」「デニムブルーメタリック」「ピュアホワイトパール」「ブルーイッシュブラックパール」の5色。

そのほか、「スズキ・セーフティ・サポート」も採用されていて、全方位モニターとアダプティブクルーズコントロール(ACC)は、スズキ軽商用初。また、全車標準のサイドエアバッグもスズキ軽商用初になります。

スズキ スペーシア ベース
NAエンジンを搭載

なお、搭載されるエンジンは、NAエンジンの「R06A」型で、WLTCモード燃費は、最高値で21.2km/L。軽商用初ナンバー1となっています。そのほか、スペーシアと同等レベルの乗り心地や前席の静粛性を備えているそうで、走りへの妥協もありません。

(文:塚田 勝弘/ 写真:井上 誠)

この記事の著者

塚田勝弘

塚田勝弘 近影
1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。クルマ、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。