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■日々、是好日ならぬ日々、是好質と思った新型フォルクスワーゲン・ポロ
●まるでゴルフIIのサイズ感でさり気なく乗りたいポロ
日々、是好質!? フォルクスワーゲン(VW)ポロがデザインやエンジンの変更、そして運転支援システムのアップデートなどのマイナーチェンジを行いました。
ポロは現在、日本で販売されているVWモデルたちのなかで最もコンパクトなモデル。改めてそのサイズ感をご紹介すると、全長4085mm(ゴルフ比:-210mm)×全幅1750mm(-40mm)×全高1450mm(-25mm)、ホイールベース2550mm(-75mm)。
余談ですが、このサイズは今でもマニアに人気のゴルフII(1983年~1992年)よりちょっぴり大きいくらいの大きさです。
当時、ゴルフIIを気取らずオシャレにコンパクトな輸入車を楽しむ、もしくはそんなカーライフに憧れる方々から人気だったゴルフも、今では性能と機能をカタチにした、流行にとらわれない定番モデルとしてVWブランドを代表する一台であり、日本の輸入車コンパクトハッチの代表的な存在になっていますね。
そんなイメージは1996年に日本への本格導入が始まったポロにも継承され、今やゴルフと並び、押しも押されもせぬ高い支持を得ています。
マイナーチェンジを行った新型ポロは、質実性を磨く変更が行われています。
●外装も内装もデジタル化やアップデートで確実に進化
エクステリアの”カタチ”はコンパクトな塊感のなかに、後席やラゲッジの実用性をさり気なくカッチリ感とともに表し、ドッシリとした走りの安定感を想像させてくれます。これにウインドウの広い視界や室内の明るさ、開放感を意識するなどの機能/実用をデザインする基本部分に変更はありません。
フロント/リヤのデザインはイメチェン。いよいよポロのライトにLEDを多用したことで、質実性はもちろん、デザインの洗練度をアップさせたことは明らか。
フロント部分のLEDマトリックスヘッドライトの採用は、ライトが占める面積が小型化したおかげでグッと洗練された印象とともに、小顔になったような気がしませんか? すると、これがポロのコンパクトさを一層印象づけ、一方で、左右ライトを下縁で繋ぐ横バー基調のLEDストリップ(デイタイムランニングライト)が、新しいラジエターグリルのデザインとともに、さり気なくワイド感を演出。コンパクトさに親しみやすさを覚えつつ、新型ポロの存在感を昼夜を問わずしっかりと主張しています。
ちなみに、このLEDライトはVWでは”I.Qライト”と呼び、フロントカメラと連携して、対向車などを認識しLEDを個別に制御/配光をコントロールする予防安全機能としての安全の質も向上させているんです。
リヤにはダイナミックターンインジケーター(光が流れるウインカー)を初採用するLEDテールランプデザインを採用。ドッシリと構えるボディの安定感はそのままに、腰のあたりのライトに沿ったパキッとしたアクセントラインが取り入れられたことで、より軽快な印象も増したように感じました。
ちなみに今回のフロント/リヤのデザイン変更により、全長が10-25mm延び、4085mmとなっているので、ガレージに制限のある場合はご注意ください。
インテリアでは、デジタルメータークラスターやエアコンの操作パネルにタッチコントロール式を採用する他、9.2インチの大型モニターを搭載したインフォテインメントシステムも選ぶことができます。操作性を保ちつつデジタル化をまた一歩進めた新型ポロは、それだけでも新しさを質感の洗練さとともに感じることができるでしょう。
●グレード展開はActive Basic、Active、Style、R-Lineの4グレード
ポロはこのマイナーチェンジを行った新型から、カタログ上の各グレード名も変更されています。これまでのTrend lineに代わりActive Basic、Comfort Lineに代わりActive、High Lineに代わりStyle、そしてスポーティさを主張したR-Lineの4グレード展開です。
今回、私が試乗をしたのはStyleとR-Line。すべてのモデル(グレード)に最新先代の1.0TSI(95ps/175Nm)エンジンを新たに搭載し、排気量こそ変更はないものの、環境性能や動力性能、そして静粛性が高められているとのこと。トランスミッションはこれまでと代わらず7速DSG(AT)が組み合わされています。
エンジンは改めて1Lターボエンジンの性能を侮るなかれと言うべきでしょう。実際、わずかにトルクがアップし、最大トルクを以前よりも低回転域から発揮できるようになり、低速域の扱いやすさや中速域くらいまでの滑らかなスピード運びにポロが大人びたように思えるから不思議です。
さらに少し強めの発進→加速を試みれば、7速DSGのトントントーンとシフトアップするドライバーのアクセル操作で意思を読み取ってくれるおかげで、軽快な加速感もポロのサイズ感にピッタリ。
この日はあいにくの雨模様だったこともあり、雨音やタイヤが路面の水を跳ねる音にエンジン音が聞こえにくかったこともありますが、これまでの経験から察するに、ポロに特別な違和感を抱くことはなかったです。
はじめに試乗した「R-Line」は、足まわりに電子制御式デファレンシャルロック“XDS”とR-Line専用のサスペンション、そして17インチタイヤを装着。少し大きな路面の凹凸(入力)に対する感度は高めで、足まわりの硬さを抱くものの、軽快さやスッキリとしたハンドリングフィールは断然R-Lineの方が楽しめます。
R-Lineには走行モードを切り換えることのできる”ドライブセレクト“も採用されていて、”スポーツ“モードを選べばステアリングの操舵フィールもより重くしっかり感も増し、力強いトルクを積極的に使いながら、コンパクトハッチのポロを走らせることもできます。
「Style」はスタンダードなサスペンションに16インチタイヤを装着。それでもコーナーでスイスイとノーズが入り、R-Lineよりしなやかな印象を抱ける足下とのバランスも実に良好。スポーティなドライビングを意識せずとも、ワインディングでの運転のしやすさ=扱いやすさを、コンパクトさとともに頼もしく感じられるのではないでしょうか。
走りの質を高めることはポロの実用性を高めることにも繋がります。ラゲッジ+リヤシートアレンジが生む積載能力も含め、ロングドライブの頼もしさにも申し分のなかったポロに、新型ではさらに先進安全装備や快適装備をより多く採用。
例えば、前車との車間を維持しつつ車線内でレーンキープ(ハンドル操作)もアシストしてくれる“トラベルアシスト”は制御可能速度が0-210km/h。渋滞から高速走行までサポートしてくれることで週末のロングドライブの移動の予防安全と疲労軽減に繋がる装備と言えるでしょう。また、先にも紹介したフロントカメラで対向車や先行車を検知しLEDヘッドライトの配光を制御する”I.Q.LIGHT”も装備されています。
●隠れた実力はリヤシートにあり
実はポロの魅力の一つとして、リヤシートのサポート性にも注目しています。これはコンパクトでも後席=人が安全かつ快適に過ごすことを認識している証拠。パーソナルカーとしての印象が強いかもしれませんが、シートアレンジも可能なリアシートの設計にもこだわっているあたりもVWの予防安全の一つと捉えれば、その実用性の可能性はサイズは小さくても大きく感じられるのではないでしょうか。
このような熟成によって、ポロはロングドライブも頼もしく楽しめるモデルへとまた一歩進化。でもどちらかと言えば、日常使いを意識して選ばれる方が多いのかもしれません? 日々のカーライフをVWらしく性能や機能をカタチにしたコンパクトカーと過ごすことを想像したら、「日々是好日」ならぬ「日々是好質」という言葉が思い浮かんだ次第です。その実はぜひ実車で確認をしてみてください。
(文:飯田 裕子/写真:小林 和久)
【SPECIFICATIONS】
★フォルクスワーゲン ポロ TSI Style/TSI R-Line
全長×全幅×全高:4085×1750×1450mm
ホイールベース:2550mm
トレッド(F/R):1505/1485mm(Style)/1500/1480mm(R-Line)
乗車定員:5名
車両重量:1170kg(Style)/1190kg(R-Line)
最小回転半径:5.1m
燃料消費率 JC80モード/WLTCモード:19.1km/L/17.1km/L
エンジン:直列3気筒DOHCインタークーラー付ターボ(4バルブ)
内径×行程:74.5×76.4mm
総排気量:999cc
圧縮比:11.4
最高出力:70kW(95ps)/5000-5500rpm
最大トルク:175Nm(17.9kgm)/1600-3500rpm
燃料タンク容量:40L
トランスミッション:自動7段(前進)1段(後退)
サスペンション (F/R):マクファーソンストラット(スタビライザー付)/トレーリングアーム
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ドラム
タイヤサイズ(F/R共):195/55 R16(Style)/215/45 R17(R-Line)
車両本体価格:
3,245,000円(Style)
3,299,000円(R-Line)
2,572,000円(Active Basic)
2,821,900円(Active)